天空城
そして、おれたちは、三日間ほど歩き続けた。
この天空の大地は、とても自然豊かな場所だった。
緑は多く、川は清らかで、魚や動物が豊かに暮らしている。凶暴な野生生物もいるが、それは前回の砂漠世界で遭遇した魔物に比べたら、禍々しさはなかった。ヌーさんが、ほとんどひとりで追い払ってくれた。
北へ北へと向かうと、少しずつ山脈地帯になっていく。
「さくら、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
険しい山道でも、さくらは俺たちに遅れずについてきた。たぶん、無理はしているだろう。前世から、あんまり運動は得意な方ではなかった。こっちでも、魔法の勉強ばかりで、剣など実技はからっきしだったはずだ。
ヌーもだいたいは把握しているらしく、休憩の頻度を増やして対応してくれた。
さくらは、無理をする性格だ。
「ごめんね、休憩増やしてもらっていて」
さくらはそう謝罪した。
「あんまり、無理するなよ。休憩のたびに、回復魔法使ってごまかしてるだろう?」
「ばれてた?」
そう言って、彼女は笑ってごまかす。
「何年、付き合っていると思っているんだよ」
「そっか、ありがとう。見てくれて、心配してくれて……」
彼女は、少しだけ顔を赤く染めて、さきほどとは違う笑顔になっていた。
さくらとは、向こうで一〇年。こっちで十八年の付き合いだ。気がつかないわけがなかった。
「あんまり、無理するなよ」
「うん」
回復魔法を足に当てている彼女は、とても儚げで綺麗だった。
山からは、大地の大自然が広がっていた。
※
「着きました。ここが、エンシェントドラゴン様が住まう天空城です。ひとまず、城下町の宿で、疲れを取り、明日、面会させていただきましょう」
ヌーさんは、そう言いながら、テキパキと行きつけの宿に案内してくれた。
この城下町は、とても賑やかな街だった。ひとや物にあふれている。
その奥に見える天空城は、荘厳な城壁に守られている。
「あの大きな建物が、玉座のあるところですか?」
おれは、ヌーさんに聞いた。
「そうです。あれが、玉座の間です。たぶん、あそこに行ったら、驚きますよ」
そうヌーさんは笑うのだった。
「それは、楽しみです」
彼とは、この旅でかなり打ち解けた。
「食事は、屋台街に行きましょう。ここの屋台は安くて、うまいのです」
おれたちは、誘いにのって、夜の街に繰り出した。




