圧倒
広間の中心から放たれた風圧で、ほとんどの者が壁に叩きつけられていた。
そして、玉座の主は、光り輝くドラゴンへと変わっていた。
「さてと、はじめるか」
あいつは、さも当然というかのようにそうつぶやき攻撃をはじめる。
あいつの翼から放たれた雷撃が、ひとりの兵士に直撃した。
以前、市場でみた粛清シーンを思いだす。兵士は、悲鳴を言う余裕もなく、なすすべなく蹂躙された。
もうそこには、焼けただれた物しかなかった。
王は、無慈悲に黒焦げを作っていった。
兵士たちは、その様子を呆然と見ていることしかできなかった。そして、次にそうなるのは自分だった。
狂乱状態の兵士たちは、扉から外に出ようと殺到するが、王の口から放たれた火球によって無情にもそれを阻止される。
一度は、跳ね飛ばされたヌーさんが、体制を立て直して再び特攻する。
あと、数歩で攻撃が直撃できるというところで、ヌーさんの体はドラゴンの尾によって再び突き飛ばされた。壁には、鈍い音が響く。
「そう焦るな。英雄であるおまえたちは、最後に料理してやる」
あいつは、この虐殺をまるで楽しむかのような口調だった。
おれ、博士、さくらも立ち上がる。
三人は、打ち合わせをしなくても、どう行動すればいいのか理解できていた。
おれが、全速力でエンシェントドラゴンに駆け寄る。
あいつは、おれに気がつくと、口から火球を投げつけた。しかし、これは計算通りだった。
行動は、カシウスと戦った時と同じ。博士が、おれの前に氷の壁を作り、火球を防ぐ。
火球が通じないと理解したあいつは、尻尾を使っておれを迎撃する。
だが、それにはさくらが、対応してくれた。
防御魔法を使い、尻尾の衝撃をものともしない状態を作り出してくれた。
これは、同時におれの攻撃力も上げてくれる。
おれは、腰から聖剣を抜く。刃はあいつの体の中心をとらえた。
聖剣は、変わらずの速さで、宙を舞った。
刃はあいつの尾と右腕を切り裂いた。
確かな手ごたえを感じる。黄金の腕が宙を泳いでいた。
「勝った」
おれは勝利を確信した。
それと同時に脇腹に鋭い激痛が走った。
あいつの左腕が、そこにはあった。
おれは、力なくうずくまる。
博士とさくらが、慌ててかけつけようとしてくれたが、風圧で吹き飛ばされた。
全滅……。
おれの頭には、その二文字が浮かんでいた……。




