祭り当日
ついに祭りの当日となった。
夕方までは準備をすることとなる。
今日のおれは、祭りの主役なので昼を食べたら、衣装に着替えたり練習したりでてんやわんやとなるはずだ。
「おはよう。ユウト」
「おはよう。さくら」
おれたちはいつものように挨拶をする。本当に普通の光景だった。
「今日はお祭り本番だね」
「うん」
短く返答すると、さくらは笑いだした。
「いつもと違うね。緊張しているの?」
さすがは、鋭い。
「うん」
「やっぱりね。お昼ご飯は、ユウトの好きな肉料理にするね」
彼女の心遣いが嬉しかった。なんだか、安心する。
「母さんと父さんは?」
「お祭りの準備をするからって、出かけていったよ」
「ふうーん」
ふたりで朝食を食べはじめる。
野菜スープとパンの質素な朝食だ。
さくらが作ってくれたようで、とても美味しかった。
スープの塩味と野菜のあまみが体にしみていく。
少しだけ緊張がとけていく。
この前、手をつないだ時に感じた彼女のぬくもりを思いだす。
恥ずかしさと幸福感が同居するへんな気持ちになってしまう。
少しだけ恥ずかしさが勝っていたので、彼女の顔を直視できなくなっていた。
「ねぇ、ユウト?」
彼女の声が、少しだけ湿っぽくなっていた。
「なに?」
「あのさ、よかったらなんだけど……」
彼女の声がふるえていた。
「儀式が終わったら、一緒にお祭りまわらない?」
決心がこもった声だった。