Part15
車の中はまるで部屋のようだ。乗ると本当にひとりでに動き出した。最先端だな。目の前にはファイルがあり、紙が入っていて今回の毒沼でやって欲しい事は主に内部写真を撮ってくることらしい。それ用のスマホもファイル内に入っていた。他にはソファーの隣には沼に入るということで服みたいな長靴が入っていた。次いでに銃の使い方も見てみると、引き金を引いてから三秒ほど待たないと使えないらしく三秒経ったあともう一度引き金を引くことにより、この前の大砲のように頑固な泥を壊せるらしい。説明書の下の方に書いてある変な式は見ないことにする。そして、勝手に黙って行ってしまったのでアメリアには悪いが仕方がない、そもそもあいつはこの旅に必要ないんだ。窓から外を見るとだんだんと人気が無くなってきている。頬を窓にへばりつけて奥を見ると、そこにはあの日から姿を変えていない毒沼があった。
車に揺られること何時間か、沼に入ると車は減速し疾走感はなくなったが少しずつパリに近づいている。パリに近づくにつれ建物だったものの崩れ具合が酷くなっている。コンクリートや石などは沼の影響なのか紫に染まっている。こんな姿になってしまった哀れな都を眺めていると、あらかじめプログラムされていたのかどこなのかもわからない街で止まった。エッフェル塔も凱旋門もヴェルサイユ宮殿もこんな姿になってしまっているのだろうか。地に足をつけるとぬちゃっと嫌な音を立てる。本来は人がいられるはずのない世界に今僕はいるのだ。改めて周りに目をやると、木も、建物も、そして人も、脆い沼と化してしまっている。それに、この街並みにはなんだか見覚えがある。そして俺はなにかに導かれるようにスタスタと歩き出す。体が勝手に動くとでも言った方がわかりやすいだろうか。でも何故か行き先がわかる気がする。銃をホルスターに収めながら呟いていた。
「行こう、沼に」