Part14
「カールさん。カールさんいますか?」
俺が共同部屋で寝転んでいると白衣を着たおじさんに呼ばれた。なになに?この前の健康診断で異常でもあったのか?廊下に出ると、医者の後にエリックもいた。
すぐ隣の部屋に通され、俺は席についた。
「え〜ではカールさん。あなた、健康診断の時に黒いトンネルのようなところを通ったのを覚えていますか?」
そういえばそんなこともあったな。たしか毒に犯されてないかと耐性の検査だった気がする。
「その結果がこれなんですが…」
四角に囲まれたところには「0」という数字だけ印刷されている。これって耐性0って意味じゃないのか?
「これ以外にも細かい数字を見てみると、カールさんはあれだけ至近距離に人型がいながら毒に全く犯されていないんです。それに、耐性値なんてマックスですよ。あなた、毒に対する完璧な耐性があります」
「まったく、どういう事なんだ?」
え?俺疑われてる?
「今警察側からお前に二つの選択肢が与えられた。一つはこのまま一生警察の保護下に居続ける。もう一つは毒耐性を利用して毒沼に入る。この二つだ」
ここで俺はこの旅の遠い目標であった毒沼に入るということがポンッとできるようになった事に素直に驚いた。勿論答えは決まっている。
「毒沼に行きます」
俺の即答に医者もエリックも少し驚いた様子だった。しかし、エリックはすぐ切り替えて「じゃあこれを受け取れ」と言った。エリックは足元にあったスーツケースから変な形の銃が手渡された。「アメリアがアイディアを出してドミニカと二人で作ったものだ。動作確認もしてある。使い方は中に書いてあるから車の中で読め」
と言って、エリックと一緒に廊下に出る。そのまま真っ直ぐ突っ切ってそこにある扉の奥に車が待っているらしい。その奥に進めば俺の行きたかったところに行ける、夢が叶う。それは今の俺にとってなんだか複雑だった。
「カール。アメリアはに会わなくてもいいのか?」
「は?なんでだよ?」
なぜだか分かっているのにこんな言葉しか出ない。何故だろう。いつからだろう。俺の目的はマーニュであるはずなのに。その目的に近づくことが嫌なような。不思議だ。そして、たまたまふっと廊下の窓を除くと隣の棟にいるアメリアが見えた。あっちで出来たであろう女友達と楽しそうに話している。それを見て、なんだか吹っ切りがついた。
「エリック。俺行くよ」
「…分かった。乗れば車はひとりでに動き出す。最新の車だから安心しろ。じゃあな」
その言葉を聞き終えて、俺は歩き出した。後ろで「頑張れよ」と小さく聞こえた。そして「じゃあな」と悲しそうな声が聞こえたあと、革靴が当たる音がした。少しづつ扉が近づいてくる。
「アメリア、じゃあな」