2話 『魔法』を『ダウンロード』して、傷ついた人たちを助ける。
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騎士の男が女の子を抱き上げると馬車の中に運ぶ。
ついて行こうとしたところで、目の前に文字が浮かんだ。
『…『魔法』の『ダウンロード』が完了しました』
お。新たにダウンロードが完了した。…確かに、頭の中に『魔法』が『知識』として思い浮かぶ。
『魔法』の種類って意外と多い。呪文自体もそれこそ数多くあるが種類別にすると…『回復系魔法』に『8属性魔法』と『生活魔法』、『召喚魔法』と『付与魔法』に『死霊魔法』。そして、『古代魔法』と『神王魔法』と『暗黒魔法』の計9種類だ。
これで、どうして『ダウンロード』が10分で済んだのだろう?
まあ、今はそれどころではない。俺も急ぎ馬車に乗り込んだ。
「アラン…。リーリアス姫巫女様は?うぅ…」
「気を失っておられるだけだ。それよりもジャニス。君の方が無事ではないようだな?」
「肩を斬られたわ…。後は…床に叩きつけられて打撲ってところかしら?それで、その少年は?」
「山賊退治に加勢してくれた方だ。見た目と違いとても強いぞ」
「そう…」
ジャニスという女性は帽子に眼鏡、ダークブルーの髪に左目の下のホクロ。凛々しい顔立ちにローブを着ているのに分かるほどのスタイルの良さが女性ホルモンをプンプンさせている。
性に少なからず興味のあるお年頃の俺としてはちょっとばかり刺激の強いお姉さまと言う感じだ。
「リュウイチ・フジムラと言います。まずはケガの手当てをしましょう…『治癒呪文』!」
ジャニスと呼ばれた女性に向けて手を翳し、回復系魔法を使う。
掌から光が波のように降り注ぎジャニスの身体を覆う。すると肩のキズがみるみるうちに塞がっていった。
しかし、魔法ってこういうモノなんだ。知識であるのと実際使うのとでこうも驚きがあるとは…。
「ありがとう…。あなた、魔法使いなの?」
「えっと…『魔法』も使えます」
「??…とにかく、ありがとうございましたわ、リューイチ様」
「いえ。大したことはしていませんよ。それよりも、他の怪我人も見てきますね」
声もまさにお姉さまっぽい大人っぽさと可愛らしさを兼ね備えたような声で、容姿とマッチングしすぎて童貞少年にはちょっと刺激が強すぎる。このままここにいると変な気分になりそうなので俺は理由を作り慌てて馬車から下りた。
「どうなされました?」
「怪我人を治療しようと思いまして…」
「それはありがたい。早速診ていただけますかな?」
「分かりました」
2人の騎士のところに行き、馬車の中にいる怪我人を見るとかなりの数の騎士たちがいた。
1人1人見ていると時間がかかりそうだな。じゃあ…。
「全体に回復させた方が早いな。…『近距離範囲全体治癒呪文』!」
全体に広がる光の波。馬車の中の騎士たちの顔に生気が戻っていく。
次々に騎士たちが立ち上がる。
「傷が…痛みがなくなったぞ!」
「折れていた腕が…腕が…動くぞ」
「刺された傷が塞がった!助かったぞ!」
「俺もだ」
「生きている…生きているぞ!イリーナに会える!」
喜びに沸き、抱き合う騎士たち。
俺が助けた命…。でも、いまいち実感が湧かない。まあ、『魔法』と言っても自分が努力して得たモノじゃない。『女神』から貰った『恩恵』によるモノだ。
「ありがとう!ありがとう!」
「え?あ…はい。どうも…」
「どうしたんだい?君のおかげでみんなが助かったと言うのに…?」
「その…言い難いんですが…俺、記憶が無くて……」
「記憶が無い?…ふむ。しかし、それでどうして?」
「今…俺が使った魔法は…使えることを覚えていたから使っただけで、それが本当に俺が得たモノなのか実感が無くて…」
「なるほど…。ですが、『使える』ことと『使う』は違うのですよ。君は『使える』から『使った』と言いました。でも…言い換えれば『使えて』も『使わない』ことを選ぶこともできたでしょう?だが、君はそうしなかった。君は『傷ついた者』を『救う』ことを『選んだ』のです。大事なのは、君が持つ力をどう使うかなのです。君は君自身の持つ力を惜しげもなく他者のために使った。自分のためだけに使えたモノをね。それはとても優しく温かな心を君が持っていると言うこと。たとえ、君が回復魔法が使えなかったとしても、傷ついた者たちを救おうとできることをしたでしょう。その『思い』こそが大切なのです。そして我々はそんな君の思いに感謝したのです」
回復したことは嬉しいに決まっている。だが、それ以上に何の見返りを求めずに人を救ったと言うことが何より嬉しかったのだ。
それが、この世界のある意味『常識』でもあったからだ。この世界では『無償』で何かすると言うことはない。
特に『回復系魔法』の使い手は貴重で、使えると言うだけで王宮のお抱えになれるほどなのだ。
この世界の常識を知らない龍壱には自分のとった行動が正しいとか間違いとかいう認識はなく、当たり前のことをしたにすぎなかったのだが。
それでも、自分のとった行動が褒められたことは嬉しく感じられたのも確かだった。
「…それじゃあ、そろそろ行くか…」
馬車を下りてまた道を歩こうとすると、アランが駆けよってきた。
「リューイチ殿、お待ちください。リーリアス姫巫女様がお目覚めになられまして、ぜひ、お会いになりたいと…」
「…分かりました」
正直、姫巫女様に会うことに抵抗はない。ないが…ジャニスもいるだろうことが懸念材料だった。
「此度は皆を救っていただき心より感謝します」
「いえ…当然のことをしたまでです」
「とても謙虚なお方ですね。もし、よろしければ我が国…『ラビオニア』に来ていただけませんか?」
「えっと…」
「姫巫女様。部下から報告を受けたのですが…リューイチ殿は記憶を失っておられるらしいのです」
「なんと…お可哀想に」
「いえ…幸い名前と自分の持っている能力については覚えていたので…ただ、この世界の常識や習慣など基本的なことがスッポリ抜けている感じなんですよね」
「それでしたら、余計に我が国に来ていただきましょう。ゆっくりと生活をしながらこの世界の常識について学ばれてはいかがでしょうか?」
「良いんですか?」
「もちろんですよ。それに、国に着くまで護衛として守っていただきたいのですが…」
「俺なんかで良かったら…」
「では、お願いしますね」
馬車に揺られながら『ラビオニア』を目指す。
ラビオニアへは1時間ほどで着くらしい。そこで俺は『世界常識』を『ダウンロード』することにした。
時間で30分。ラビオニアに着く前にはこの世界の常識を全て知ることができる。
これで今日ダウンロード機能が使えるのはあと2回か…。
ジャニスさんの淹れてくれたお茶を飲みながらの旅はゆったりと進み何事もなく『ラビオニア』入りすることになった。
「おおっ。お城だ!本物のお城だ!」
「あれが我が国『ラビオニア』だ。そして、あれが我がラビオニア城だ」
「デッカイなぁ…。綺麗だなぁ…」
白い壁で作られたお城はまさに純白の城と言っても過言ではなかった。
国の前には高い壁が見えるがお城はそれを軽々越すほど高くそびえ立っているのだ。
この国がどれほど裕福かが分かるなぁー…。
『世界常識』を『ダウンロード』して得た知識では、この『ラビオニア』は亜人種の『フォースラビット族』が造り上げた国であり、このビーストりアム大陸の南半球は亜人族が治める国が多く存在している。
その1つが『ラビオニア』なのだ。ラビオニアは丁度人族と亜人族の国境の1番近いところにある国だ。
昔は人族・亜人族・魔族の間で戦争もあったらしいが今では協定を結び平和が続いている。そのため、ラビオニアは色んな種族が混在する国として大きく発展した。
規模としては東京都がスッポリ入るほどの大きさがあり、琵琶湖の5倍はある湖…『フロリオント湖』が水源となっているので、水にも苦労しないと言うわけだ。
近くには『アーバントの大森林』もあるので森の恵みも豊富だ。
「さあ、参りましょう。我が国『ラビオニア』へ」
馬車は門の奥へと進んでいく。
こうして龍壱は野宿しなくて済んだわけである。
『魔法』を『ダウンロード』した際の龍壱のステータスを記載します。
―リュウイチ フジムラ―
LV.1
称号:魔闘士の達人
HP(390/390)
MP(368/368)
AP(282/282)
攻撃力:148
防御力:176
攻撃魔力:201
防御魔力:189
ちから:148
まもり:172
すばやさ:142
うんのよさ:73
―スキル―
東院流武術 西心流武術 北天流武術 南覇流武術 古式気闘武術 波動神明流武術
―魔法―
回復系魔法 8属性魔法 生活魔法 召喚魔法 付与魔法 死霊魔法 古代魔法 神王魔法 暗黒魔法
―春の女神・アニエスタの恩恵―
『ダウンロードVer.2』