連携
「ユウト、よく聞け」
おれが、博士が作り出した壁に驚いていると、博士はおれに語りかけてきた。
防壁は、衝撃を防いでその形を崩し始めている。
「あいつの攻撃方法は、かなり単純だ。衝撃波を放って、遠距離から自分に近づかれないようにしている」
「たしかに」
博士はまだ、数発のパターンしか知らないのに、カシウスの本質に気がついたようだ。
おれは、その状況に一種の恐怖すら感じていた。
博士が、“味方”でよかった。
「そして、あいつは魔導士のローブをつけている。あのタイプは、魔術軽減を付与されているものだ。だから、あいつには、魔術からの遠距離攻撃は効かない」
彼は続ける。
博士はいつになく、真剣な表情だった。
そして、冷静だった。
氷が出現して、部屋の気温が低下しているが、博士の表情はもっと冷たかった。
少しずつ崩れる音がする。
「裏を返せば……」
そういって、おれの目をじっと見た。
もう、説明しなくてもわかるだろう?
博士の目は、そう語っていた。
「あいつは、近距離の物理攻撃に弱い。だから、衝撃波でひとを近づけないようにしている」
「そうだ。氷壁が崩れたら、ユウトまっすぐあいつのもとに近づけ。わしが、サポートする」
おれたちは、うなづき意志を統一する。
氷が崩れ去り、再びあいつの姿が確認できた。
「くっ、小癪な……」
カシウスは、再び衝撃波を用意した。
おれは、かまわずあいつに向かって突撃した。
衝撃波が、おれに襲いかかった。
また、空気が凍てつく。
博士が、おれのまえに防御壁を作り出して、衝撃波を吸収する。
氷は、瞬く間に崩れていく。
おれは崩れた氷の真ん中を動いた。
「なに」
カシウスはここに来て、はじめて動揺した。
おれたちの狙いに気がついたからだ。
「うおおおおおおお」
おれは、さらに勢いをつける。
剣を力強く振るった。
カシウスは刃をかわすこともできずに、ただ茫然と立っていた。
そして、剣があいつの体を切り裂くまさにその瞬間……
笑ったのである……。




