Part7
紫に囲まれた空間に放置されている。なぜ?ここは夢なのか?戸惑っていると、目の前に漆黒の少女が現れる。
「…マーニュ?」
目を細めて見る。顔にある凹凸だけでは誰か特定出来ない。ただ子供であるということのみ。しかし、髪の長さや身長でマーニュの面影を感じる。そしてその少女は巨大化していき影で俺を飲み込んだ。そして、その瞬間、夢が覚めた。
「カールさん!あ、起きた!」
「…マーニュ?」
「へ?」
レンタカーの中で目覚めると、ずいっと顔を寄せてきたアメリアが一瞬キョトンとし、今はニコニコしている。どうやら先ほどの出来事は夢だったようだ。
「カールさんうなされてましたよ?何か怖い夢でも見てたんですか?」
ガサガサとエコバッグの中を漁りながら聞いてきた。
「いや…何でもないよ」
ここで夢ことを言い深堀されて何かと言われるのは嫌だ。
「え〜、これを見ても同じ事は言えるかな〜?」
そう言うとアメリアは大きめのエクレアを差し出してきた。しかもこれ、俺が好きなやつだ。
「これでもう抵抗させません!」
そう言うと強引にエクレアを口に押し付けてきた。口の周りがクリームだらけになる。
「うわっ!やめろ!!あぁ…エクレアが…」
顔の半分がクリームになったとき、外からドンドンと力強く窓を叩かれた。そちらを振り返ると、イル・ド・フランス地域圏のところにいた青年警察が窓を下げるようにジェスチャーをしていた。彼は血まみれで、傷だらけだった。
「今すぐここから立ち去れ、イル・ド・フランス地域圏の周囲2.5キロ圏内も危険地帯に指定された。早く逃げろ」
と言うと彼は窓から紙を雑に投げ入れ、ほかの人を探すと言って街に消えてしまった。その紙には『毒沼の急速な拡張及び巨大生命体について』という大きな見出しがあり、沼が急速に俺らの居る方向にグンと伸びてきたらしい。さらに、巨大生命体と称されているのは正体不明の生物で、二人の警官を殺害したらしい。ほかにも重軽傷者は何人もいて、彼もそのうちの一人だったんだろう。
「とりあえず移動するか。ここら辺の近くで大きな街に行きたいな」
情報収集のためにも人の行き来が激しいところに行きたいところだ。この近くの有名都市といえばあそこか。
「アメリア、今からオルレアンに行く。わかったな?」