冥土の土産
立ち尽くすロン。そこへ再び深淵の魔術師が現れ溜め息を吐いた。
「今誰か俺を笑ったか?笑えよ...笑ってくれよ...」
深淵の魔術師は床に転がる亡骸に向かって
「成る程、君はその道を選択したか...」
と云うと次に主人公に向かってこう云った。
「ロンよ冥土の土産に一つ、よいことを...そうだな、2つ程教えてあげよう。そうだな...先ずは君の誤解を解いておこうか。」
「誤解?」
「そうだ。君は今回の件、大きな...それでいて致命的な勘違いをおかした。エリスは確かに共喰いの呪術にかかっている。だが君がかかっているのは別の呪い...いや、魔法だ。」
「え?」
予想だにしなかった深淵の魔術師の言葉にロンは少し拍子抜けした。
「君がかかっているのは swindler〈詐欺師〉という低級魔法だ。つまり君は呪いがかかっているように見えるだけで、実のところは頗すこぶる健康な状態なのだよ。」
暫くの沈黙の後にロンは口を開き
「でも僕は確かに日に日に体力を失っていって...」
「それはただの風邪だ。薬を飲んで十分に寝れば時期に治る。」
「なら最初にそう云って下されば...というかあなたが呪いだって」
「聞かれなかったからな。それに共喰いの件、君に向かってした覚えはない。」
「そん...な...ただの勘違いで...ただの勘違いで殺さなくてもよかった彼女を殺してしまったのか!」
「次に2つ目だが、これが一番重要かな?彼女に共喰いの呪術をかけたものの正体だが...」
「誰...なんです?」
「私だ」