黒幕
「どうして? おかしなことを聞くな、ユウト」
そう言って博士は笑いだした。
そのひとを馬鹿にしたような笑い声は、あのエンシェントドラゴンを連想させた。
「この結果が目的だったんだよ。転生者であるキミに、その聖剣を抜かせて、旅をさせて、ここに到着させる。すべてが計画どおりだった」
「一体、何が目的なんだ」
「アカシックレコードの執行者の復活だよ」
「“執行者”?」
「そう執行者だ。キミたちは、勘違いしているのだ。キミたちが神だと考えているのは、あくまで執行者だ。アカシックレコードこそが唯一無二、絶対の存在である」
「しかし、その執行者は聖槍により、封印されたはずだ」
「そう、執行者は封印された。しかし、すべてを封印したわけではないのだよ。執行者はアカシックレコードの完全な遂行をおこなわなくてはいけない。本体になにか起きた場合に備えて、霊魂を分割しているのだ」
「霊魂の分割だと?」
「そう、おまえたちが神だと考えていた執行者は、保険のために事前に魂を分割していたのだ。力の弱い魂は、年月が経過すれば消えてしまう。しかし、私は執行者の力にもっとも近い分体なのだ。だから、半永久的に生き続けることができるのだ」
「だから、未来世界のおれたちに接触することができたのか」
「そうだ。おまえたちと接触し、この海底神殿の封印の間におまえたちを導いた。それこそが、アカシックレコードが私に指示した使命だったのだ」
「あんたは狂っている」
「わたしにとっては、キミたちこそが狂っているんだよ。神の意向に歯向かうおろかな蛮族」
まるで話が通じなかった。博士が別の存在だとはっきり自覚する。
「どうして、世界を壊すんだ?」
「アカシックレコードを維持するためだよ。エンシェントドラゴンの天空世界のように、アカシックレコードは死者の魂を吸収することで維持されている。そして、アカシックレコードの維持には莫大な魂が必要となるんだ」
「悪趣味な神だな」
「すべては神の意志だよ、ユウト」
そう言うと、博士は宝玉を台座より奪い取り、天高く掲げた。
「さあ、執行者の復活だ」
そう言うと博士は、光に包まれた。




