ふうっとこころのかたすみに
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「んぅ……」
カーテンのすき間から差し込んできたまぶしいものによって、わたしは目を覚ました。
「……寒い」
上半身を起こして気づいた。今日もまた、わたしは裸だということに。わたしは床にビリビリになった自分の下着を見つけると、ベッドの上に立ち上がった……瞬間。
「あっ……」
足を「あるもの」に引っ掛けてしまい、わたしは大きな音を立ててベッドから床へと転げ落ちてしまった。
「…………」
「楓ちゃん……起きてたの?」
わたしが足を引っ掛けてしまった「あるもの」…………墨子が起きて、床に大の字になって横たわっているわたしに声をかけてきた。
「……うん。起こさないように、しようとしたんだけど」
「ううん。ちょうどいい時間だし。起きよっか」
「……ん」
◆
「ふーふー。……はい楓ちゃん、あーん」
「…………あーん」
「……おいしい? お餅……ちゃんと煮えてたかな……?」
「……大丈夫、おいしい」
「そっか。……ねえ、楓ちゃんは初夢、見た?」
「…………見てない。墨子は?」
「わたしも」
「……そう」
「……でも、縁起がいいのは、もうわかってるから」
「……?」
「……だって去年は、やっと『本当の』お付き合いが始められた年なんだもん。きっと今年も、いい年になるよ」
「……そう」
今の墨子は、本当に幸せそうな顔をしている。
……いいのだろうか。わたしが、この姿を見ていても。そんな疑問が、脳裏に浮かび上がる。
……いや。
せっかく墨子が笑ってくれているのに、わたしがこんなことばかり考えているのも、良くない。
だからわたしは、この気持ちを一度心の片隅にしまいこんで…………。
「……わたしも、そう思う」
不器用ながらも、口角を上げてみせた。
わたしは今、墨子に「本当の」笑顔を届けられているだろうか。