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時空へ
「ユウト、早くこっちへ」
おれは、さくらの声で意識を取り戻す。無意識で、ここまで来てしまったが、おれたちはもう泉の前に立っていた。
「さあ、早く泉の中へ」
博士は慌ててそう言っていた。
おれは、どこか他人事のようにふたりを見ていた。
最後に、おれはヌーさんと何を話しただろうか。よく、おぼえていなかった。
博士が、さきに泉に入った。姿が消える。
「ユウト」とさくらが叫んで、おれに手を伸ばしてくる。
隕石の時とは、立場が逆だな。
おれは、そんなことを考えた。
彼女の手を握った瞬間、再び大きな地震がおれたちを襲った。
目の前の大地には、地割れが生まれて、山は裂けて崩壊していく。
さくらの腕がおれを強く引き寄せた。水の中へと向かった。
※
「ここは?」
目がさめた時、博士もさくらもそこにはいなかった。
そして、そこは遺跡でも、未来世界の赤い大地でもなかった。
おれは今、転生する前に住んでいた日本にいた……。
新章突入です!




