洞窟
洞窟までは、歩いて三日程かかった。
危険な動物や魔物も存在しない延々と続く荒野。
砂漠と同じで、日中は殺人的な暑さで、夜は凍えるような寒さだった。
この極限な世界で、生きる人間を見つけることはできなかった。
おれたちは、道中ではほとんどしゃべることはなかった。
なにをしゃべればいいのかわからかった。
この絶望的な大地を見ているだけで、言葉は消えていく。
ずっと重苦しい雰囲気がおれたちを包まれていた。
「あそこです。やつらのアジトの入り口は……」
おれたちは、目的の場所にたどり着いた。
おれたちは、エンシェントドラゴン様からいただいた望遠鏡を用いて、遠方の崖よりアジトを偵察する。
地表にはなにもない場所がほとんどだった。だから、このアジトは目立っていた。
その状況が、逆に禍々しさを際立たせていた。
屈強な兵士が、入り口を監視している。
兵士はこの酷暑のなか、ピクリとも動かず、銀色の鎧を身に着けていた。
その様子から、やつらがそうとう戦闘に慣れていることがうかがえた。
「どうやって潜入する?」
おれは博士に問いかけた。
兵士はあいつひとりではない。
表で騒動を起こしたら、ただちに増援が駆けつけてくるだろう。
いくらこちらに、伝説の聖剣や怪力を誇るルーさん、大魔導士の博士がいても多勢を相手にするのは厳しい。
勝てたとしても、かしらのもとに行きつくまでに消耗してしまう。
「ふむ。まず、わしの魔法で見張りを眠らせる。そして、やつが着ている鎧を脱がせて、誰かがそれを身に着けて密入し、仲間が潜入できるように工作するのがいいのではないかな」
工作員に多大なリスクを背負わせる作戦だ。
しかし、そうするしかないだろう。
「誰が、潜入します?」
サクラがおそるおそる口を開いた。
「おれが行きます」
力強く俺が言った。
「ユウト……」
「頼んだぞ」
「じゃあ、行こうか」
博士がそう言って、おれたちはうなづいた。
敵の本拠地へとおれは突入する。
サクラが、おれのことを心配そうに見つめていた。
 




