第11話 模擬戦終了 帝級剣技&神級剣技と?
ー地下闘技場ー
子供頃、俺は友達があまりいなかった。隣に住んでいた【ハック】や修練所にいた【オロニ】、料理屋の【ポロ】みな成人してすぐに亡くなった。その原因は冒険者だ。みんな家族のために成人してすぐ冒険者になった。俺もその三人と一緒に冒険者登録をして冒険者になった。みんな思いは一緒で行動を共にするうちに、一人一人の能力の違いが出てくる、そうなると依頼クエストをクリアしていくうちに、能力、体力の個人差で一人づつ倒れていく。最初が【ポロ】だった、彼は力だけはあったのだが魔物討伐の居り、毒針がささりあっという間に絶命した。その時俺にも毒針は刺さったのに俺には効かなかった。次に【ハック】だった、彼はうかつにもダンジョンの罠、落とし穴にかかり奈落の底へ消えた。そうなると、もうパーティーとは言えず【オロニ】は自分からはなれ、よその冒険者パーティーに加わったと聞いたが、ほどなくしてパーティーごと全滅し亡くなったという話だ。その後、俺は16歳の時に自分の体が他の奴とは違うことを知る。それが俺の人種、ハイヒューマンだということだ。ハイヒューマンは身体能力、各種異能スキルや魔法の取得も別格で、成長するほどその能力は向上され、20歳を過ぎて俺は金等級ゼランの地位についた。25歳で災害級の地竜を討伐し白金等級のヴェルディに、翌年ダンジョンを単独攻略に成功し白金等級アーベントになり今に至る。16歳から今に至るまでの10年、自分に匹敵する強さの人間を今は二人しか知らない。が、いま目の前にいる少女が三人目の人間になるほどの力を持っていそうだ。だから試すんだ、俺の力で。
マシューは右手の模擬戦用大剣を背中に掛け、前傾姿勢で左手を地面につき前方のアニスを見る。その瞬間マシューの気力が膨れ上がった。それを見た冒険者達が慌てだす。
「おいおい、まじかよ、やべぇッ!」
「ここから出るぞ!急げ、巻き添えを食らっちまう」
「うッ!うわわわわわッ!何だよ!何だよこれッ!まだ死にたくない!」
「きゃあ~、だめよ、ここから急いで出なきゃッ!」
「お姉さまがッ!お姉さまがッ!...」
力量の弱い冒険者は、即座に階段を駆け上がり闘技場から逃げ出していく。 しかし、何人かはここに留まり試合の行く末を見守っていた。そんな中マシューはどんどん力を蓄える、それを見てサイルはマシューに駆け寄り、技を止めさせようと大声で叫ぶ。
「マシューさんッ!これは模擬試験ですよッ!試合じゃあないんですよッ!っというか、その技ダメですッ!そんな技使ったら試合じゃなくて、死闘になっちゃいます! アニスちゃんが死んじゃいます! やめてくださいッ! きいてますッ? マシューさんッ、マシューさんッッ!..」
能力強化中のマシューには、サイルの声は届いていない、今は目の前にいる少女に意識を集中していて気が抜けないからだ。彼の心は喜びに沸いていた。
「いつでもいいですよ、マシューさん」
「いくぜぇッ 嬢ちゃん!《縮地》 帝級剣技-ッ!《グランツ.カッツエッ!》」
「ダッ ダメエェェェ―ッ‼ お願い、アニスちゃーんッ!逃げてェ―ッ!」
サイルから絶望的な声が上がる、目の前にいる可憐でちょっと強くてかっこいい少女が、白金等級の剣技、それも帝級剣技の大技にさらされて、死んでしまうかもと思い。
ビュンッ!と音がしたと思ったら、その場にいたマシューの体がぶれて消えた。そう、彼の持つオリジナル剣技、超高速剣技が発動したのである。その速度は 10mの距離をわずか2秒ちょっとで0mにできるほどの接近剣技である。 初見殺し、今アニスに使った帝級剣技は一撃必殺の高速剣技。最初に見たが最後その剣技に斬り伏せられ絶命する必殺技である。
しかし、アニスはその瞬間に動いた、そうアニスはマシューが技を発動と同時に、明らかに今までとは違う早い動きを見せた。右手の模造短剣をくるくるっ!っと回し逆手に持ち替え、左腕を肘から曲げ体の前に、右足をわずかに下げ、体を少し落としながらアニスも剣技を使う。
マシューは技の発動と同時にアニスの変化に気が付いた。
「なっ!剣を持ち替え構えを変えた!剣技が使える⁉ くッ、技が止まらねぇッ! ええーい、くそッ! このまま行っちまえーッ!」
マシューが高速剣技で近づく一瞬、アニスも小声で剣技を放つ。
「《縮地》 神級剣技っ!《ヴァ−ゼル.ファング》」
ビュフオォンンーッ! マシューの放った技がアニスのいた場所に斬撃を出した音が鳴った。が、そこにアニスの姿はなく空振りに終わると同時にバシイイィーッ‼と激烈音がし、マシューが闘技場の壁まで、ものすごい勢いで吹っ飛んでいった。ドッカーンンッ! バラバラバラッ 壁を破壊しその残骸が降ってきた。そして、その中にマシューの姿があった。
「いてててッ! なッ何が起きた? うおッ!何だ、腹が痛い、馬鹿な俺が痛みだと⁉」
マシューは白金等級になってから3年、痛みを伴う攻撃を受けていなかった。その彼が今腹に鈍い痛みを感じている事に驚いていた。肉体は強化され、ギフトには女神の祝福があり、さらに痛覚耐性と対衝撃、対激痛耐性魔法の重ね掛けをしている。そんな状態の彼の肉体に痛みが走ったのだから無理もない。服をめくると鍛えられ六つに分かれた腹筋に、小さな短剣の形の赤あざが付いていた。まぎれもない彼女がここで借りた模擬戦用模造短剣の跡であった。 マシューは目前にたたずむ一人の人影を見た。その姿は神々しく、一つの戦技を出し終わって、模造短剣よりわずかな煙を出ながら構えているアニスの姿であった。 模造短剣は木製のため、アニスの超高速戦技で高熱を持ったのだろう。
マシューはアニスの姿を見て微笑んでいた。自分の技を受け切るどころか、それを剣技で反撃して一撃を加えてきた。間違いなく自分に匹敵するほどの強さを持った者がここにいた事、その喜びの表情である。
「す、すげえぜ嬢ちゃん! いやアニス、お前強ええな! 完敗だ!」
「大丈夫ですか?マシューさん、ちょっと力が入りすぎてしまいました」
「ああ、このくらいなんともない。それよりアニス、合格だ、あとでサイルから認定書とカードを受け取れ」
「ありがとうございます、では、と..サイル、さん?どうしました」
サイルは涙目でアニスの近くにいた。
「よ、よかった~、あのままアニスちゃん、死んじゃうかと思ったよ~」
「大丈夫ですよ、マシューさんも手加減してましたし、心配かけてすみません」
「ならいいけど、マシューさんッ!あなたもうちょっと人の言うこと聞きなさい!」
「お、おう、わりいな、つい夢中になってしまって」
「全くもう、じゃあアニスちゃんカードと認定書作るから待っててね」
「はい、お願いします」
サイルは階段を駆け上がり事務室の方へ駆け込んでいった。その時マシューから声がかかる
「嬢ちゃん、じゃあないアニス、ちょっと話があるいいか?」
「ええ、いいですよ、なんでしょう」
「お前さん、何もんだ、ただの平民少女ってわけないだろ。教えてくれないか?」
アニスは迷った、冒険者に自分の事を話してもよいのかと。登録をしたのは単に、町々や国々の出入りや情報を得るために取っただけだからだ。
「ん~気になりますか?」
「ああ、ものすごくな。 なにせ俺の帝級剣技を“神級剣技”で返した奴だからな」
「(あ、ばれてる~、) な、何のことでしょう~ あはは」
「ん、話せないのか、そうかたぶん何か禁忌に触れるような案件なんだな。そうか、話せないか..」
「あの~、もうちょっと待ってください、そのうちに話しますから」
「そうか、ありがとう。 何かあったら言ってくれ、力になってやる」
こうして無事、冒険者に合格した。アニスが受付でサイルから説明を受け、それが終わり建物を出た時それは起きた。
ドオオーーーーン‼︎
いきなり空一面とその世界全体が振動した。その瞬間世界が真っ暗になった。
アニスの視界も真っ暗に.....
「へっ? なんだ、どうなっている?」
そして真っ暗の中に一文が現れる。
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「はいっ?」........
「アニスちゃん、まだ痛いよ~」
「ユキヤマ、実家で何やってた?」
「この時期の農家なめんなー!」
「なんだ農作業か?ガンバレ..」
みなさん、体には気を付けてください。