突入
ゲートからは、兵士たちが次々と現れる。
一番最後に、エンシェントドラゴン様が登場した……。
彼らは、カシウスのアジトに目がけて進軍した。
異変に気がついたカシウスの軍勢も、応戦のために洞窟より姿をあらわした。
両軍はついに激突した。
魔法による爆発音が、赤い大地でこだましている。
ついに、戦争ははじまった。
「よし、いくぞ」
博士が、激突を確認して口を開いた。
今なら、アジトの防備がかなり手薄になっている。
空白地域が生まれて、最大のチャンスがここに誕生した。
「狙うは、大将の首だけだ。カシウスさえ倒してしまえば、すべてはこちらの勝利だ」
博士はそうまとめる。
勝利条件は、とてもシンプルだった。
だから、難しく考えるな。
おれは、必死にそういい聞かせる。
まだ、悩みがかき消せていなかった。
そんな、おれをサクラは心配そうに見つめている。
あいつだって、心配なはずなのに……。
おれ以上に、不安なはずじゃないのか……。
サクラに心配されているのが、とても情けなかった。
彼女は、おれに近づいてくる。
「ユウト……。大丈夫だよ」
「大丈夫?」ではなくて、「大丈夫だよ」だった。
その大丈夫が、サクラ自身ではなく、おれに向けられているというのは明らかだった。
おれは、軽く笑い顔をつくり、うなづいた。
「ありがとう」
そう答えるのが精一杯だった。
「うん」
サクラも笑顔でうなづいた。
今度こそは……。
おれは無言で決意する。
おれたちは、階段に向かった。
外の青空が、少しずつ遠くにいってしまう。
※
おれたちは、アジトに侵入した。
やはり、牢獄にはほとんど看守がおらず手薄だった。
ヌーさんの怪力で、牢を破壊した。
看守が数人、様子をみるために駆けつけてきたが、博士の睡眠魔法で片付けた。
おれたちは、居住エリアへと移動した。
居住エリアは、大パニック状態だった。
老若男女問わず、右往左往している。
「天空の軍隊が攻めてきたんだ」
「わたしたち殺されるの?」
「こんな洞窟で、いったいどこに逃げればいいんだ」
これはチャンスだった。
数少ない兵士も、パニックになった群衆への対応で忙殺されていて、おれたちに気がついていなかった。
「みんなこっちだ」
おれは、昨日カシウスが現れた方向へとみんなを誘導した。
おそらく、こっちにカシウスがいる部屋があるはずだった。
「おまえたち、何者だ。止まれ。このような時にカシウス様の玉座に、一体何の用だ?」
見つかってしまった。
どうやら、玉座を守っている守備隊のようだ。
一〇人ほどの男たちが、おれたちを取り囲む。
「あっ、隊長。こいつ、以前捕まった天空城のスパイですよ。いきなり、牢獄から脱獄したという」
すでに、顔バレまでしているようだ。
「なんだと。そういうことか」
男たちは臨戦態勢に入った。
どうやら、戦闘は避けられないようだ……。
 




