怪物
その怪物は、ケタケタと地上を見下ろして笑っていた。
あいつは、大きな角を二本生やしていて、筋骨隆々のたくましい体を持っていた。
翼はコウモリのような形をしていて、バサバサとうるさい。
皮膚は赤くただれている。
まるで、おとぎ話にでてくるような鬼のような姿だった。
「どうやら、うまくいったようだな」
怪物は、忌々しい声でそう言った。
その声は、禍々しく鈍いものだった。
「地上で生き残っているのは、おそらく千人くらいか」
鬼はどうやったのか、自信をもってそう言っていた。
あいつの数字が正しかったから、世界人口のほとんどが消滅したということになる。
「家畜たちは生かさず殺さずに限るな。ここまで減らせば、あと一万年は困らない」
まるで、エンシェントドラゴンのようなことを言っている。
人間を家畜呼ばわりするのを聞くと虫唾が走った。
「んん、なるほどそういうことか」
怪物は怪しく笑った。
「おもしろい。なるほど、こうなるのか」
そして、あいつは俺の方向を見て、こういうのだ。
「もといた世界に戻れ。親愛なる救世主よ」
あいつの腕から光が放たれた。
おれは、光に包まれた……。
※
「ここは?」
おれは、三度目をさました。今度は、両側に博士とさくらがいる。
目の前には、赤い大地が広がっていた。
どうやら、崩壊した未来世界に来てしまったらしい……。
そして、この世界が赤くただれているということは……。
「どうやら、ダメだったようだな。旅人たちよ」
目の前にはローブを着た老人がいた。
おれたちに世界を救うように依頼した張本人だった。




