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導き

「ククっ」

 おれのセリフを聞いて、玉座の主は笑みがこぼれはじめる。

 やつの、嘲笑が広間いっぱいに広がった。

 玉座は、窓からこぼれる陽の光に包まれている。


「なにが、おかしいんだ?」

 おれは、怒りをこめてそう言った。

「いや、すまない。きゅうにおかしくなってしまったのだ。まったく、最後の最後でカシウスはわしを上回ったのか……。もう、真実にたどり着いたのだろう?」

 玉座の主は、後光に包まれながらそう笑った。

 語調から余裕がよみとれる。

 

「ああ、すべて確認させてもらったよ。このデバイスからな」

 おれは、玉座に向かって、カシウスから手渡されたデバイスを高々に掲げた。

「前時代の遺物か。それが、まだ使えるとはな……」


 おれは、デバイスを操作して、ある動画を再生する。

 広間全体に、動画の音声が鳴り響いた。

 この動画の登場人物は、二人だけだ。

 玉座の主であるエンシェントドラゴンと、地上の主であったカシウス。

 まだ、カシウスが側近として、エンシェントドラゴンに仕えていた時代に記録された映像のようだ。


 ※


「エンシェントドラゴン様、なぜですか……」

「カシウスよ。余のことが信じられないのか?」

「しかし、地上世界にはまだ、無辜(むこ)の民が……」

「“むこ”の民だと? 笑わせるな、カシウス。やつらは、原罪を背負った悪しき者たちだ」

「だからといって、見殺しになさるつもりですか……」

「違うぞ。やつらは、余の命令に従わなかったのだ。天空へ移住しろという命令に……。やつらは、地上世界を食い物にして荒廃させただけではなく、全知全能である余に歯向かった。これだけで、万死に値する」

「……」


 ※


 おれは、次のデータを再生する。


 ※


「エンシェントドラゴン様、なぜ罪人を裁判もなく、裁くのですか?」

「そう、怒るな。カシウスよ」

「しかし、やり方があまりにも……」

「やつらは、余が禁止した地上世界の遺物を持ち込んだのだ。余に歯向かうだけで、死を免れることはできない」

「……」

「それに、お前も恩恵を受けているではないか……」

「……」


「死んだ人間の魂を利用することで、この世界は維持できているのだからな……」

 玉座の主は、動画でも不敵な笑みを浮かべていた。

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