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牢獄にて

 ほんの数分間がとても長かった。

 あいつとの会話が終わって、どれくらい経過しただろうか。

 おれのなかでの、体感時間ではもう何日も経っているようにも思える。


 だが、現実ではほんの数分だろう。

 どうにかしなければいけない。

 焦りだけが募っていく。


 外はどうなっているだろうか。

 みんなは……。サクラはどうしているだろうか。

 最後に触れあった彼女の感覚を思いだす。


 どうしても、彼女に会いたかった。


「くそっ」

 おれは、ひとりしかいない牢獄で怨嗟の声をあげた。

 だれにも伝わらないぼやきになるはずだった。


「どうしたんだい? お若いの?」

 どこからか声が聞こえた。

 おれは、周囲を見回す。

 やはり、誰もいない。

 焦りのあまり幻聴でも聞いてしまったのだろうか?


「こっちですよ。隣です」

 声は、牢獄の壁から聞こえた。

 声の主は、隣の牢獄の囚人だった。


「どうしましたかね? ああ、大丈夫。この時間は、見張りも少ない。雑談でもして、時間を潰しましょう」

「雑談をしている時間がないんです。どうしても、仲間のもとにいかなくてはいけないんです」

 おれは、そう答えた。


「なるほど。仲間のもとですか……」

「はい」

「じゃあ、わたしが助けてあげます。どうぞこのカギを使いなさい」

 そういって声の主は、牢の壁の穴からカギが飛び出してきた。

「これは……」

「この鎖のカギですよ。なに、この牢獄には長いんでね」

「いいんですか?」

「気にするなよ。若者。そして、その部屋の左側にはいいものがありますから、見つけてみなさい」

 そう言うと、となりの牢獄から寝息が聞こえてきた。


 こんなに話がうまくいくわけがない。

 罠ではないか。

 疑いが大きくなる。


 しかし、ほかに方法はなかった。

 牢獄の主に、頼るしか道はないのだ。


 おれは意を決して、鎖をほどく。

 左壁を必死になって調べた。

 ひとつのブロックに違和感を感じる。

 おれは、そのブロックを強く押した……。


 ※


「となりの若者は、行ったか」

 わしは、すべてが計画通りに進んでいると確信した。

 笑みがこぼれる。


 カシウスもエンシェントドラゴンも、すべてうまく転がってくれた。

 ユウトも……。


 さあ、おもしろいショーを見せてくれよ。

 わしは、このさきにある見世物を期待し、姿を消した。


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