地上世界
ゲートを抜けるとそこは、荒れ果てた荒野だった。
おれたちは、周囲を見回した。
博士とヌーさんは、呆然と立ち尽くしている。
サクラは、おれの手をさらに強く握りしめた。
おれも彼女の手を強く握りしめた。
そうしなければ、自分までここからいなくなってしまうような気分だった。
それほどまでに、この世界はなにもなかった。
緑はほとんど消え失せて、赤く焼かれた大地だけがそこに広がっている。
動物もほとんど見つけることはできなかった。
小さなトカゲのような動物が砂をごそごそと動いているくらいだ。
おれたちは、この惨状に息をのむ。
まさに地上は、死に絶えた大地だった。
天上世界で、動物に襲われるという危険なことも起きていた。
しかし、ここでは、上の世界のそれは、まだ生やさしい世界の出来事だったとわかる。
そもそも、この世界には生物の存在がほとんどみることができないのだ。
ローブの男が住んでいたあのおぞましい世界を連想させる死の大地だ。
「ここにずっといても無意味です。さあ、行きましょう。みなさん、こちらです」
ヌーさんが、おれたちを案内してくれる。
カシウスの居場所は、エンシェントドラゴン様から聞いている。
「まさか、ここまでとは……」
博士が、落胆の声を漏らした。
この世界が、おれたちの住んでいる世界の行き着く姿だと思うと、そのような気分になるのもわかる。
「カシウスたちは、どうやってこの死の世界で生きているんだ」
おれは、思わず声を出してしまう。
「わかりません。彼らはここから東にある洞窟を根城にしているようです。そして、そこには結界や罠が張りめぐらされている」
「カシウスたちの目的はいったい何なんですか?」
サクラは口を開いた。
「おそらくは……“神殺し”」
「「「神殺し?」」」
「エンシェントドラゴン様をなんらかの手段で抹殺し、天空世界を地上へと落下させる。そして、天空世界の富を自らの手で独占しようとしているのではないでしょうか?」
人類の希望である天空世界が墜落し、人類が死に絶える未来へと繋がってしまう。
こんな因果は、変えなくてはいけない。
おれは、決心を強くした。
おれたちは、歩き続けた。
神殺しが住まう洞窟を目指して……。
 




