大地
宴でおれたちはもてなされている。
珍しい料理が並んでいた。野菜と鶏肉を中心としたメニューだった。
鳥と野菜の出汁が出たスープに麺が入ったラーメンのような料理が、特に美味しかった。
博士は、村長さんたちと酒を酌み交わしている。
「この大地はどうやって浮いてるのか? 旅人さんたちはそれをいつも疑問に思いますね。こちらの大地は、天空を支配するエンシェントドラゴン様の魔力によって浮いているのです」
村長さんは、上機嫌で語り始めた。
「かつてこの大地は、空の下、地面にありました。しかし、愚かな地上人たちは、エンシェントドラゴン様の加護を受けて、魔術が発展していたこの大地に嫉妬したのです。そして、暴力によって、この大地を支配しようとしました」
「それでどうなったのですか?」
博士とおれたちは相槌を打つ。
「エンシェントドラゴン様は、怒り狂いこの大地を、魔術により空へと移動させたのです。そして、悪のこころを持つ地上人をすべて粛清しました」
かなり血なまぐさい話になってしまった。
「いったい、どうやって?」
「悪なるこころを持つ者を、落雷によって処刑したと聞きます」
「……」
「そして、この大地は、我ら天空人と地上人で≪善なるこころを持つ者≫のみが住まうことを許されたユートピアとなったのです」
「では、わたしたちが、ここに来ることができたのは?」
「はい、エンシェントドラゴン様に選ばれて、導かれたからでしょう」
遺跡に選ばれたおれたちは、今度は“エンシェントドラゴン”様にも選ばれたのか。
ずいぶんと話が大きくなってしまっている。
「選ばれたわたしたちは、一体どうすればいいのでしょうか?」
「そうですか。あなたがたは、まだ“天命”を知らないのですね。そうであれば、一度、エンシェントドラゴン様にお会いなさるのがいいでしょう」
「会えるのですか!?」
「もちろんです。エンシェントドラゴン様は、われわれに閉ざす門は持っていないと仰せですから」
「どうすれば、お会いできるのでしょうか」
「ここから、北に向かった先にあります天空城に行きなされ。わたしが書状を書きますので、すぐにお会いできるでしょう」
「なにから、なにまで本当にありがとうございます」
おれたちは礼を言った。村長さんは、人のよさそうな顔で笑った。
「なにを遠慮しているんですか。わたしたちは言わば、同士。甘えてください」
こうしておれたちの目的地は、決定した。目指すは北の天空城。




