Part6
レンタカーに乗車し、なれない手つきでハンドルを手にする。アクセルを踏み込むと車は動き出し、教習所以来の感覚に襲われる。
「わぁ!綺麗な街並みですね!」
うるせぇ…こっちは集中してるんだ。
「わぁ!見てくださいあの建物!」
うるせぇ…。
「あぁ!見て見てあれよあれ!」
「うるせぇ黙れ!車から突き落とすぞ!」
もう我慢ができん。これを言うとアメリアはシュンとして黙った。こっちは何年ぶりの運転だと思ってるんだ。若干イライラしながら運転していると、五分も経たないうちに「あれ!あれ!」とメガネはうるさい。しょうがない。怒るのも面倒くさいからもう放っておこう。
出発してから何時間も経った。かなりの疲れが溜まっており辺りはもう真っ暗だ。それに、パリに近づくほど電気が少なくなってきている印象だ。そしてついには電気がひとつもなくなった。もう少しでイル・ド・フランス地域圏なのだ。当然避難している人が大多数だろう。そして奥に進み続けると遠くに赤く光る棒が見える。そしてそれは、案の定警察だった。大声で「止まってください!」と言われたので止まるしかない。
「イル・ド・フランス地域圏はパリの毒素拡大を受けて現在封鎖中です。これ以上先に進むことはできません」
その警官は若く、冷たい瞳をしている。なにか、僕に似ている。少年の奥の景色を見ると真っ暗なのだがしばらく人が立ち入っていないということがよくわかり、草の背丈が高くなっている。
「ねぇせっかく来たのに帰っちゃうの?」
アメリアが眠たそうな声でいう。勿論封鎖されていることなど想定内。
「じゃあこれより先に進まないからここで寝泊まりしてもいいか?」
そうして朝になってからイル・ド・フランス地域圏に沿って歩いて行けば何かをわかるかもしれない。そう考えていた。警官と見つめ合う。なんだか変な空気だが目を離す気は無い。一度冷静になる。なるほど、こいつらは何かを隠しているんだな。こういう奴らには関わるといいことがない。いいだろう、この謎が妹に関わってくるに違いない。イル・ド・フランス地域圏内に入れないのならお前らから間接的に情報を収集してやる。こうして俺らはここから引き返し、離れたところで車内泊をした。マーニュ、絶対に見つけ出してあげるからね。