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第107話 大火山「ベガ」地下通路

ーアルフヘイム 大火山「ベガ」内部ー


ギイイッ! ドオオンッ!


大火山の地下道、入ってみれば僅かに硫黄の匂いがする。ジオス達が中に入ると、入り口に設置されていた門は、まるで意思があるかのように、2人が通った後、自動的にしまって出入口を閉ざした。それと同時に、2人は真っ暗な闇の中に入ってしまった。


「きゃッ!」 ビクッ


「ん、これは暗くていかんな」 スッ


「ど、どうしよう、真っ暗で何も見えないッ!」


「ちょっと待ってね、《ルーカスライト》」 パアアアッ!


ジオスが光り魔法を使うと、火山通路は一気に明るくなり、はるか先まで昼間の様に明るくなった。


「ん、これで歩きやすい」 


「あと、コレもかけとくか、《アノーマル.アプテーション》」 キイインンッ!


2人の体が光り輝き、一瞬体が浮いたあと、その輝きはおさまった。


「え? コレはなにをしたの?」 キョロキョロ


「ああ、状態異常耐性と環境適応魔法さ。コレでいきなり有毒ガスや高熱、麻痺、毒、幻覚などを喰らっても、なんともなくなるから」 


「そう言えば火山の独特の匂いがしない」 くんくん


「ああ、そういうのも適応され無害になってるからね」 


「凄い、こんな魔法があるなんて…(一体どれだけの魔法を知ってるんだろ?)」


「さ、行くよ」 ザッ


「うん」 テクテク


「しっかし大きいなあ、コレ本当に横穴か?」 ザッ ザッ


「私も初めて入ったけど、コレは確かに大きいわね」 テクテク キョロキョロ


2人が驚くのも無理はなかった、その横穴は、横幅50m、高さは40m程、半円形トンネル状の大空間通路で、草木は生えておらず、岩と土だけの通路が、遥か奥までずっと続いていた。


普段は明かりもない場所、この世界の松明や、魔法使いの《ライト》程度では、全体を明るくすることができず、せいぜい数mから10数mまで照らすのがやっと、この大空間通路の全貌を知ることなどできないだろう。


その程度の明かりでは全体がよく見えず、同じ所を回ったり、方向感覚が狂い迷ってしまう。だが、ジオスは違った。その魔法は大空間通路全体を照らし出し、まるで、地上の昼間の如く、その全貌を明るく曝け出していた。大空間通路の隅々、地面、壁、天井、その全てを明るく照らし、地下通路独特の悍ましさが全く無くなってしまっていた。


ヒュウーッ サササッ


「奥の方から風が吹いて来るってことは…」 ウム


「何かわかったの?」


「ああ、ここは一種の排気ダクトだよ」


「はいき? なに?」


「う〜んっとね、そうだな、かまどにある煙突と言えばわかるか?」


「あ、それならわかるわ、なるほど、煙突ね」 コクン


「さてと、(ただの煙突じゃあないだろなあ、ん?…そりゃあ、あるか)」

 ザザッ!


「どうしたの、ジオス?」 ピタ


「アイラ、ここから先は、気を付けろよ」 ヴァンッ! スー チャキ!


「え?」


ジオスは歩みを止め、アイラを制し異空間より神剣「エルデシーゲル」を取り出し構えた。


「入り口からすれば、第1トラップゾーン、侵入者除けの罠ってやつだ!」 グッ


「罠⁉ え、どこ?」 スチャ


ジオスから罠と聞き、アイラは弓を構えた。


「ん、見てな、この一歩をだすと…」 ザッ スタッ


ピカアッ! パアアンンン!  カタカタカタカタッ! チャキチャキチャキン!


「きゃっ! ええーッ!」


「やっぱりそうか、また数が多いな!」


そう、ジオスが一歩踏み出した瞬間、ジオス達の前方、50m位先に、剣で武装した顔のない人形の戦士が約30体ほど、転移して現れた。


「な、なにあれッ!」


「ん? 知らないのか?」


「ええ、見たことがない、でも危険な奴らって事はわかるわ」 ググ


「あれは『パペットファイター』、侵入者に対する意思のない自動攻撃人形さ」


「パペット…ジオス注意して!」


「ん?」


「あの、パペット達、全員がLv.50以上よ。特にあの大きいの、Lv.70近いわ、気を付けて」


「ん、ありがとうアイラ」 ポン ナデナデ


「え? ジオス...」 ポッ


「アイラの武器じゃあ相性が悪い、魔法攻撃で対処して」


「うん、わかった。で、ジオスはどうするの?」


「俺は奴らを殲滅してくる!」 ぐぐッ! ザッ!


そう言ってジオスは一歩前に出て、剣技発動の構えをとった。


「え? 殲滅?(そういえば、私、ジオスの剣技を見たことがなかった。どんな技を持っているんだろ?)」


カタカタカタカタッ! ババッ カチャカチャカチャッ!


パペットファイター達は、ジオスが構えたと同時に動き襲ってきた。


「キャアアッ! 来たああッ!《ウインドウ.スラッシュッ!》」 シャシャシャッ!


カチャカチャカチャッ! シュバッ! バシュッ バシャッ!


襲ってくるパペット達に向かって、アイラは風魔法を放ったが、一向に効果はなかった。


「なんでーッ⁉ 何で効かないのよーッ!」 ババッ


「アイラッ!」


「はい!」


「スラッシュじゃダメだ! ランスかブリットを使うんだ!」


「は、はいッ! 《ウインドウ.ランス―ッ!》」 キンッ! バシュウ―ッ!


シュシュシュッ! ドガッ! バラバラバラ―ッ


アイラの放った《ウインドウ.ランス》で、一体のパペットが直撃を受け、バラバラになって壊れた。


「はッ! や、やった、やりましたッ!」 グッ


「ん、上出来だ、後は俺がやる」 コクン ザザッ!


「はいッ!、(ジオスの剣技、さあ見せてッ!)」 ゴク


「じゃ、《刹那!》神級迎撃剣技!《ガイエリアス.グラン.ファングッ!》」 シュンッ!


「えッ‼ 消えた―ッ⁉」 


ドガアアアアーンンッ!  バラバラッパラパラ…パラ… ガシャーンッ!


「なに⁉︎ え?、ええーッ⁉︎」 ババッ


ジオスを見失ったアイラは、次の瞬間、轟音のする方を見ると、そこには全てのパペットファイターが粉砕され、あの一際大きいLv70近いパペットが崩れ落ちるところだった。


「ん、終了っと」 ビュンッ! チャキン


アイラの目には、神剣を鞘に収め、山のように積み上がったパペットファイターの残骸の上に立つジオスが写っていた。その颯爽とした姿に胸が熱くなるのを感じていた。


「(なッ! なんて人なの、剣の技が全く見えなかった。と言うより動きが全然見えなかった。しかも、あの一瞬で全てを…ありえない…でも…)」 ポ〜


「よいしょっと、さあ中に進むよ」 ザッ


「う、うん」 タタタ


ジオスに近づきながら、アイラは思った。(この人は凄い、私は物凄い人と契りを結んだんだ)と。


「えへへ ♪」ギュッ!


アイラはジオスに追いつくと、すかさず彼の右腕に絡み付いた。


「ん? どうしたんだいきなり?」


「ううん、なんでもな〜い♡」 ギュ ギュ


「おかしなやつだなあ、じゃあ奥に行くよ」


「はい♡」 


ジオス達はさらに奥へ奥へと進んで行った。途中、落石や有毒ガスなどのトラップもあったが、それらを全てジオスは難なく掻い潜り、しばらくして鉄格子の扉にたどり着いた。


「ふむ、この先に何かあるな」 ググッ!


「ハアハア、ね、ねえ、ちょっと休憩しない?」 クタクタ フラ


「ん? ああッ! ごめんッ!そ、そうだね、ここでちょっと休もうか」


そう言ってジオス達は、ここで休憩を取った。ジオスには無限のスタミナと力がある。要するに疲れないのだ、自分が辞めようと思うまで行動し続けることができるのであった。


「悪かったな、はいコレでも飲んでちょと休もう」 コポコポコポ 


「ありがとう」 コク


「  !ッ  」 コクン


「どう?」


「なにこれ?、この間の紅茶とも違う、甘くて美味しい!」 コクン


「ああ、それはホットココアって言ってな、疲れた時飲むといいものなんだ」

 コポコポコポ チャ


「ホットココアですか、コレも好きになっちゃいますね」 コクン


「ん、まあ、言ってくれれば何時でも用意するよ」 ゴクン


「ジオスのは、なに?」 コク


「ん、俺はいつも紅茶さ」 ゴクン ふう〜


「こだわりがあるのね」 コク


「まあな、多分、俺の体が欲してるんだろうなあ」 ゴクン


「体が? 昨晩…のも…?」 モジモジ


「ん? 昨晩? あッ! あれは…」 ゴク


「私は良かったのッ」 コクン


「ん?」


「他の誰でもない、ジオスにあげれて…」 ポッ


「ん、そ、そうか…アイラ、俺、大事にするから…な」 スッ!


そう言って、ジオスはアイラを抱き寄せ、顔を近づけた。


「うん、ありがとう。これからもずっとだからね」カチャ スッ


「ああ、わかってる」……  チュ


軽いスキンシップ、この世界の恋人同士がお互いを認め合う挨拶のようなものだった。

          ・

          ・

          ・

          ・

「充分休めたか?」 ザッ


「ええ、もう大丈夫よ。さあ行きましょッ!」 タタッ


2人は小休止した後、鉄格子の門を開け、中に入っていった。しばらくは軽い下り坂になっており、何の罠もなく進んでいくと、明らかに他とは違う雰囲気の場所にやってきた。


「うん? ここから空気が変わったな」 ザッザッ


「ええ、私にもそれがわかります。何というか、高圧的な嫌な感じ?」 テクテク


「注意したほうがいいなッ」 ザッザッ


「そうね、何かいるのかもしれな…い……ジ、ジオス…」 ピタッ


「ああ、気が付いたかい。やっぱ、デカイのがいたか」 ザッ


相変わらず明るい大通路なのだが、ジオスとアイラは、そこに嫌なものを感じ足を止めた。


グラグラグラッ! パラ  パラパラ…コロコロ…コロンッ 


「アイラッ! 来るぞッ!構えろッ!」 チャキッ! グラグラ


「はいッ!」 スチャ! グラグラ パラパラ コロン ボトッ 


2人のいる足元が揺れだし、天井より砂や小石が落ちてきて、何かとてつも無いものが、ここに現れようとしていた。


バキイッ! ガバアッ! ドオオオンッ! ババッ パラパラ


「来たああーッ!」 ゴゴゴッ グラグラ


「え? え? え? キャアアーッ!」 ペタン


ドドドドッ! ドオオンッ! 「 グギャアアーッ! 」 ズウウンン!


2人の20mほど前の地面が割れ、底から地響きを立てながら現れたそれは、身の丈15m程もある、真っ赤な竜が現れた。その存在感、膨大な威圧でアウラは腰を抜かし下着を汚してしまった。


「ほう、最初から数えてコレが7つ目、第7トラップゾーン、たぶん最後の罠だ!しかし、こうして会うのは初めてだな」 チャキ


「な、なな、なにをの呑気に、いい、言ってるのの..」 ブルブル


「ん? アイラ」


「え?」 ブルブル


「大丈夫だよ」


「へ?」 ブル…


「すぐ済ませるから」 ニコ


「ジオス…え?…体が…」


ジオスの言葉にいつの間にか震えも止まり、ジオスとその前に立ちはだかる赤い竜を見ていた。不思議な事である、普通なら、体は硬直し、声も上げられないのだが、ジオスのその一言で、全くと言って良いほど、恐怖を感じられなくなり、その場に立ち上がることさえ出来た。


アイラは気づいた、(ジオスのあの笑顔だ! あれを見てから恐怖を感じない。それどころか、何か安心感がかんじられる。ジオスなら大丈夫だ、ジオスなら安心だ、ジオスなら…)そんな感じで安心してここにいられるということに。


だが、まがいなりにも相手は赤い竜、アルフヘイムに生息する最強種の生物、竜種、しかも赤! 凶暴で好戦的、その体の鱗は硬く、魔法も無効化する。口からは炎のブレスを吐き、爪は大地を切り裂く最強の生物だった。


「さ、やろうか。赤竜、それとも名前で呼ぼうか? 『グラドス』」 チャキッ! グッ


{ホウ、ワレノナマエヲシッテイルトハナッ! キサマ、ナニモノダ?} ダアンッ!


「え⁉︎ う、うそ! りゅ、竜が喋った?」


「ああ、こいつらは基本、人語を話すんだ、賢いんだぜッ!」


{フン、キサマラノホウガ、カトウナノダ! ワレラハユウキュウノトキヲイキテ、チシキヲタクワエテオル、ズニノルデハナイワ}


「悠久ねえ、たかが千年かそこらだろ威張るなよ」


{ナニ⁉︎}


「へ? ジ、ジオス、ななにを言ってるのかな?」


「なあ『グラドス』」


{ナレナレシイニモホドガアル、イマコノバデヤキツクシテクレルワ}


「仕方ないか、アイラ離れてろ。巻き添えを食うぞ!」


「は、はい」 タタタ


{ナマイキナヤツメ、キエサレッ! 《フレイム.フレアーッ!》}

 キュルルルルッ! バアアアアーッ!


「やめてーッ!」


ジオスに向けて、赤竜のグラドスは口からは竜魔法の炎の攻撃をしてきた。その威力は絶大で、ジオスを飲み込み、周りにあった小岩などは融解して溶け出していた。アイラは、その様子を見て思わず叫んでしまった。


「あ…ああ…ジ、ジオス…ジオスーッ!」 うう、ポロポロ


岩が溶けるほどの高熱のブレス、たとえジオスでも助からないだろうとアイラは思い泣き出してしまった。全てが絶望な状況の中、不意にそれは起こった。


{フハハ、ワレニタテツクニハ、ハヤカッタヨウダナ…ンン?}


「《刹那!》超神級撃滅剣技!《アルテナ.グラン.バスターッ!》」

 ヒイイイイインンンッ! ドギュウウウウウンンンッ!


「ジオスーッ!」 ホッ


{ナンダト⁉︎ コ、コレハッ! ギャアアアーーッ!} バババアアーッ!


 ジュジュジュウウウーッ! ヒュイイイイイインンン………


ジオスの攻撃剣技によって、赤竜のグラドスはチリになって消えていった。


「いきなりブレスなんか打ちやがって、危ねえなあ」チャキン パンパン


「ジオスーーッ!」 タタタタッ!


「ん?ようアイラ、無事だったか?」 フリフリ


「ジオスーッ!」 ガバッ! ギュギュウウ!


「お、おいアイラ」


「平気なの?」 バッ


「なにが?」


「いや、なにがって、あなた今、赤竜のブレスを受けたのよ! 直撃よ直撃ーッ!」


「ん、ああ、何とも無いよ、忘れたのかい!魔法で強化されてたの?」


「あッ!…忘れてた…で、でもッ!」 グッ


「ああ…心配かけたね」 サスサス


「もうッ! 本当に心配したんだからッ!」 プン


「うん、謝る。ごめんな!」 ペコ


「はい、良いですよ」


「さて、ここのトラップで終わりのはずだ、どこかに扉が……ん?、あ、これか!」 グイッ


ジオスは、壁から垂れ下がっていた、鉄の鎖を思いっきり引いた。

ジャラジャラジャラジャラッ!


ドゴオオオン! ゴゴゴゴッ! ギイイイイッ!


すると低い音と共に、壁が動き、この横穴の出口が開いていった。


ガコーンンッ! 


「さあ、開いた。いくよアイラ」 ザッ


「ええ、何処へでも、貴方となら!」 タタ


ジオス達は、大火山ベガの中心最下層に辿り着き、そこへ入っていった。




いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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