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第106話 エルフの少女達

ーアルフヘイム 大火山「ベガ」近郊の森ー



すでにあたりは暗くなり、ジオス達は焚き火の周りに座って夕食後のお茶を飲みながら話し合っていた。


「「「 ごちそうさまでしたあッ! 」」」


「ん、いま、紅茶を淹れるからな」 カチャカチャ コポコポコポ


「ふう~、おいしかった~」 


「ほんとですね、いつも携帯食しかないから、こんな暖かくておいしい料理は、里を出て以来です」


「ん、そりゃよかった。口に合ってよかったよ。ほい、紅茶」 サッ


「「「 ありがとうございます 」」」 コク


「この紅茶も美味しい」 コクン カチャ


「ほんと、何度飲んでも飽きない」 コクコク


エルフの少女達が食後の紅茶を飲んでいた時、彼女達のリーダー格、アイラがジオスに尋ねてきた。


「さて、改めて聞きたいわ」 カチャ


「ん?」


「ジオス、あなたは一体何者⁉︎ 何しにここへきたのッ!白状しなさい!」


「え?(え〜、ここまで持て成して、今更それを言うかあ?)」


「ちょ、ちょっとアイラ、いきなりなによ」


「そうですよ、こんなにもして貰って失礼じゃない?」


「「 うんうん 」」


「だ、黙りなさい! 確かに…その…食事は美味しかったし、『エスパル』や紅茶も…良かったわよ…」


「じゃあ、なんで…」


「忘れたの? 私達はこの森の警備及び大火山『ベガ』の門番なのよ! エルフ以外のものは近づけちゃいけないの」


「え〜 でもお〜」


「コレは私達の女王、【イーデル・アイン・ミラービリス】様の勅命なのよ!それとこれとは別なのッ!」


「それは…そうだけど…」


「ん、イーデルの指示かあ、なら俺が後で言っておくからいいんじゃないか?」


「はああッ⁉︎ あなた、なに言ってんの? 勅命よ勅命ッ! エルフでもないあなたが何言ったって無駄よ無駄ッ! 女王様が許す訳ないわ、今回は見逃すから帰りなさい!」


「あ〜、でもなあ…」


「なによッ!」


「俺、もう結界も解除しちゃったし、遅いんじゃないか?」


「へ? あなたなにを…」 そ〜


アイラはジオスの言葉を聞いて、認識阻害の結界がしてある火山の壁を見た。


「あーーッ! ないッ! 認識阻害の魔法もその結界も無くなってるうーッ!」


「え?うそッ! どうして?」


「どうなってんのコレッ!」


そこにはただの壁と、火山の中に入るための入り口が露わななっていた。


「な、コレで中に入るのは自由自在だあ」ハハハ


「はああッ! な、じゃないわよッ! な、じゃあ! あなた一体なにしたのよッ!」


「いや、だから、火山の中に入るための、認識阻害と結界の魔法を解除した、それだけだが?」


「いやいやいや、ちょっと待って、『解除した、それだけ』って、ここの魔法は全て女王様の魔法なのよ!女王様以外、誰にも解除できないはずなのッ! なんであなたにそれが出来るのよッ⁉︎  わけわかんないッ!」


「いや、別にいいじゃないか、解除できたし。明日の朝から俺は中に入るから」


「ダメええッ! 中に入っちゃダメええッ!」 ババッ


「ん、なんでだ?」


「な、なんでって…そ、それは…」


「ん? それは?」


「わ、私が怒られるじゃないのよッ!」


「あー、なるほど、警備責任ってヤツか」


「そ、そうよッ」


「ふむ、…じゃあ、一緒に入るか?」


「「「 はあ? 」」」


「俺は中に入る、そして君達はその侵入者を追って入る。で、中で俺を捕まえて出てくる。コレなら怒られまい?」


「あなたって人は〜…」 はあ〜


「それを誰が信じるって言うのよッ!」 バッ


「女王」


「なんでそうなるのよ〜 うう…」 フリフリ


「大丈夫、俺に任せとけ。イーデルならなんとかするからさ」 二ッ


「もうダメだあーッ! この人は何を言っても中に入っちゃうんだあーッ! ううッ…短い人生だったなあ〜…」 ふらッ グスン…


「アイラ、諦めよ」 ポン


「うう、レ、レイミ〜…」 グスッ


「そうよ、私たちも一緒だから」 ナデナデ


「「 うんうん 」」


「みんなあ〜」 エ〜ン ガバッ! ギュウ〜


「はははッ! 泣くほど仲がいいじゃないか」


「うるさいッ! この責任は取ってもらうからねッ!」 キッ


「お、おう…(責任? なんだ、なんの責任だ一体?)」


すると1人のエルフの少女がジオスに近づき話してきた。


「ジオスさん、あまりアイラをいじめないでくださいね」ニコ


「ああ、別にそんなつもりじゃあ… 」


すると、ジオスの耳に小声で話してくれた。


「ジオスさん、あの子、アイラは男性とお付き合いしたことがないんです」 ヒソヒソ


「ん、そうなのか」 ヒソヒソ


「ええ、他のみんなは、とっくに婚約者がいるんですけれど、あの子、あの強気な性格がねえ…」 ヒソヒソ


「ああ、なるほどねえ…ん? ま、まさかッ !」 ヒソヒソ


「あの子を宜しくお願いしますッ!ジオスさん♡」 ヒソ ニコ


「ええ〜…」 チラッ!


「なによッ!」 ギラッ!


「い、いや、別に..(わあ〜、すっごい睨んでる、なんで俺の周りにはこんなのが集まってくるんだあ?)」


「さ、夜も遅いし、交代で休みましょ」


「はあ〜、そうね、ジオスはどうするの?」


「ああ、俺は、朝まで眠らないから、君達は風呂にでも入って早く休みな!」


「そうなの? じゃあ遠慮なく……今なんて言ったッ!」 ババッ!


「おわッ! いきなりなんだよッ!」


「もう一回言って! 今なんて言ったのッ⁉︎」 ジリ


「いや、だから、俺が朝まで起きて見張るからって…」


「そのあとッ!」 グッ


「風呂に入って早く休めって…」


「お風呂ッ! 今そう言ったわねッ⁉︎」 グイ


「ああ、言った」


「どこにあるのッ!」 グイイッ!


「え?、そのテントの中(近い近いッ!)」


「は? テントの中ですって?」 バッ タタタ


そう言うと、ジオスから離れ、先程自分たちが横になっていたテントの中に入っていった。


「あったあーッ!」 ガバッ!


中から叫びながら、アイラはテントから出てきた。


「みんな、ジオスの言う事は本当よ!テントの中に扉があって、中に脱衣場と洗面とトイレ、それに浴室、お風呂があったわッ!」


「本当なのアイラッ!」


「ええ、この目で確かめたから、みんな一緒に入れるくらい広いの」


「きゃあー、久しぶりお風呂に入れるッ!」


「いつも川で水浴びだけだからね」


「ジオスさん、宜しいんですか?」


「ああ、入っといで、中から鍵も掛かるし、ゆっくり体を温めてくるがいいさ」


「「「 ありがとう! 」」」 タタタ


そう言って、少女達はテントの中に消えていった。

          ・

          ・

          ・

パチパチ カタン ボウッ メラメラ…


コポコポコポ カチャ ゴクン! ふうう〜…


ジオスが焚き火の前で1人、紅茶を注ぎ飲んでいると、1人の少女が近づいてきた。


テクテクテク


「あ、あのうジオス」


「ん? なんだいアイラ」


「お風呂、ありがとうね。みんな喜んでるわ」


「まあ、女の子はみんな綺麗好きだからね。こんなとこじゃ風呂どころか、ゆっくり睡眠もできないだろ?」


「ええ、それには本当に感謝してるわ…」


「ん、いいって、ここでアイラ達に出会えたのも何かの縁だ、気にするな」 ニコ


ドキッ! (え? 今のなに? 体の中が熱い、なんなのコレ?)


「ん? どうかしたのか?」 ゴクン


「なッ なんでもないわッ!」 アセアセ


「ん、アイラは可愛いなッ!」 ニコ


「ヒャッ! かッ 可愛いなんて…」 カカア〜 ドキ


「まあ、俺以外の男も皆そう思うだろな」


「……」 カカカッ! ドキドキ


「おっと、アイラも何か飲むかい?」


「うん、お任せする…」 コクン


「そうだな、風呂上がりだから…アイスティーでいいか」 コロンカラン、トクトクトク


「(アイスティー? なんだろ? 氷⁉︎ なんか凄い!)」 ジ〜


「ほい、どうぞ 」 カラン サッ


「あ、ありがとう、あのねジオス」 コク(美味しい)


「ん?」


「さっきは、ごめんなさい」 ペコ


「ん?」


「いや、その…あなたの事を…その…」


「アイラ」


「え?」


「気にしなくていいよ。俺、こう言うの慣れてるから」


「で、でも….」 カラン


「俺はこの世界に呼ばれた、転移召喚者。そうだな、君達からすれば、異世界人ってヤツだ」


「え⁉︎ じゃあ、ジオスはこの世界に家族は…」


「ん、家族はいない」


「そ、そんな…」 ウルッ


「でも…」


「え?」


「でも、そんな俺でも、君達みたいに仲良くしてくれる人達でこの世界はいっぱいだ!」


「仲良く…」 コクン


「そう、皆、出会って、話して、触れて、仲良くなって、友達になってくれる」


「……」 コクコクン カチャ


「だからアイラ、気にする事はないよ!」


「ジオスッ!」 ガバッ! ギュウ 


「ア、アイラッ?」


「なるッ! 私がなってあげるッ! ジオスの友達にッ!」 ギュウー


「ありがとう、アイラ」 ナデナデ


「ジオス…」


その様子をテントの中から見守っていた者達がいた。


「(そう、今よ!アイラッ!)」 グッ


「(チャンスよッ! いけえー)」 グッ!


「(わくわく、ドキドキ)」 ポッ!


「(きゃあー♡ )」 カア〜



「ジオスッ! んッ!」 グイッ!


「んッ! アイッ…」 バッ


アイラはジオスの口に向かって、自分の唇を重ねた。  チュ


「「「「( きゃあああーッ!♡ )」」」」 キュンッ!


そこには、焚き火の火が揺らめき、薪が弾ける音の中、2人の男女が唇を重ね、抱き合っていた。しばらくして、ジオスとアイラは唇を離し、抱き合ったまま、会話を続けた。


「ご、ごめんなさい」 カア〜


「アイラ、君の気持ちは受け取ったよ」 ニコ


「ジオスーッ!」 ギュウーッ!


その瞬間、テントから一斉に、エルフの少女達が駆け寄ってきた。


「「「「 きゃあーッ! やったね!アイラーッ! 」」」」 ババッ タタタ!


「え! み、みんなッ!」 バッ


「あれ、寝てなかったのか?」


「こんなイベント、見ずにはいられないわ!」 ニコ


「そうよ!アイラ、一世一代の大勝負!」 ギン


「やったねアイラ、おめでとう!」 パチパチ


「「 おめでとう! 」」 パチパチ


「みんな、ありがとう!」


「え? あの、コレって…」


「ジオスさん、アイラを宜しくね!」


「ん? いったいどう言う事なんだ?」


「とぼけてもダメですよ!」 ニコ


「ま、まさか…」


「はい! 女性エルフの初めてのキス、こ、ん、や、く、おめでとうございます」 ニコ


「ああーッ! またやってしまったあーッ!」 


グイッ! グイッ!


「ん?」 サッ!


そう叫んだ時、ジオスの服を引っ張る者がいた。それに気づきその者を見ると、涙目のアイラがこちらを見上げていた。


「私じゃ、ダメ?」 ウルウル


「ううッ!…….いいよ、アイラでいい!」 コクン(クウ〜 ずるいぞ!涙目の上目遣いなんて、断れないじゃないかあ〜)


「ありがとうーッ!」 ガバッ! ギュウウッ!


「(さすがアイラ、教えたとうりねッ!)」 グウッ!


「(ありがとう!コレからも頑張る)」 グウッ!


「ん?」


「ハハハ…おめでとう」 パチパチ


ワイワイ キャッキャッ ハハハ…


「さ、もう寝ようか、後は2人だけの問題だしね」 サッ


「そうね、私達はここまでね」 ササ


「「 は〜い 」」 ササ


アイラを除いた他のエルフ達は、テントの中に消えていった。

          ・

          ・

          ・

その後の事は神のみぞ知る。そして、深夜遅くに、アイラはテントの中に消えていった。


「おやすみ、アイラ」 ふう〜


ジオスは1人、焚き火の際に座り、紅茶を入れなおし飲み始めた。


「5人目の奥さんか、他のみんなと仲良くしてくれるといいな」


そうして夜は更けていった。




ピピッ ピピッ! バサバサッ! 


パチパチ、ボウッ! メラメラ ジュウ〜 トントントン ブクブク


早朝、小鳥の囀りを聞きながら、朝食を作るジオスの姿があった。


「卵焼きにベーコン、サラダにパンっと、コレでよし!あと、スープを火からおろして、紅茶の準備だな」


相変わらず、手際のいいジオスであった。そんな中、テントから1人、また1人とエルフの少女達は起きてきた。


「おはようございます。ジオスさん」


「ん、おはよう、もうちょっと待っててくれ、もうすぐできるから」 カチャカチャ


「すごいですねえ、朝食まで完璧なんて」


「ん、そうか?」 ジュウ〜ジュウ〜


「普通、野営地での食事は、携帯乾燥食と水だけですからね」


「ええーッ! そうなのか?」 コポコポコポ カチャ


「ええ、どこの冒険者も旅人も、皆そうですよ!」 ふふッ


「まあ、俺は俺っと言う事で、ね!」 パチ


「はい、わかりました。では他の子も呼んできます」


「ん、頼むよ」 ササ


そう言って、レイミーという名のエルフは、まだ起きて来ていない仲間を呼びに、テントの中に入っていった」 


しばらくして、彼女は眠そうなアイラや仲間達を連れてやってきた。


「おファようございます…ふみゅう…」 ファアア〜


「ん、おはようアイラ」 ニコ


「えッ? あッはい!」 ビク


「さあ、朝食もできたし、皆で食べよう」 カチャ


「うう…はい……..」 テクテク


寝ぼけ顔を見られて恥ずかしかったのか、それとも昨晩のことを思い出して恥ずかしかったのか、アイラは顔を真っ赤にして朝食が用意してあった、屋外では珍しいテーブルでの席についた。


「ん、皆いいね」


「「「「「 はい! 」」」」」


「じゃあ、いただきます」 バッ


「「「「「 いただきま〜す 」」」」」 ババッ


「ん〜ッ コレ美味しいッ!」 パクパク


「本当、まるでレストランの朝食みたい!」 パク ングング


「ああ〜、コレが毎日続けばいいのにい…」 モグモグ


朝食も結構評判が良いようであった。 そして朝食が無事済み、いよいよジオスは火山の中に入る準備をし、入り口の前に来た。


「さあ、俺は行くけど、君たちはどうする?」 ザッ


「あなたには、私だけがついていくわッ!」 ザッ


そう言って、アイラが1人名乗り出た。


「ん?、アイラだけでいいのか?」


「ええ、みんなで行ったら、ここの守りが誰もいなくなってしまいますからね」


「そうか、ではアイラ」


「はい」


「一緒に行こう!」 ザッ!


「はいッ!」 タタ


「アイラ、気をつけてねえ!」 サッ!


「「「 行ってらっしゃ〜い 」」」 フリフリ


「うんッ! 行ってくるッ!」 ニコニコ


「じゃあ、入るぞ!」 ギイイッ! ドオオオン!


火山の入り口の門を開け、2人は中に入っていった。それと同時に、門は再び閉まってしまった。






いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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