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サクラ
結局、昨日はほとんど眠れなかった。
サクラとは、あの後すぐに別れて、おれたちはそれぞれの部屋に入った。
すでにヌーさんは眠っていた。
おれは、音をたてないように布団にもぐる。
キスの後、おれたちはほとんどしゃべることができなかった。
胸はどんどん高鳴るし、その一方でなにを話せばいいのかわからなかった。
サクラは別れ際に「ありがとう」と小声でつぶやいた。
おれは、どうしてお礼なんだと思いながら「こちらこそ」と返した。
明日は、いよいよこの世界の根幹に潜む問題との対峙だ。
今後、どうなるかわからない。
サクラは、もとの世界に戻りたそうだった。
おれは、いったいどうしたいのか。
自分のことになるととたんにわからなくなる。
そんな自分が情けなかった。
そして、おれはひとつだけ思うのだ。
「今後もずっと、サクラと一緒にいられるように」、と……。




