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今の世

 目がさめるとそこはいつもの天井だった。

 昨日はいろんなことが起こりすぎた。

 祭りの儀式の主役を務めて、遺跡の封印が解けてしまった。

 そのあと、宴がはじまって……。さくらがおれと同じ転生者だとわかって……。昨日のことを思いだす。


 ※


 さくらとふたりで、いろんな話をした。

 前世のこと。

 今世のこと。

 学校の同級生のこと。

 小さい時の思い出。

 いくつものエピソードがこの世界で起きたのか、前の世界で起きたのか、あやふやになってしまって、ふたりで笑った。

 それがとても心地よかった。


 そのエピソードが、前世のものでも今のものでもどちらでもよかった。

 おれたちが、どちらの世界でも一緒だったという証拠なのだから……。


「結局、あの隕石の落下で、わたしたち死んじゃったのかな?」

 彼女は泣き出しそうな顔でそう言っていた。

「……」

 たぶん、そうだと思う。あんな大きなものが落ちたんだ。おれたちが住んでいた街は、あとかたもなく吹き飛んでしまったと思う。おれの家族も、さくらの家族も、同級生たちも、みんな……。


「……」

「……」

 思っていたことは一緒だったと思う。結論はわかっていた。でも、口にはだしたくなかった。


「わたし、いまの日常も大好きなんだ」

「うん」

「だから、明日、遺跡のなかに入ってしまうと、この日常がね。前の世界みたいに壊れてしまう気がするんだ。もう、わたしにはユウトしかいないのに。ユウトが遠くにいっちゃいそうで」

「だいじょうぶ。おれはずっと隣にいるよ」

 そう言って、おれはさくらの手を握った。

 彼女の手は、あの時のようにとても温かかった。

 ふたりで隕石から逃げようとしたあの時のように


 ※


 思いだしただけで、恥ずかしくなってしまう記憶だ。いつの間にかベットをゴロゴロしていた。


「わたしも、一緒に遺跡の中に行ってもいい?」

 最後にさくらはそう尋ねてきた。

 おれはうなづき、彼女の希望にこたえた。


「おはよう」

「おはよう」

 おれたちは何事もなかったように、いつもの朝を迎える。もうすぐ、ハル博士が来て、一緒に遺跡に向かうことになっていた。


 いつものように食事を済ませる。

 すべてが変わる日の朝は、いつもと同じ時間が流れていた。


 この日常がおれたちのもとに再びもどることはないという実感はまだなかった……。

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