表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/93

動き出した時間

 壁は開き終えた。

 そこには、小さな小部屋が存在していた。

 部屋の真ん中には、不思議な光を放つ「泉」がひとつ。

 壁には、壁画が一面に描かれていた。

 不思議な雰囲気を持つ部屋だった。

 神秘的で、どこか懐かしく、そして安心できる空気を持っていた。


 それは、三人とも同じだったようだ。

「まるで、お母さんに抱かれているみたい」

 さくらがそう言った。

 おれたちも同感だった。


「これはなんだ」

 博士はぽつりとぼやくように壁画を指さして言った。

 そこには驚きと興奮が同居していた。

 おれたちにも、その興奮が伝わってくる。

 おれは壁画へと近づく。


 壁画には猿が立ちあがり、少しずつ文明を築いていく様子が描かれている。最後の絵には、天から赤い物体が落ちてくる様子が描かれていた。おれ、いや、おれたちはその様子を現実にみたことがあった。あの隕石の衝突。おれたちが転生前にみた最後の光景と重なる。あの事件で、文明は崩壊してしまったのだろうか。壁画にそのあとの歴史は描かれていなかった。


 ここは異世界ではなく、未来なのかもしれない。

 さくらとおれは、同じ考えだった。

 おれたちがいた前世は隕石によって崩壊し、転生していまを生きている。


「人類の歴史ですかね。おれたちよりも前にあった文明の歴史」

 おれは動揺する自分を抑えてそう言った。

「そうかもしれんな。これは大発見だ」

 博士は大喜びしていた。まさに狂喜乱舞。壁画に飛びつくような勢いだった。


 しかし、おれはそんな壁画のことはどうでもよかった。部屋の中央に位置する「泉」に導かれる。

 誰かに呼ばれているような気がした。

 そこにいかなくてはいけないような気がした。

「どうしたの、ユウト?」

 さくらはおれの手をとりそう話しかけてきた。

 おれは、その言葉に答えずに、そのまま「泉」に飲み込まれた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ