日本
目の前にあったのは、前世で通学に使っていた地下鉄の駅だった。
空を見上げると、そこには隕石が見えた。
大気によって赤く焼かれた隕石は、少しずつ地上へと近づいてくる。
隕石は、だんだんと大きくなっていった。
周囲を見回す。
ほとんどのひとが、パニックとなっていた。
車を強奪して、遠くに逃げようとする男。
地面に倒れ込んで、泣き出す女。
ただ、呆然と空を見上げている老人。
みんな終末を過ごしていた。
そして、その終末におれたちもいたのだ。
おれとさくらは手をつないで逃げていた。
少しでも助かる確率がある地下へと逃げようとしていたはずだ……。
「ユウト、あれ」
さくらが、空を指さした。
この後、何が起きるか。忘れるはずもなかった。
「早く逃げるぞ」
もうひとりの俺がそう叫んでいる。
さくらも必死にうなづいた。
そして、その瞬間は訪れた……。
空がまばゆく輝いた。
隕石が、空中で爆発したのだ。
いくつもの破片と、炎が地上へと落下していく。
空を見上げていた老人が炎に包まれた。
車たちは、衝撃波で空へと舞い上がり消滅していく。
そして、炎はおれたちも包みこんでいった……。
※
衝撃と炎が過ぎ去った世界におれはひとりだけ残された……。
さきほどまでいた人々は、もう誰一人としてそこにはいなかった。
みんな消えてしまった。
おれたちがさきほどまでいた場所は、布一切れすら落ちていなかった。
ビルも駅も、遠くに見えた高校もみんな消えてしまった。
おれたちの前世に住んでいた世界は、もうどこにもなかった。
いったい、この観測をしているおれはなんだろうか。
そして、これは一体なんだろうか。
なにもない荒野を歩いて一時間は経過していた。
住んでいた街は、完全に消滅し、地上の風景は一変していた。
あったはずのものがなくなったということに、おれの絶望感は強まっていく。
おれは地面に崩れ落ちた。
涙すら出てこない。一度は体感した地獄なはずなのに、絶望感は強まっていた……。
「さくら……」
彼女にもう一度だけ会いたかった。
※
おれが絶望にうちひしがれていると、空から羽音が聞こえた。
この地獄で、初めて聞いた生物の音だった。
おれは、空を見上げた。
そこには、異形の怪物がいた。




