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第108話 A01アリシア 異次元世界「アーク」消滅

-アルフヘイム 大火山「ベガ」最下層ー


ガコーンンッ! コツコツ タタ


ジオスとアイラは、赤竜のいた所にあった扉を開けて、その中に入ってきた。扉の先は、今までのような大空間ではなく、人が2人並んで歩くのがやっとと言った感じの通路で、その通路も岩などではなく、石畳でしっかりとした作りになっていた。


「え? ここ本当に最深部かしら?」 テクテク


「やっぱりそう思う?」 コツコツ


「うん、だって魔素があまり感じられない。て言うか魔素が少ないっと言ったほうがいいかしら」 テクテク


「ん、それ、正しい感じ方だと思う」 コツコツ


「でもおかしいよッ」 テクテク


「ん?」 コツコツ


「ここはあの大火山『ベガ』の最下層なのよ、ここには、国中どころかこの世界中の魔素が集まって、地下を通ってまた世界に放出するの! でもこんなにも魔素を感じないなんて、これはおかしいわッ!」 テクテク


「そうだろうな」 コツコツ


「気づいてたの⁉︎」 ピタッ


「ん、そのために俺はここへ来た。この大火山の下でなにが起きているのか?、星降りは何故ここに落ちるのか?、世界になにが起き始めているのか?、それを見定めるために」 コツ ピタッ


「じゃあ、ジオスはその為にここ、アルフヘイムに来たの?」 


「ああ、そうだ。ま、そのお陰でアイラ達にも会えたからな」 ニコ


「そ、そうね…」 ポッ


「さッ もう少し先みたいだ、行こう」 コツコツ


「う、うん」 テクテク


長い長い通路を、30分程歩いて、ようやく、一つの扉の前にたどり着いた。


「ここが最深部の入り口…」


「ん、その様だな。やはり、魔法で施錠され中にはそう簡単に入れないか」 ジイ〜


「ジオスどうしよう、多分これも女王様の魔法の枷よ、簡単には開けられないわ」


「ん? いや開くぞ、こんなの簡単だよ」 ニコ


「へ? 魔法の鍵よ! それも女王様のッ! そう簡単に…」 ガチャッ


「ん、開いた開いた、全く、もうちょっと頑丈なヤツにしないとダメだろ、【イーデル】」 フフン


「なんで開くのよ〜」 ハア〜


「まあな、俺に開けられないものはないから(あ、そういえば【セレス】が「アレスファクター」を持ってたな、あれでも開くんじゃないか?)」 


「ねえ、」 ギロ


「ん?」


「今、他の女のことを考えた⁉︎」 グイ


「へ? な、なんで?」


「なんとなく」 ムス


「はは…(わあ〜、これが女の感ってやつか? こえ〜)」


「と、とにかく中に入るよ!」 ギイイイイッ コツコツ


「う、うん」 テクテク


シュワアアアアアーー………


ピッ  ピッ  ピッ  カタカタカタ ビービー!


その中は、この世界には相応しくない、機械だらけの部屋であった。数多くのモニターに明滅する光、それに合わせて音が鳴り、何かの警報音もなっていた。そしてその部屋の中心、一際光り輝いている所に、1人の人物が座っていた。その人物は身体中をコードで機械に繋げ、目を閉じ、眠っている様であった。


「ジ、ジオス」


「ん?」


「ここ、なに?」


「そうだな、ここまで来たんだ、アイラには本当のことを教えとこうか」


「ジオス?」


そう言いながら、ジオスは部屋の中央、椅子に座って目を閉じている人物の前にやって来た。


「ふう、やっぱり君だったか」 


「知ってる人?」


「ああ、よく知ってるさ」


「寝てるのこの人?」


「いや、起きてはいるが…そんな体力がないのだろ」


「え?」


「やっと会えたなッ! 【A01 アリシア】 大丈夫か?」


そう言うと、周りの機械が激しく作動し始め、光の明滅がけたたましく起きた。そして、それが収まったと同時に、その人物は目を開いた。


「お久しぶりです、 ジオス様」 パチッ


「えッ? えッ? なに? なんなの⁉︎」


「あら、こちらのお嬢さんは誰かしら?」 ニコ スクッ


アイラに気づき、A01アリシアは立ち上がり、ジオスに質問をしてきた。


「ああ、彼女はこの世界のエルフ、名前はアイラで、今は俺の婚約者になっている」


「婚約者ッ!」 ギンッ


「ひいいッ!」 ビクッ!


「まあな、まあ落ち着けよ。で、俺がここへきた理由はわかるな?」


「は…はい…」 サッ


「説明してくれるか?」


「はい、ですが、彼女にもそれを聞かせてもよろしいので?」


「アイラ」


「は、はい」


「今から聞く事は、この世界の真実、聞くかい?」


「……うん」 コクン



「ん、じゃあ始めろ! A01アリシア お前の知る全てを聞かせろ!」


 ブンッ!  タタタタタタッ!


空中に、モニターが現れ、その中に、膨大な資料と映像、文字の羅列、これまでの歴史、そしてこの先の未来図、それが映し出された。


アイラはそれを見ているだけで、声も発する事なく見続けていた。


「この世界は、ジオス様のいた世界のもう一つの世界です」


「ん、そうだろうな」


「この異次元世界が出現したのは、この世界の時間で、約300年前、ジオス様の世界ではほんの50日前の事です」


「50日前? へ? なに? なんの話なの? わからない? わからないよお⁉︎」


「アイラさん、元は一つの世界、それが二つに分かれて300年という意味ですよ」


「え?…へ?…二つに分かれた?、え? わあああッ!」 ガクガク


「アイラ…」 スッ ブンッ!


「え? ジ、ジオス… なん…で……」 パタン、スウ〜スウ〜


アイラは、あまりにも事の重大さと、スケールの大きい話に付いてこれそうもなかったので、ジオスは睡眠の魔法で彼女を眠らせた。


「相変わらず、お優しいんですね。ジオス様」


「やはり、彼女には無理だったかな、悪いことをした。で、続けてくれ」


「はい、ジオス様も記憶にあると思いますが、元の世界が神界世界より離脱、異次元空間に彷徨い出した時、この世界が生まれました。元の世界が全てが二つに分かれ、双子世界の様になったのです。が、神と私達特殊制御コアだけは、そうもいかなかったのです…」


「そう、あの時、たまたま二つに分かれる前の世界には、神が不在で、私達も隔離空間にいて影響を受けませんでした。つまり、神と私達、特殊制御コアが存在しない世界が二つできてしまったのです」


「ん? だが俺はいたぞ?」


「はい、ジオス様は唯一無二の存在。その分裂に対し対象外、それだけジオス様の力と能力が大きかったのでしょう、ジオス様が分かれるという事はありませんでした。そして、それがジオス様のいた世界と、ジオス様のいない世界、2つの世界ができたのです」


「そうか、向こうの世界には俺がいた。そして、その世界は消滅しない様に俺が調整したんだっけ」


「はい、そのとうりです。私達特殊制御コアは向こうの世界に留まったのですが、こちらの世界、異次元世界には神もジオス様も私達もいません。ですから…」


「つまり、すぐにでも消滅し消えてしまう世界って事か」


「はい、そこでメインコアの個体No.000Zfar01より、私にこの世界に移り管理、調整をする様、命じられたのです」


「お前1人にか?」


「はい」


「そんな無茶苦茶なッ! それは絶対無理だろ!」


「はい、ここに来てすぐにその事がわかりました」


「じゃあ、もっと応援を寄越せって言えばよかったじゃないか?」


「こちらからの要請通信は全て、ブロックされてましたので不可能です」


「お前、それってもしかして…」


「ええ、ここに来てしばらくしてから気がつきました」


「お前は、お前の生みの親、女神アリシア同様、優秀だもんな」


「ありがとうございます」 ペコ


「つまりは、この異次元世界にA01アリシアをここへ送り込んだのは、メインコアである、No.000Zfar01の仕業。理由は、いずれ消滅するであろうこの世界と共に、優秀で自分を脅かす存在のA01アリシアの抹殺、ってとこか?」


「さすがジオス様、ご明察のとうりです」 ニコ


「だが、お前はこの世界の300年間を生き延びた。先ずはその身の力を全て使い、この世界を維持し続けた。やがて女神からもらったその力も枯渇し始めたので、今度はこの世界の魔素を使い始めた。星降りという名の形をとって」


「はい、私の体は女神アリシア様から膨大な力を頂き作られています。それこそ、個体No.000Zfar01を遥かに凌ぐ程の力を、それに対して、個体No.000Zfar01は嫉妬したのかもしれません。ですか、その女神アリシア様の力も次第になくなり、やむなくこの世界存続の為、この世界の魔素を使わせて頂きました」


「コアのくせに嫉妬か」


「あら、ジオス様」


「ん?」


「コアだからって私たちは一応、女性ですよ。喜び、悲しみ、怒り、そして嫉妬。ちゃんと心があり自立してます。それ、セクハラです」


「なんでだよッ! ってごめんね。そうだ、君たちにはしっかりとした自我と意思があった」


「ふふ、冗談です。私達、全員ジオス様の事は尊敬してます」 ウフ


「はあ〜、ありがとう。で話の続きだが」


「はい、大量の魔素を使いました。ですが、このままではこの世界はあと一年と持ちません…だから…」


「だから、俺を強制召喚したのか」


「はい、申し訳ありません。ほかに方法がなかったものですから」


「ん、しょうがない、気にするな」


「すみません、このままでは世界は滅び、人々は苦しみながら消えていきます。だから…」


『だから、この世界が消滅する前に、自分で消そうと行動したのかッ!』


「ん ⁉︎ 」 クルッ!


A01アリシアが話している途中で、ジオスの後ろから声をかけてきた者がいた。


シュルルルッ! パアアアンン!  バサッ! コツコツ


そこには強制空間転移をしてきた、魔族領の王、魔王が転移して現れた。


「いえ、違いますよ。魔族の王、魔王さん」


「違う? 嘘を言うな、すでに我が領地は消え始めているのだぞ!」


「はい、知ってます」


「じゃあ、やっぱり貴様が…」


「いえ、それをしているのは、【レグニッツア】ですよ」


「なに⁉︎」


「未来なきことを予期した彼は、暴走したのです」


「では、貴様は…」


「止める様、説得はしたのですが…」


「そ、そうか、すまなかった…」


「ん?、魔王?…だって?」 ジ〜


「え、もしかして…まさか…まさか…」 ピタッ


「そうか、そうだったんだ、どうりで…」


「ジオス様? 魔王さんがどうなされました?」


「ん、魔族のアゴンが全く俺と同じ剣技を使ってきた。あの剣技は俺のオリジナルでね、俺以外に使えたのは1人だけなんだ」


「ジオス様の剣技を使える者が1人いた?」


「……」 グッ


「そう、その者って言うのが俺の能力で生まれた妹に当たる者だ。で、その剣技を魔族のアゴンに教えた」


「では、ジオス様の身内が、ジオス様の技を魔族に教えたと言うのですか?」


「ああ、なあ魔王…いや、……【ソフィア】 また会えたな」 ニコ


シュアアアアーー  パアアアンンッ!


魔王の体が光に包まれ、認識阻害の魔法と身体を覆っていたローブが消え、その体全体が露わになった!


そこには、向こうの世界では【アニス】と呼ばれた美少女とそっくりな少女、白金髪をなびかせた妹の【ソフィア】がそこにいた。


「ジ、ジオス様ーッ!」 タタタッ! ガバアッ!


「ん、久しぶり」 ナデナデ


「会いたかった、会って話がしたかった、やっとやっと会えたッ!」 ううう


「そうか、辛かったな」


「はい、あの時までジオス様と一緒だったんですが、一瞬後、目を開ければ私だけ。ミリアもエクセリオンもいない、しかもジオス様の姿がなく必死に探しました」


「それが120年前か?」


「はい、…この世界にもマシューとミウがいたのですが、2人は生命の限界、寿命で亡くなりました」


「そうか、…もうマシューにもミウにも会えないんだな」


「はい、私はジオス様から頂いた、女神の体で転移したので生き延びているのですが…」


「この世界が崩壊寸前ってことか?」


「はい、もうすでに手は尽くし終えた状態なんです。もう…」


「なあ、A01アリシア」


「はい、なんでしょうか?」


「俺とソフィア、それにこの世界、時間軸のズレが激しいのだが何故だ?」


「それは簡単なことです」


「ん、では説明してくれるか?」


ブンッ! タタタタタタッ!


そこに表示されたのは、各個人のステータス表示であった。


「ご覧ください、この表示された数値が、時間軸のズレの原因です」


「つまり、個々の魔素量が多ければ多いほど、時間軸のズレは大きく、少ない者ほど小さくなると言うわけか」


「はい、そのとうりです、それと、この世界とジオス様のいた世界では時間の進み方も違いますからね」


「と言うと?」


「こちらの1日が、向こうでは10日、或いは、こちらの10日が、向こうでは1日、といった具合にランダムで動いています。その誤差は大きい時で1日が50年と言うのも何度かありました」


「それはこの二つの世界が共に、異次元空間にいるからか?」


「正解です」


「ジオス様」


「ん、なんだいソフィア?」


「もう、この世界は終わりなんでしょうか?」


「魔王、いえソフィアさん。これはもう避けられない運命なんです」


「運命…」


「はい、この世界が、分裂して誕生した時点で、決まっていた事なんです」


「そ、そんな……」


「もう時間は残されていません、既に崩壊の兆しは現れています」


「やはり、魔族領の大地が消え始めたのは…」


「そうです、山、川、森、大地、平原、町、動植物に人々、その全てが魔素還元され霧散していきます」


「もう防ぐ事は?」


「不可能ですね、だから、私はこの世界が無に帰す前に、人々ができるだけ苦しまない様にする為に、ジオス様を強制召喚したのです」


「それでは、ジオス様にこの世界を救ってもらう為に?」


「いいえ」 フリフリ


「え?」


「ジオス様はもうお気づきの様ですよね?」


「A01アリシア、本気か?」


「ジオス様?一体何の話ですか?」


「ソフィアさん、私はジオス様に1つだけ、依頼をしたいと思います」


「依頼? ジオス様になにを依頼するのッ!」


「私がジオス様にする依頼とは、『完全消去と言う世界消滅』です」


「 !ッ はッ? えッ? ジオス様ッ!」 ババッ!


「A01アリシア、それでいいのか?」


「……はい」 コクン


「な、なんで? やっと、やっとジオス様に会えたのにッ! なんでそうなるのよッ!」 ブンブン


「ソフィアさん、もう、私が持たないからです」


「え?」


「ソフィア」


「はい、ジオス様」


「もう楽にさせてやってくれ、A01アリシアは限界なんだ」


その言葉を聞き、ソフィアがA01アリシアをよく見ると、すでに片方の足が消滅し始めていた。


「あ、あなた…」


「私が消えると、その連鎖反応で、この世界の制御コアが全て暴走します。そうなれば、そこに住まう人々や、大陸や大海、その全てが崩れ始め、1年以内に消滅するでしょう」 シュ~


「そ、そんな…」 ガクン


「そうなれば、そこに住まう人々の苦しさは計りしてません。ですがジオス様なら…」 シュ~


「え?」


「ジオス様なら、人々が気が付かないうちに無に帰すことができます」 シュ~


「ジオス様、そんな事が…」


「私は、私を作ってくださった女神アリシア様に聞きました。ジオス様の特殊能力」 シュ~


「特殊能力?」


「はい、決して誰にもできない、ジオス様だけの能力、『生殺与奪、消滅再生、無限増減』それらを合わせた究極の能力、これの使用により、みんな苦しまず一瞬で終わるのです」 シュ~


「ジオス様ッ!」 ババッ!


「ソフィア…」 フリフリ


「本当によろしいのですか? みんな、何もかも全部、全て消えてしまうのですよ!」


「ソフィアさん、時間がもうないんです。みんな、気が付くのが遅すぎました」 シュ~


A01アリシアの体はもう半分以上が消え去っていた。それでも彼女は笑顔でジオスとソフィアを見ていた。


「アリシア…ごめんなさい…」 ポタッ 


「最後に名前で呼んでくれてありがとう。さあ、ジオス様、突然ですが、お願いしますッ‼」 シュ~シュ~


「ああ、わかった」 ザッ スッ!


「うう、ううう…」 ペタン ポタポタッ


ジオスはA01 アリシアの依頼をかなえるため、特殊能力を使い始めた。それはジオスのみが許された究極の創造者による特殊能力!


「アリシア、またな!」 ググッ!


「はい、ありがとうございます」 ポタッ シュ~ サラサラサラ…


「うわあああーッ!」 ポタポタポタッ!


「《アレス.グランデ.グラムレーションッ!》」 キイイイーーーーンン!


その瞬間、異次元世界「アーク」は消滅した。



いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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