終焉
おれは目を開ける。
目を開けると、そこにはさくらと博士がいた。
「よかった、気がついたのね。ユウト……」
さくらは安心したように一息ついた。
おれもさくらの顔を見ることができて安心した。
そして、思いだす。
今が戦闘中だったことに……。
「そうだっ。エンシェントドラゴンは?」
おれは、体を起こしてあたりを見回した。
体の節々が痛い。
「ダメだよ、ユウト。まだ、治療中なんだから」
さくらが慌てて、おれを止めた。
さきほど、刺された脇腹が熱い。
さくらが回復魔法をかけてくれているようだ。
おれは、再び体を横にする。
「いったい、どうなったんだ」
博士が玉座の方向をおもむろに指をさした。玉座は、吹き飛びバラバラになっていて、そこにはひとりの男が横たわっていた。
「あれは?」
まさかとは思いつつ、おれは確認する。
「そうだ。あれがエンシェントドラゴンの本当の姿だ」
おれは、目をこらしてよく観察した。
初老のやせた男がそこには横たわっていた。体の中心部だけが、不自然に穴が開いていた。
腕には、エンシェントドラゴンがつけていた宝玉がそのまま残っており、あいつが玉座の主であったことを証明していた。
「なにがあったんですか?」
おれは、博士に聞く。
博士は、顔を横に振った。
「わしらも、気絶していてよくわからんのだ。兵士のひとりが、辛うじて見ていた内容によれば、影のようなものが突然、あらわれてエンシェントドラゴンを襲ったらしい」
博士がなにを言っているのかわからなかった。
「影?」
「そう、陽炎のような黒い影だったそうだ。エンシェントドラゴンは、酷く狼狽し、なすすべもなく殺されたと証言していた」
「あのエンシェントドラゴンが、なすすべもなくですか……」
「そして、影はエンシェントドラゴンの体を吹き飛ばして、いつのまにか姿を消した。ドラゴンは、少しずつ人間になっていた。玉座の主の成れの果てが、あの姿ということだ」
「……」
「終わりました」
さくらがそう言った。どうやら治療が終わったらしい。
「ありがとう、さくら」
「うん」
「ヌーさんは?」
「いま、負傷者の救護をしているよ」
「無事なんだな、よかった」
その時、大きな地震がおれたちを襲った。
地面が割れるかのような激しい衝撃だった。




