封印
おれは地面に突き刺さった宝剣に手を伸ばす、
手を伸ばす、手を伸ばす。
いつもなら、おとな数人で力を合わせても、びくともしない宝剣があっさりと宙を舞う。
まるで、鳥の羽のように軽やかな感触だった。
観客たちも、あっけにとられて、みんな無言だった。
あまりにも簡単すぎて、拍子抜けする感じだ。
おれは、何が起きたのかもわからないくらいだった。
そして、宝剣はおれの目の前に全容をあらわす。
いままで、野ざらしにされて、土に埋もれていたとは思えないほど、美しい剣だった。
おれが、剣をじっくり見た瞬間、世界は光に包まれた。
「なんだ、この光は……」
「昔の祭りではこんなことは起きなかったぞ」
「おい、どうしたんだ」
まばゆい光でなにも見えない。
声だけが聞こえてくる。村のみんなもパニックになっているようだ。
おれは不思議となにも考えず、他人事のようにこの光を見ていた。
光はさらに激しさを増していく。
「よく来たな。選ばれし者よ」
なぞの声がおれの頭に直接、話しかけてくる。
「おれが……。選ばれし者?」
「そうだ、汝は選ばれたのだ」
「だれに?」
「この世界のすべてに」
その言葉を聞いた後に、世界を包んでいた光は収束した。
みんながきょろきょろしている。なにがあったんだとばかりに……。
「みんなこっちに来てくれ」
ハル博士が珍しく大声で叫んでいた。
とても興奮している様子だ。
みんながそちらへと向かう。
博士は遺跡の前に立っていた。
この遺跡はどこにも入り口がない。
開かずの遺跡と呼ばれている。
しかし、その遺跡には本来ないはずのものがあった。
そこには昨日まで、いや、さきほどまでなかったものが存在していた。
「地下へとつながる“隠し階段”だ」
博士はいつもの冷静さをかなぐり捨てて、叫んでいた。
「ついにこの遺跡の調査ができるぞ」
みんなも訳が分からないまま、興奮している。
周囲からは「おおー」という驚きの声が漏れている。
「しかし、博士、今日はもう夜です。それに、祭りの続きもあります。詳しい探検は明日にしてはどうですかな」
村長さんが、落ち着いた様子でそう助言する。
興奮した様子のみんなも、村長さんの言葉で落ち着きを取り戻そうとしていた。
「それもそうですな。では、遺跡の封印が解かれた祝いということで、わしも大いに祭りを楽しみますぞ」
「飲むぞー」という大声とともに、宴会会場にみんなが殺到する。
おれは、さくらの姿を探した。
彼女は、とても寂しそうな顔で遺跡の前にたたずんでいいた……。
 




