日常
朝が目がさめる。いつもの日常のはじまりだ。
見知った天井を見つめながら、またおれはひとつぼやくのだ。
「ああ、つまらない一日がはじまってしまうのか」
朝食は変わらず、目玉焼きとトースト。
手早く済ませて、学校へと向かう。
高校生活ももう三年だ。
人間関係もできあがって、劇的な変化なんておきるわけがない。
玄関から外に出る。朝の陽ざしが忌々しい。
いつもの駅で、幼馴染のさくらと出会った。
「おはよう。あいかわらず、ニヒルな感じだね」
「おはよう。いつものことだから気にしないでくれ」
これもいつもの会話だ。
小学校から今までずっと学校が同じだった。
だから、何年もこの会話を繰り返している。
「もうすぐ、受験だね。ユウトはどうするの?」
これぞ高校三年生という王道の質問だった。
「適当に地元の大学を受けようと思うよ。学費が安い国立か公立」
「わたしと一緒だね。また、同じ大学だったらいいなあ」
大学でも代わり映えのしない生活が続いていく。
おれの人生は、たぶんずっとこの調子なんだろう。あきらめにも似た気分がおれを包む。
一限も終わり、二限の日本史の時間になった。
どうして、古墳とか大仏の話がおもしろいのだろうか。
おれは、うたたねをしながら、話半分で授業を聞いている。
「じゃあ、番号六番。大化の改新は何年に起きたか言ってみろ」
「ねぇ、ユウト。起きて。大化の改新の年号だってよ」
後ろの席のさくらが起こしてくれた。
せっかく、いい夢をみていたのに。日本史の斎藤め。絶対に狙い撃ちしただろう。
「六百四十五年です」
おれはそう答えた。
こんなもん教科書にのってるんだから、わざわざ聞かなくてもいいだろうに……。
正解を答えて、さあもうひと眠り。
そう思っていた矢先、<ドロン、ドロン>というおどろおどろしいアラームが鳴り響いた。
携帯の緊急事態速報だった。
教室中に悲鳴や動揺が広がっていく。みんなが慌てて携帯を取り出していた。
「なんだ、ミサイルか」
「地震の予報か」
おれも慌てて警報文を読み上げる。
「政府からの発表。
隕石落下注意報。隕石落下注意報。巨大隕石の落下が予想されます。国民の皆様は、頑丈な建物等に避難してください。続報が入り次第、お知らせします」