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未来

「時の泉ですか?」

 おれは老人の言葉をそのまま返す。


「そう、時の泉じゃ。お主らは選べれたのじゃな。時間という因果に」

 ちんぷんかんぷんだ。


「選ばれたとは?」

「そのままの意味だ。お主らは時間を移動できる権利を得たのだ。時の泉を使うことで、お主らは時間の跳躍が可能となった」

「どうやったら、もとの世界にもどれるのでしょうか?」

「その時間に必要なことをすればきっと戻れる」

「じゃあ、この世界でおれたちがすべきこととはなんですか?」

「それはたぶん、わしの話を聞くことだな」

「あなたの話?」

「そう、わしの話じゃ?」

 そういうと、老人は水を飲んだ。おれたち三人は途方もない話に、困惑していた。


「まずは、世界がどうしてこうなったのかを話そう。たぶん、きみたちは過去から来ているのだろうから」

 老人は目を閉じて、淡々と話を始めた。

「かつて、この世界は緑豊かな大地が広がっていた。人々はその豊かな大地で生き、そして、死んでいった」


「ある時、人間たちは気がついたのだ。自分たちが魔力を持っていることに。そして、その魔力をもってすれば、生活は豊かになり、富はどんどん増えていった。しかし、ここにひとつの落とし穴があったのだ」

「落とし穴とは?」


「人間の闘争本能だ。魔法大国同士が、ひとつ大きな戦争を起こすと、その被害は甚大なものとなった。人々は、何度も魔力と戦争を規制しようとしたのだ。しかし、それは叶わなかった……」

「……」

「ついに、最終戦争が起きたのだ。その最中、ある大国は、禁じられていた“究極魔法”を発動させ、世界からすべてが失われた」

「“究極魔法”とはなんですか?」

「それはよくわかっておらん。わしが生まれる前の出来事じゃからな。だが、聞くところによると、一発で大陸の九十パーセントが失われ、無人の荒野ができあがったらしい」

「……」

「運よく戦災を逃れた者たちも、環境の大変化により引き起こされた飢餓が襲いかかった。そんな時、わしは生まれたのじゃ」


「あなたの家族は?」

「小さいころに死んでしまった。最後に誰かと会ったのは、もう五百年も前のことだ。わたしは、戦災後に生まれたせいかこの環境に適合することができたようでな。水だけ飲めば、このように生きていけるようなのじゃ。もう、わし以外の人間が生きている確率は絶望的だろう。わしは、この星の最後の住人となってしまったわけじゃ。まるで、この星の最期を看取る観測者という役割を果たすという呪いにでも取りつかれたようにな」

 まるで、妖怪だ。


「そこで、お主たちにお願いがある」

「なんですか?」

「歴史を変えて欲しい。こんな絶望で終わる歴史をどうか変えて欲しいのじゃ」

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