Part11
突如現れたドミニカが仲裁してくれたおかげで何とか死を免れた。
「別にイル・ド・フランス地域圏に来たのはこの子達だけじゃないだろうし、別に南の区域を担当してたのはエリックだけじゃないでしょ?他の警官も毎日のように入りたいっていう人が来てるみたいだし自分だけ特別だと思ったらダメよエリックちゃん」
「…ちゃんはやめろ」
ドミニカが机の角に腰掛けながらエリックの肩をつんつんしている。かなり親しい仲のようだ。特にドミニカの気になるところは腕につけている銀色の大きなブレスレットで、とても分厚くまさに兵器のよう。それにアメリアも釘ずけになっている。
「あのぅ」
エリックとドミニカがイチャイチャしている静かな空間のなかアメリアが声を上げた。アメリアって意外とグイグイ行く系なんだな。
「その腕のってもしかしてνμλのα版ですか?」
…よくわからん。よく分からんがきっとブレスレットの事なんだろう。
「おおすごいな!見た目だけじゃα版とわかるやつどころかνμλとわかるやつもいないんだ!」
「そうなんですか?前までνμλのβ版は持ってたんですけど使う前に師匠に捨てられちゃって」
「「ちょっと待て」」
俺とエリックが同時に反応してしまう。話の内容が分からなすぎる。なんだそのニュルニュルした名前のものは。
「ん〜簡単に言うと姿が消せる腕輪…みたいな?研究者界隈だと有名だよ」
どうやら先ほどの出来事はこの腕輪の効力らしい。
「とにかくカール君、これ以上ここにいてもどうせイル・ド・フランス地域圏には入れないしミラノに帰って関係ないってことを証明するしかないよ」
「…」
確かにその通りなのだが、このために何年間準備をしてきたことか。ここで簡単には引き下がれない。でも居たとしても何が出来る?毒沼の浄化もできなければ、化け物に怯えることしかできない。謎の葛藤だ。しかし、突如この葛藤も小柄な警官の大声で途切れた。
「エリックさん!…にドミニカさん!あ、あれが!!」
不意に部屋の中が暗くなり、思わず窓の方を見る。その窓には、この街には不似合いな紫色の柱があった。