第116話 野営地 森林地区 遭遇戦闘
ーアトランティア帝国 森林地区遠方上空ー
ヒュンッ! シュウウウウーッ!
ピッ! ビビッ!
『こちらアルファ−1、森林地区北方、チャートNo.13に発光点!』 ピッ
『ライデンコントロール了解! アルファー1は直ちに向かえッ!』 ピッ
『了解、目標到達予想 0830時と推定 オーバー』 ピピッ
『ライデンコントロール了解 アウト』 ピピッ……
ーアトランティア帝国 森林地区野営地ー
パチパチ ボウッ! メラメラ…
「ジェシカ、ひとついいですか?」
「なに、アニスちゃん?」
「ジェシカ達はなぜ、魔道具での戦闘訓練をしているのですか?」
「そうですね、やはり帝国のためでしょうか?」
「帝国? この国ですか?」
「ええ、私達は早く力をつけなくてはいけないの」
「力ですか…」
カンカンッ! コン! ビュン ビュン!
焚き火の傍で、アラン達男子は、日課なのであろう、木剣で素振りや組み手をしていた。その様子を見ながら、アニスとジェシカは話をしていた。
「ん〜、アラン達の剣技か…(遅いな、アレでは一瞬で命を失いそうだ)」
「アラン達、上手くなってるわ」
「さっきの話だけど、公爵家を相手にするんだよね、ジェシカ達は大丈夫なのですか?」
「ええ、ミレイ様も同じ公爵家です。爵位が同等なら…」
「ん、でも、そんなに甘い連中じゃあないんでしょ?」
「そうね、それはもう! だから、アニスちゃんに頼んだの!」
「私にですか、で、その者達は今どこに?」
「帝都にいますわ、あのゲス男はここにいましたけど」
ジェシカは険しい顔をして、ある男を貶しながら言った。
「ん? 同級生でいたのですか?」
「ええ、口にするのも毛皮らしい存在!消えて仕舞えば良いものを…」
アニスはジェシカの為、それ以上は聞くのをやめた。
「アラン達は頑張るんですね」
「ええ、アラン達は皆、『ブレードライナー』を目指してますから」
「『ブレードライナー』?」
「アトランティア帝国 国軍の最高峰、最高の称号を持った騎士達です」
「へえ〜、(そんなのがあるんだ)」
ビュンッ ビュンッ ハアハア…
「ようしッ! 今日はここまでだ!」
「ふう〜、もう汗だくだよ」
「ああ、アラン、川に行って流そうぜッ!」
「そうだな、ジェシカッ!」
「なあにッ?」
「俺達、ちょっと汗を流してくるッ!」
「どうぞ、ごゆっくり!」
「おう! どうだ、一緒に流すか?」
「バカッ!」 カア〜
「はははッ! 行ってくるッ!」 ダダダッ
「アランったらもう!」 プン
「 ん? 」
「なに、アニスちゃん?」
「ジェシカってアランのことが好きなの?」
「なッ! はッ!……」 カカアア〜
「ふふん、 ず・ぼ・し・かあ〜」 ニイイッ
「ダメええッ!」 ガバッ!
顔を真っ赤にしたジェシカは、アニスの口を塞ぎ抱きついた。
「わッ ムグムグ、ウン!」 ギュウウ
「お願いアニスちゃん、誰にも言わないでね! でないと…」
「 ん! ん! 」 コクコク
口を塞がれていたので、アニスは無言でうなづいた。そしてジェシカから解放されたアニスが夜空を見た時、遥か上空を何かがそこを横切っていった。 普通の人ならば、闇夜の中のそれは全く見えないのだが、神眼であり、千里眼でもあるアニスのヘテロクロミアの赤みを帯びた目には、それがはっきりと見えた。
スッ スッスッ!
「ん、………」
「うん? どうしたのアニスちゃん?」
「ねえジェシカ」
「なに、アニスちゃん?」
「この世界では、人以外の何かがいるのですか?」
「え?」
「人にしては異形な形の物が今、ここの上を通ったので…」
「ア、アニスちゃん! それ、どんなだったの?」
「ん、なんかこう…手足の関節が逆で、背中に昆虫の羽が生えた黒い大きい何か」
「ク、クリーチャー…」
「ん? クリーチャー?」
「ええ、今、この世界全ての共通の敵ですわ」
「じゃあ、ジェシカ達はそれと戦うために訓練してたんだ」
「それより、クリーチャーはどっちに行ったのッ⁉︎」
「ん、あっちの方向に6つ、高速で飛んでいった」
「帝都の方ね…」
「いいの? 落ち着いてるけど」
「ええ、帝都には近づけば近づくほど守りが硬いの。アニスちゃんが倒したドローンの数も増えるし、それ以上の物が鉄壁の守りをしています。たかが6体程度ではこの森を通過した時点で、全滅でしょうね」
「そうなんですか…」 クイッ!
アニスはジェシカが言った、「クリーチャー」の去った方向をじっと見ていた。
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ーアトランティア帝国 森林地区入口付近上空ー
ピッ! ピピッ!
『こちらライデンコントロール、先行中のアルファー1へ通達、センサーに反応! クリーチャー6機を確認、迎撃せよ!』 ピッ
『ライデンコントロール、こちらアルファー1、確認した、迎撃に入る』 ピッ
『ライデンコントロール了解、以降指示をライデンCICに移行 オーバー』 ピッ
『アルファー1 了解、ライデンCIC、指示を頼む』 ピッ
『こちら、ライデンCIC、アルファー1、クリーチャーを補足、援護射撃を行う!射線上より退避せよ』ピッ
『アルファー1了解』 ピッ
『アルファー1より各機へ、ライデンが援護射撃をする、座標を合わせ退避!』 ピッ
『アルファー2 了解』 ピッ
『アルファー3 了解』 ピッ
『アルファー4 了解』 ピッ
ヒイインンッバウウッ! ギュウウーーン!
彼らは、スラスターを全開にして上昇していった。
『隊長ッ! 援護射撃来ますッ! ライデン発砲ッ!』 ピッ
『うむ、来たかッ! 3、2、1、 今ッ!』 ピッ
ズギュワアアアーーーッ! ドウンッ! ドウンッ! パッ! ドワアアアンンンッ!
『着弾を確認ッ! 2機大破ッ! 撃墜ッ!』 ピッ
『ライデンCIC、着弾を確認、後は任せろ! オーバー』 ピッ
『こちらライデンCIC、了解、以降は近接戦に移行、健闘を祈る アウト』 ピッ
『アルファー1より各機へ、突撃するぞおッ!』 ピッ
『『『 了解ッ! 』』』 ピッ
ビシュウウウーーッ! ババババッ! ダンダンダンッ! ギュウンンッ!
アトランティア帝国 森林地区の入り口上空で、激しい空中戦が始まった。
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ーアトランティア帝国 森林地区野営地ー
「さ、アニスちゃん、もう寝ましょ、明日には移動して、早く帝都に行かなきゃ」
「ん、そうだね。 ウ〜ンッ! さて、さっさとお風呂にでも入って寝るかな」 ふんふん♪ ガシイッ!
「えッ⁉︎ 」
鼻歌を歌い、入浴の準備に入ろうとしたその時、アニスの肩をおもいっきりつかまれた。アニスはゆっくり振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべたジェシカがいた。
「わあッ!ってジェシカ? どうしたのいきなり?」
「アニスちゃん、今、なんて言ったの?」 ジッ!
「 へ? 」
「今、『お風呂』って聞こえたんだけど?」
「え、ええ、言いましたよ、それが…」
「アニスちゃん、お風呂があるのッ⁉︎」 ガシッ!
「は、はいありますよ!」
「ど、どこにあるのッ!」
「え、え〜っと、入ります?」 ニコ
「入りたいッ! ていうか入らせてッ!」 ガバッ
「い、いいですよ」
「アニスちゃん!ありがとうッ!」 ガバッ! ギュウ!
「じゃ、じゃあ、今用意しますね」
「あ、ちょと待って」
「 ん? 」
「あのう、アニスちゃん」
「うん」
「ルナとエリーも一緒にいいかな?」
「ん、もちろん! いいですよ」
「ありがとう! じゃあ、2人を呼んでくるから待っててね」 タタタ
ジェシカはルナとエリーを呼びに、自分たちのテントの中へ消えていった。 その間に、アニスはお風呂付きの自前のテントを異空間より出し準備した。
「よっと!」 シュワアアンン! バサッ! タン!
「ん、これで良し!」 ぱんぱん
アニスが準備を終え、手を叩いていた時、ジェシカがルナとエリーを引き連れてやってきた。
「ジェシカ本当なの?」 サクサク
「そうですよ、ここ、森の中なんですよ」 サクサク
「大丈夫、アニスちゃんがあるって言ったんだから」 サクサク
3人は、そう言いながらアニスの元にやってきた。
「アニスちゃん、お待たせ、で、何処にあるの?」
「ん、じゃあ、案内しますね」 バサッ! スッ
アニスは用意したテントの中に入って行った。
「え? ここ?」
バサッ!
「どうぞ、入ってきてください」 フリフリ
「じゃ、じゃあ、入るね」 バサッ!
「うん、じゃあ私達も入ろ」 バサッ!
「うん」 バサッ!
3人はアニスに招かれ、テントの中に入って行った。
「「「 ええーッ! 」」」
中に入った3人は驚いた。そこはテントの中とは思えないほど広い空間で、リビングにミニキッチン、ソファーにテーブル、そして奥にある扉の向こうに、念願の浴室と洗面所、トイレに脱衣場と揃っていた。
「す、凄い! これがテントの中だっていうの⁉︎」
「もう、家の中じゃない!」
「ここ、素敵です!」
「じゃあジェシカ、こっちに脱衣場とお風呂があるから入って良いですよ」
3人は目配せをしてうなづき、行動に起こした。
「じゃあ、アニスちゃんも一緒に!」 ガシッ!
「 へ? 」
「そうですよ、こんな素敵なものをいただくんですから!」
「 はい? 」
「私達が、アニスちゃんを隅々まで洗ってあげます」 ニコ
「え! いや、私は! ひ、1人で…」 タジタジ
「みんなッ! 剥いちゃえええッ!」
「「 オオーッ!」」 ガバッ!
「ぎゃあああーーーッ! やめてええッ! やめえ……」 バサバサッ!
バッ! ムキッ スッポンッ!
「いやあああーッ!」 バッ!
「「「 お風呂だあああーッ! 」」」 ガラッ!
タタタッ! ざぶうううーーーん!
キャッ! キャッ! ギャアアアッ ゴシゴシ… バシャバシャ、チャッぽ〜ん…
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ーアトランティア帝国 森林地区入口付近上空ー
ギュワアアアアーッ! グググッ! ピピピッ!
『もらったあーッ!』 チャクッ! ドンドンドンドンッ!
シュシュシュシュッ! バンバンバンバンッ!
『ギッ! ギギイイッ! ガアアアッ!』 ドウンッ! ババアアアーッ
『よしッ! 撃墜ッ!』 ギュウウンンッ!
『アルファー1より各機へ、状況報告』 ピッ
『アルファー2 1機撃墜』 ピッ
『アルファー4 撃墜しました』 ピッ
『…….』 ピイーッ! ガガガッ!
『アルファー3 どうした?返信がないぞ!』 ピッ
『た、ガガッ 隊長ーッ! ガガッ ガーーッ!』 ピイーー!
『アルファー3! アルファー3ッ!』 ピッ
ピイーーーー プツン!
『隊長ッ! アルファー3ッ! ベイルアウトッ! 撃墜されましたあッ!』 ピッ
『くうッ! アルファー3をやったクリーチャーは何処だッ!』 ピッ
『ダメですッ! センサーに反応なしッ! クリーチャー、ロストッ!』 ピッ
『クソッ! アルファー1よりライデンCIC』 ピッ
『こちら、ライデンCIC 、アルファー1どうぞ』 ピッ
『侵入したクリーチャーを迎撃 1機撃ち漏らした。そちらで確認を願う』 ピッ
『ライデンCIC了解 センサー連動 探査開始』 ピッ
『アルファー3の落下地点はわかるか?』 ピッ
『わかりますッ! チャートNo.10 ポイント19 座標1211.81 落下炎上中です』 ピッ
『回収部隊に任せよう、上空警戒』 ピッ
『こちらライデンCIC、アルファー1 コンタクト』 ピッ
『こちらアルファー1』 ピッ
『残機のクリーチャーは北方へ逃走、高度を下げ森林内を高速移動中、チャートNo.10からNo.13方向への移動と思われる。至急対処されたし オーバー』 ピッ
『アルファー1 了解 追尾開始する アウト』 ピッ
『聞いたな、』 ピッ
『『 はッ! 』』 ピッ
『よしッ!全機追撃戦闘開始ッ!』 ヒイイイッバウウウッ!
シュシュシュウーーッ!
彼らは撃ち漏らしたクリーチャーを追って、全力でスラスターをふかし、追って行った。
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ーアトランティア帝国 森林地区野営地ー
「ふう、生き返るう」 ホカホカ
「本当、3日振りのお風呂ッ! 気持ちよかたああ」 ユゲユゲ
「ん〜満足満足! イイもの見れたし、ウン!」 フウ〜
「アニスちゃん! ありがとうね!」 ニコ
「……」 グスン
「アニスちゃん?」
「もうお嫁にいけないよ〜」 うぇ〜ん
「だだ、大丈夫よ!」 アセ
「そ、そうよ、アニスちゃん、女の子同士はノーカンだからね」 アセ
「もう、私たちのもの ふふふ…」 ニタア
「うッ! うわあああ〜ん!」 シクシク
「ルナッ! 本音を言わないのッ! ってやばッ!」
「ううッ! もう寝るううッ!」 バッ! タタタ
「ア、アニスちゃん… どうしよう?」 クル
「まあ、明日まで待ちましょ、明日になれば機嫌も良くなるわ」 フリフリ
「そう、もう時間の問題、アニスちゃんは私たちの物 ふふふ」
「ルナ? あなたお風呂からへんよ?」 タジッ
「ジェシカありがとう、私はアニスちゃんが欲しいの、貰っていい?」
「「 ダメえええッ! 」」 ババッ!
「ダメ?」
「ダメよダメッ! いい、アニスちゃんは私たち3人のモノにするの!わかった』グッ
「3人の…じゃあ我慢する」 ウン
「はあ〜 じゃあ私達も寝ましょう」 サッ!
「「 は〜い 」」 サクサク
こうして皆はそれぞれテントの中に消えて行った。そこへ川からアラン達が帰ってきた。
「なんか騒がしかったが何かあったのか?」
「女子なんていつもそうさ!」 フリフリ
「じゃあ、夜番は俺からだな!」
「アラン、頼むぜ、時間になったら起こしてくれ」 スッ
「ああ、おやすみ」 サ
「おやすみなさい アランさん」 スッ
こうして野営地は静まり返っていった。 パチパチ メラメラ
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・
・
パアアアーー ササーー
日が登り、朝日が周りを照らし始め、清々しいそよ風が吹いていた。
トントントン ジュウ〜 ブクブクブク ジャア〜 ジャジャジャッ!
野営地にて、リズム良く包丁と調理の音、朝食のいい香りが周りを充満し始めた。
「うん? え? ア、アニスちゃん!」 ガバッ!
「ん、おはようございます オスカーさん。よく寝れましたか?」ニコ
「え?あ、おはようございます(やばあ、俺、夜番なのに寝てたんだ)」
「もうすぐ朝食にします。顔を洗ってきてくださいね」 ジュウ〜
「は、はい!」 ダダッ!
オスカーは焦って川に向かって行った。
バサッ! タタタ!
「ア、アニスちゃんッ! お、おはよう」 ペコ
「ん、ジェシカおはようです」 コトコト
「き、きのうは、その…」 モジッ
「ん? ジェシカ」 トントン
「はい!」 ピク
「気にしてませんよ、ちょっと驚いただけ」 ニコ
「ありがとう!」
「それより、もうすぐ朝食ができます。みんなを起こしてきてください」 ジュウ〜
「もう作っちゃったの? わッ! 美味しそうッ! すぐ起こしてくるね」タタタ
コポコポコポ、ササッ!
「ん、よしッ! 出来たッ!」 グッ
そこへ、顔を洗い終わったオスカーが帰ってきた。
「ふう〜、アニスちゃん、何か手伝うことはありませんか?」
「じゃあ、アラン達を起こしてもらえますか?」
「わ、わかりました、アラんさ〜ん!朝ですよお!」 ダダダッ!
「ふふ、元気ですね」 カチャ カチャ ササッ!
朝食ができ、それぞれの分を分け準備をしていたその時、この野営地に招かれざる者が現れた。
「 ん⁉︎ 」 ババッ!
ガサガサガサッ メキメキッ! ドドオオオオンンッ! ドンッ‼︎
「うわあああッ! な、なんなんだああッ!」 グッ
「きゃああーッ! なになになにッ⁉︎ なんなのおおッ!」 バッ
シュ〜ッ! シュ〜ッ! メキイイッ! ドオンン!
そこに現れたのは、巨大な羽の生えた昆虫のような無機物でできたなにか、クリーチャーであった。
『ギッ! ギギイイ⁉︎ ガッ ギガアアッ!』 ズンッ! ズンッ!
「ひ、ヒイイイッ! ク、クリーチャーだああッ!」 ビクビク
「きゃあああーッ!」 ビクウッ!
「に、逃げろおッ! ジェシカああッ!」 ババッ!
『ギギギッ! ガアアアッ!』 ビンッ! ブブブブッ!
「くるぞッ! 破壊光線だあッ!」 ババッ
ヒイイイイインンン!
「はッ! アニスちゃんは?」 キョロキョロ
「ジェシカッ! あそこおッ!」 バッ!
ジェシカがアニスを探していた時、エリーがアニスの居場所を指さした。
「アニスちゃんッ! 逃げてええーッ!」 ババッ!
アニスのいた場所は、現れたクリーチャーの真正面だった。彼女は凛として、クリーチャーに正対していた。
「クリーチャーだかなんだか知らんが…」 プルプル
「アニスちゃんーッ!」 オロオロ
「やばいぞ! あの動きは…」
『ギガアアッ!』 ドオンッバアアアアーーッ!
「「「 撃ったあああーッ! 」」」
「ダメえええーッ!」
シュワアアアアアーーッ! バアアアアーーンッ‼︎ ドドドドッ!
クリーチャーの「破壊光線」が、アニスのいた場所全体に直撃し、大爆発を起こし燃え上がっていった。
ブワアアアー ボウボウ! メラメラボボウッ!…
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。