Part10
エリックはこちらを睨み続けたまま続けた。
「お前らがイル・ド・フランス地域圏付近に現れてから年間全体に0.5センチずつ広がっていた沼が一気に何キロも伸びてきた。これを見てみろ」
そう言うと衛星写真のようなものが置かれた。そこには以前までパリにしかなかった毒沼が南に腕を伸ばしたかのように伸びている。
「さらに、警官を二人殺害したあの怪物もお前がいるオルレアンに出現した。…何か知っているんだろ?」
「知らねぇよ!俺らはただパリに人探しに…」
そう言いかけると、エリックは急に立ち上がり俺の肩を強く押した。俺は予想していなかった力に思わず倒れて壁に寄りかかる形になった。エリックが近寄ってくる。
「言い訳はそれだけか。微動打にしていなかった沼が一気に動き出したんだぞ?しかもお前がいる方だ。これが偶然だとでも言うのか?」
別に関係ないのだが、俺自身もこれを偶然と否定出来なかった。
「お前らのせいで何人も死んだんだ。俺が罪に問われてもいい、今お前らを殺す!」
そう言うとエリックはバタフライナイフを取り出してきた。
「お、おぉおぉ!!ちょっ!ちょっと!」
突如突きつけられた死という運命に、パニックになってしまう。アメリアは固まったまま動けないようだ。彼が腕を上に振り上げる。死に場所は選べないんだな。マーニュ、ごめんよ。
「まぁ落ち着けって〜」
どこからが声がする。自分の血を見たくなかったから目を瞑っていたが、目を開けるとそこには不思議な光景が広がっていた。ナイフがどんどん薄くなっていき、終いには消えてしまった。
「ドミニカか?どこにいる?」
エリックが周りをキョロキョロしながら言う。ドミニカってさっき小柄な警官が言っていた人か?
「ここだよ〜」
と声が聞こえるとエリックの後ろの空間に色が付いていき、高身長な白衣の女性が現れる。
「全く、エリック君はすぐに頭に血が上るんだから」
そういったドミニカはエリックの首に手を回し抱き着く。とりあえず、助かったってことでいいんだよね?