1話 『武術』を『ダウンロード』して山賊退治をしました。
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あの後『ダウンロード』について調べてみた。
と言っても、『ダウンロードVer.1』の文字を『タップ』しただけなのだが…。
説明文が現れ、そこにはこう書かれていた。
『ダウンロードVer.1』…『力ある単語』を『ダウンロード』すると、その単語の意味を理解し、『使用』できるようになる。Ver.1では、1日に5回までしかこの能力を使えない。
「使える恩恵であることには違いないけど…1日5回って言う限定はキツイよなぁ…」
これは慎重に考えて使わないとあっという間に使い切る数だ。
とはいえ、生き残るためには『最低限の備え』も必要。
そこで、俺は1つの考えに至った。
「まずはなんと言っても戦う力はいるよな。武器が無い以上は肉体攻撃ができないと…と言うことで『武術』を『ダウンロード』!」
その言葉と共に目の前にはこんな文字が浮かんだ。
『キーワード『武術』を『ダウロード』します。ダウンロードに必要な時間は1時間となりますがよろしいでしょうか?Y/N』
俺は、1時間もかかるのか…と思いつつも『Y』のところタップした。
『キーワード『武術』の『ダウンロード』を開始します』
その言葉が浮かんだかと思うと、文字は消えて視界が戻った。
「ついでに、『魔法』も『ダウンロード』するか…」
またしても言葉に反応して目の前に文字が浮かぶ。
『ただいま、ダウンロード中につき新たなキーワードのダウンロードは行うことが出来ません』
どうやら、連続ダウンロードはできないらしい。
「不便だなー…。仕方がない歩くか…」
のんびり待つこともできるが、早く人がいる場所に行きたいと言うのもあって歩くことにする。
「まあ道があるのと、見渡しの良い平地ってのが救いだよなー…」
これで森の中だったら、魔物が急に現れる危険性があっただろう。
まあ、魔物が現れたら隠れることができないのでココも十分危険ではあるが…。
見えてさえいれば対処も少なからずできる…と思いたい。
早くダウンロード出来てくれと祈るばかりだ。
歩き続けると遠くで馬車の様な物が見えた。
なんで、こんな道端に止まっているんだ?いやな予感しかしない。
「…人に囲まれてるな。もしかしなくても襲われてる?」
物騒な刃物を持った人たちが馬車を取り囲んでいるように見える。
いわゆる『山賊』ってヤツだろうか?
しかし、今の俺には助ける力はない。
『武術』の『ダウンロード』が完了すれば少しは戦えるだろうが…。
『…『ダウンロード』完了まであと3分です』
また微妙な時間だなー…。10分とかだったら諦めもつくのに…。
これってやっぱり…『フラグ回収』ってヤツですか?
「ココは…慌てず騒がず近づこう」
俺はフラグをヘシ折る覚悟で、音をたてないように気配を消すつもりで歩く。
まあ、ただの高校生だった俺に気配を消すなんて芸当出来るわけもないので、あくまでも『つもり』である。
残り500メートルほどまで近づいたとき、俺の耳に悲鳴が届いた。
「誰か、助けて!」
「…女の人の声?クソッ」
ああ…やっぱりフラグでしたか…。
分かってました。お約束ですよねー…。
クッソ。助けに行かなきゃいけないじゃん。
「なんで、走ってるかなー…。俺、ただの高校生だよ?」
文句を言いつつも駆け出していく自分が正直馬鹿だなと思わずにはいられない。
うわっ。人数多過ぎません?20人以上いるよ…。死ぬよ。
「えーっと…すいません」
「なんだぁ?ガキがいるぞ」
「邪魔だから殺しとけよ」
「そうだな。殺しちゃおう」
「…やっぱ、そうなりますよね」
俺は距離を取ったまま山賊の1人が近づくと後ろに下がる。
まだか?まだダウンロードは完了しないか?
『…『ダウンロード』完了まで、あと20秒です』
あと20秒もあるのかよ!
クソッ。こうなったら…。
「1つ聞いても良いですか?」
「あっ!?」
「お金を渡したら見逃してもらえます?」
「んー…いや、殺して奪い取る」
「そうなりますよねー…」
ジリジリと近づく山賊。俺もジリジリ下がる。
一定の距離を保ち、何とか斬られないようにしていたが何人かの山賊が気づき俺の方に駆けてくる。
アカン。このままじゃ確実に死ぬよ。
「うん?あれは…」
目の前で1人の山賊が女の子を背負っているのが見えた。
多分、先ほどの声の主だろう。
ずっと先の方で戦っている人影も見えるが、このままじゃ女の子は連れ去られてしまう。
意識が女の子に向いたことで、目の前の山賊が距離を詰めていることに気づけずにいた。
「死ねっ!」
「うわっ!?ちょっ…ヤバっ!」
何とか山賊の降り下げたナイフを転げながら躱し、すぐに起き上がると向かってくる仲間の山賊の方に向かってダッシュする。
もちろん、ヤケクソではなくさらにその先にいる女の子の方に向かってのモノだ。
「うおおおおっ!早く完了しろっ!」
もう、叫ぶしかない。
なんで、俺はこんなに必死になってるの?
馬鹿なの?死ぬの?
それが正義感なのか偽善なのか分からない。
16年間生きてきて誰かを助けるなんて場面は初めてで自分の行動に説明ができない。
正直、正義の味方もヒーローも憧れこそはあってもソレ止まりにすぎない。
憧れはあくまで憧れで…実際にできるものじゃない。
じゃあ、なんで俺は助けようとしているんだ?
自分で自分の行動が理解できない。
でも…助けようとする行動に意外と後悔していない自分がいるのもまた事実だった。
「死ねやっ!」
「オラッ!」
「あぶっ!やめっ!」
咄嗟に横っ飛びしてナイフを避ける。全力で飛ぶように避けたので地面にぶつかる身体がジンジンと痛む。
すぐに立ち上がり、また駆け出す。
そして…『その時』は来た。
『…『武術』の『ダウンロード』が完了しました』
やっぱり…フラグだよな。
こんな『ご都合主義な展開』普通ならありえない。
「うりゃあああっ!」
『ダウンロード』完了の言葉で俺の身体が急に軽くなる。
いや…身体全身に力が漲ってきた。
どうなっているんだ?『武術』が『使える』だけなのに?
とにかく今は戦うだけである。
頭の中に『武術』の全てが知識としてあるだけでなく、身体の全てで理解している。
やれる。それが素直な感想だった。
「烈破!」
「ガアッ!」
掌から風圧を発生させて相手を吹き飛ばす。
さすがはファンタジー世界だ。こんな漫画みたいな技は普通に出せるのだから。
俺は吹き飛ばした相手が手放した女の子を抱き抱えて地面に丁寧に寝かせる。
「…『魔法』を『ダウンロード』…」
『キーワード『魔法』を『ダウンロード』します。ダウンロードに必要な時間は10分です。Y/N』
すぐに『Y』をタップする。
『キーワード『魔法』を『ダウンロード』を開始します』
これで良い。
後は山賊を倒すのみ。
俺は『烈破』を撃ち込み山賊を吹き飛ばしていく。
この技、風圧の密度が『弾丸並み』でありながら範囲が掌ほどあるので当たれば気絶間違いなしの強力技なのだ。
「どなたか知らぬが、手助けいただきありがたい」
「あともう少しです。一気に片付けちゃいましょう」
「了解です」
同じ鎧を着た騎士風の男たちは残り3人。他は人たちはその辺に倒れている。
山賊も残すところあと5人。
「おいおい…聞いてねぇぞ。こんな護衛役の話」
「うるせえ!集中しねえとこっちもやられるぞ」
「ココまで来て逃げられねえ…。殺るしかねえ」
「皆殺しだぁ!」
「殺す。殺す。コろす。コロす。コロス……」
ヤベェ。1人とんでもなくヤベェのがいるよ。
こうなったら…。
「瞬動!」
その言葉とともに俺の姿は消え、瞬時にして5人の山賊を倒したのだった。
この『瞬動』と言う技は、足全体に気を溜め込み一気に開放することで爆発的なスピードを生み出すと言う技だ。メリットとして、音を立てず消えるように行動できるので相手に悟られにくいのだ。 もっとも、武術に精通する者には気配を察知される可能性は高いのだが、それこそ数は少ないだろう。
「いったい何が起きたのだ?」
「すいません。ヤバめの感じがあったので一気に倒させてもらいました」
「これを…君が?」
「はい。武術の技の1つで『瞬動』と言う技を使いました。この技は一瞬にして距離を縮めることができます。周りには消えたように見えますが、実際は瞬間的に移動する技なんです。これを攻撃に利用したんですよ」
「なるほど…。おい。賊共を全員捕縛しろ。私は姫巫女様の様子を見に行く」
「了解しました」
2人の騎士が賊を縛っていく。
俺は、もう1人の騎士についていくことにした。
『武術』を『ダウンロード』した際の龍壱のステータスを記載します。
―リュウイチ フジムラ―
LV.1
称号:武術の達人
HP(270/270)
MP(18/18)
AP(207/207)
攻撃力:112
防御力:147
攻撃魔力:8
防御魔力:7
ちから:112
まもり:143
すばやさ:101
うんのよさ:45
―スキル―
東院流武術 西心流武術 北天流武術 南覇流武術 古式気闘武術 波動神明流武術
―魔法―
―春の女神・アニエスタの恩恵―
『ダウンロードVer.2』