VR装置を装着したぼくは・・・
VR装置の新作お披露目があった。
ぼくは友人の達也と会場に遊びに来ていたんだけど、偶然配布された整理券の番号が呼び出されて、実際に体験することになってしまった。
ヘッドギアとゴーグルを装着したら、何かの乗り物の座席に座っていた。
隣の席には達也がいたので、こいつも一緒なんだな、とちょっと安心した。
「サブオービタル機による小宇宙旅行にようこそ」
女性の声がアナウンスした。
「小宇宙旅行だってさ」
達也がワクワクしてぼくに言った。
「実際に旅行したデータが使われてるんだろう?」
ぼくはドキドキしながら言った。
船内には空気があるようだったが、乗員は全員宇宙服に身を包んでいる。
秒読みが始まった。轟音。そして身体にGの負荷がかかる。
耐圧ガラスが嵌め込まれた窓から外を見ると、急上昇過ぎて視界が定まらない。
空色から藍色へ。
「只今、地上100キロメートルです」
「うわあ」
0ーG。
胃の府が浮いたような奇妙な感覚。
宇宙だ!
「当船はマッハ3の速度でここまで来ました。これから地上へ帰還体勢に入ります」
本当に、小、宇宙旅行なんだな・・・。
無事に地上へ帰還すると、ぼくのVRのプログラムが終了した。
「どんなだった?」
達也が早めに終えて待っていた。
「良かったよ」
「俺もなぁ・・・あとちょっとだったんだけどなぁ」
「何が?」
「あの女の子可愛かったよな♪」
「ちょっと待て、なんだ女の子って」
「疑似恋愛プログラムだろ?俺、しくじってゲームオーバーになったんだよ。お前は?けっこういい線行ったんじゃないのか?」
こいつぅとぼけちゃって‼と達也が言った。
なんのこっちゃ?
ぼくは狐につままれたような気がした。