はじまりの終わり
世界はあたり一面真っ白になっていた。
そこには誰もいなかった。
体が焼き払われるような衝撃を受けて、おれはこの真っ白な世界にいる。
ここでは痛みもなにも感じなかった。ただ、なにもなかった。
「おーい、誰かいませんか。さくらっ」
返事はなかった。
この世界には、おれしかいないのかもしれない。
視界は真っ白な灰のようなものに包まれている。
おれは闇雲に走った。
ただ、走った。
だれもいないことを確認するために……。
どこまで行っても、そこは真っ白な世界だった。
おれは諦めて、しゃがみ込む。
「ここは、どこなんだ?」
絶望が含まれた言葉だった。
もう一度だけ、あいつに会いたかった。
それを強く願う。
おれを光が包みこんだ。
さきほどの暴力的な光ではなく、それはあたたかい慈愛が含まれた光だった。
「ねえ、ユウト、いつまで寝てるの?」
聞きたかった声が、おれに問いかけてきた。
おれは目を開ける。見知らぬ天井が広がっている。そこには、会いたかったひとが微笑んでいた。
「おはよう。ずいぶん寝坊助だね」
彼女はいつものように、優しい笑顔でそこにいた。いてくれた。
「さくら……」
「どうしたの? あらたまって??」
おれは、なにも考えずに彼女に抱きついていた。ただ、彼女の顔を見ることができて安心したのだった……。
「ちょっと、ユウト。どうしたのよ」
「そういえば、隕石は?」
一呼吸おくと、おれは思い立ったようにそう聞いた。
「そんな大きな声でどうしたの。隕石ってなに?」
彼女は本当になにも知らないような様子でそう言っていた。
そして、おれはもうひとつの奇妙な点に気がつく。
「おまえ、その服……。制服はどうしたんだ?」
さくらは、ヨーロッパの民族衣装のような地味な服を着ている。
「服って、いつものでしょ。今日のユウトおかしいよ。大丈夫? 疲れてるんじゃない?」
さくらは本当に心配な顔になってそう聞いてきた。嘘はついている様子ではない。
階段を上がってくる音が聞こえる。
ドアが急に開いた。
「ユウトどうしたの、大きな声で……。さくらちゃんとなにかあった?」
ドアの前には見知らぬ女性が立っていた。
「あんた、だれだよ」
この日からおれの日常は、非日常へと変わってしまった。