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おれと幼馴染が隕石のせいで異世界転生  作者: D@2年連続カクヨムコン受賞
最終話 アカシックレコードの向こう側
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神殺しの先に

 あいつが、おれたちの攻撃に集中している間に、政さんが執行者の後ろに回り込んでいた。

 彼の腕には、二又の槍があった。

 本来、ここには存在しない聖槍だった。


 政さんは、勢いよく執行者の体を貫いた。

 おれたちを攻撃しようとしていた執行者は、苦悶の表情を浮かべる。


 自分が貫いたものが、ロンギヌスの聖槍であることに気がついたようだ。

「どうして、これが、ここに……」


 槍を離した政さんは、執行者と同じように厳しい顔となっていた。

「その聖槍は、使用者の生命力を使って、繰り出せるものだ。常人の生命力では、使用者の体がもたないから、我々は四人の力を合わせて使っていた……」

「まさか……」

「そう、我々は不老不死だ。だから、ひとりでもこの槍を使うことがで、きる。最も、使用、後は、……」

 彼はそう言って、力尽きた。

 彼の体は、一瞬にして灰となった。

 

「自分の生命力を極限まで使い切りやがったのか」

 執行者の言葉が乱れていた。

 明らかに動揺していた。


 ここが最大のチャンスとなるのは明白だった。


 おれとさくらは、アイコンタクトを取り、すべてを理解した。

 おれが一直線に、あいつに向かって突撃する。


 執行者は、氷の刃で応戦しようとするも、聖槍の効果で動きが鈍っていた。

 そのうえ、さくらの魔法により、動きが封じられる。

「ぐ」

 執行者は短い悲鳴のような声をあげる。


 おれは、その瞬間を逃さなかった。

 聖剣によって、執行者の体がふたつに分かれた。


「やった」

 おれは、手ごたえを感じて、倒れこむ。

 緊張が解けて、体が動かなくなった。


 執行者は、まだ息があった。

「みごとだ、ユウトよ」

 博士の声でそう語りかけてくる。


「やはり、ここでわたしが倒されるのも、因果の決定事項だったようだな」

 あいつはそう淡々と話した。


 そこでおれは気がつく。

「因果の決定事項」だと。

 しかし、おれは天空世界から離れる際に、こいつがこの時間上で世界を破壊する姿を見たのだ。

 こいつが倒れるということは、おれが見たあれはなんだったのか……。

 おれが死んだ隕石の落下は、規定事項ではないのか。


 なにかがおかしい。


「しかしな、わたしがここで消滅することは、アカシックレコードに明示されていないのだよ。どうしてか、わかるかな?」

「まさか」

 おれは、蒼白になる。

 嘘だろ。

 ありえない。

 どうしてだ。


 しかし、そうなれば結論はひとつしかなかった。

 あいつがここで消滅しないということは……。


「執行者の分体は、もうひとり存在しているのか?」

 おれは最悪の可能性を口にした。

「左様。そして、そいつはすぐそこにいる。さあ、名乗りでるがよい」

 そう言って、執行者の本体はこときれた。


 そして、分体は、執行者本体にゆっくり近づいた。

 おれは、頭の中が真っ白になるのを自覚する。

 

 あいつは、うつむきながらこう言ったのだった。

「ごめんね、ユウト」


 執行者の分体は、おれの幼馴染「さくら」だった。

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