エピローグ②
おれは、最後の執行者を倒すことで、その地位とアカシックレコードへの干渉権を継承した。
いくつもの世界と何億もの可能性を渡り歩いた先に、彼女はいる。
死者の魂を必要とするアカシックレコードの向こう側へと進む旅だった。
災厄の向こう側。
執行者が神であるアカシックレコードを殺すための旅。
運命なんて決まっていない世界への船出。
そこに彼女はいる。
そして、おれはたどり着いたのだ。
彼女のもとへと。
※
最近、夢を見る。
不思議な夢だ。
わたしは、顔も知らない男の子と旅をしている。
わたしは彼のことが大好きなんだけど、旅の最後には死別が約束されている。
夢から覚めた時、わたしはいつも泣いていた。
どうして、泣いているのか、自分でもわからない。
でも、本来いるはずのひとが、私の近くにいないという実感があった。
わたしは、そのひとを忘れてはいけないのに、忘れてしまっている。
いつもの日常がはじまった。
彼がいない、いつもの日常が……。
通学路を歩く。
いつもの朝だった。
いつもの学校。
いつもの街並み。
いつもの電車。
その平凡さが、わたしにとっては異常だと感じる。
わたしは、いつの間にか子供のころ遊んでいた公園に来てしまった。
学校をさぼるつもりはなかったんだけど……。
なんとなく、ブランコに座りこむ。
すると突然、目の前に光が広がった。
その光から、ひとりの人影が歩いてきた。
男の人のようだ。
異常な状態なのに、少しも怖くなかった。
むしろ、その光に懐かしさすら感じていた。
「やっと、会えたな、さくら」
彼は、不思議なことにわたしの名前を知っていた。
そして、私も……。
「おかえりなさい、ユウト」
わたしたちは、何億年、そして、数時間ぶりのキスをした。




