四英雄
おれたちは、三日間を経て、海底神殿に到着した。
潜水艦の乗り心地は、正直に言って快適ではなかった。
永遠と続く真っ暗な海底。太陽が見えない生活は、ひとをここまで不安にさせるのかと、おれははじめて学習した。
海底神殿は、洞窟の中にあった。
広い洞窟を潜水艦で進んで、決められた一か所で浮上する。潜水艦が浮上をし続けると、不思議なことにひとつの陸地がおれたちの前に広がった。
「ここが……」
おれは、ついに目的地についたのだと口を開いた。
「そうだ。ここが、ロンギヌスの聖槍に貫かれて、眠っている神が封印された海底神殿だ。ここは、謎の魔力で、常に灯りがともっている」
おれたちの遺跡みたいな場所だった。
おれは、さくらの顔をのぞきこんだ。
この海底の旅がはじまって、あきらかにさくらの口数が少なくなっていた。心配性という性格もあるが、おれはそれがとても気がかりだった。
さくらは、おれの心配に気がついてか、少しだけ微笑んでくれた。
その微笑みが、かなり作りこまれたものだとおれは感じた。
「やっと、来たか。遅かったな、浦島」
三人のおとこたちがそこにはいた。
彼らが話しかけてきたせいで、さくらに話しかけるタイミングを失ってしまった。
「おお、みんな、来てくれたか。紹介しよう、三人とも。彼らがわたしの仲間たちだ」
桃太郎と呼ばれた男は、かなり無口な男だった。
鉄仮面をつけて、日本刀を構えるその姿は、前世でおれが見ていた桃太郎の絵とはかなり違っていた。
なんというか凄味がある。そんなたたずまいだった。
政という中国人は、学者のような姿だった。
年齢は、不老不死のため、おれよりもはるかに年上だろうに、かなり若く見える。三〇代くらいだろうか。理知的な姿と、鋭い眼光が何もかも見透かしているような印象をうける。
ドラキュラとよばれたヨーロッパ人は、豪快だった。
翼があるわけでも、鋭い牙があるわけでもなかったが、彼が一番伝説と似ている印象を受けた。
浦島さんとの再会をおおげさに喜び、豪快に笑う。
彼との接触で、おれたちも少しだけ気分が明るくなった。
「では、行こうか」
博士がそう言って、おれたち一行は出発した。
※
「ここが封印の間だ」
神殿の奥は、大きな扉があった。
浦島さんたち四人は、壁に手をつき小声で詠唱をはじめた。
すると、大きな扉はゆっくりと開いていった。




