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12 山賊退治

 俺は空いているギルドの受付の前に行った。

「率直に言って、何か儲かる仕事はないですか?」


「儲かる話か。なるほど、そういう聞かれ方だとこちらも紹介しやすいな」

 ギルドの禿げあがったおっちゃんは、迷いもせずにさっと依頼を一枚取り出してきた。

=====

依頼内容 小規模な山賊の討伐

攻略目安レベル:12?

攻略可能ランク:銅ランクまで

獲得賞金:金貨20枚

出現場所:森の中の小さな洞窟

備考:能力的には銅ランクでも問題ないがアジトである洞窟には罠が仕掛けられており、過去に最低でも数名の冒険者が行方不明となっている。

=====


「なるほど。危険な分、実入りは悪くないな」

 といっても、これはおそらく多人数パーティーで攻略することを前提にしているから、そういう意味ではこんなものか。

 一人でやれば二百万の仕事でも四人でやれば一人頭五十万。命が懸かってるとすると、微妙なラインだ。


「あんたらのパーティーが二人なら、それなりの金になる。ただ、小人数な分、危険もデカくなるからな。そのあたりの判断はそっちに任せるよ。あんまりおすすめはできないかな」

 ギルドの職員はちらっとニムニムのほうを見た。


「とくに、そっちの子は山賊なんかにつかまったら、どんな目に遭わされるかわかったもんじゃないからな」


「そ、そんなこと言わないでくださいよ……。もう、みんなそういう目でばかり見るんですから……」

 ニムニムがさっと胸のあたりを隠すように腕を前に出した。


 でも、その注意はしておかないとな。いきなりニムニムが捕まったなんてことになったら大変だし。


「どうする、ニムニム? 俺だけで盗賊をぶっつぶすっていうのでもいいけど。生命力だけなら異常に高いからな」

 仮に罠にはまったとしても、死ぬ前にどうにかできる可能性は高い。おそらく殺す気でいても、途中で山賊もこれは不死身だとでも思って、攻撃の手を止めるだろう。


「そこは私も行きます。絶対にいい成果を出すんですから! それに捕まったらヒョーゴさんでも危ないですよ」

 たしかに水に顔でもつけさせられて、溺死させられるリスクとかはあるな。そうなると生命力がどう作用するかよくわからない。


「わかった。じゃあ、一緒に行こう」


 俺たちは山賊のいる小さな洞窟のアジトの場所を確認し、夜に決行することにした。昼だと敵が仕事に出ていて、留守かもしれないからだ。


 そして夜。

 俺たちはそうっとアジトのほうに近づく。たしかに岩肌にかがめば入れる程度の小さな穴ができている。


「けど、山賊の罠ってどうやって回避すればいいんだろ?」

 罠解除のスキルとか俺には何もない。

「そこは気合いですよ!」

 ニムニムがファイティングポーズをとって、ぶんぶん拳を繰り出してみせた。

 そのたびに、胸がぶるんぶるん揺れた。


「これは……たしかにニムニムが捕まらないようにしないとな……」

 ちょっと煽情的にもほどがある。


「また、何か余計なことを考えてませんでしたか……? 罠は防げないとしても、山賊を捕まえるスキルはたしかにほしいですね。逃げられちゃったらクエスト失敗ですから」

 それはそうだった、俺たちを攻撃するような罠だけとは限らない。足止めをしてその間にトンズラする可能性もある。


 盗賊を捕まえられるような兵庫県の特徴があればいいんだけど、そんな都合のいいものはないか。

 これまでも魔法がいるという時に、ぱっと魔法が頭に浮かんだし、どうしても必要な時になったら、また何か出てくるかもしれないが。


「ニムニム、まず、俺から入る。ニムニムは後ろから来てくれ」

 同時に罠にかかるリスクを避けるためだ。

「わかりました。くれぐれもお気をつけて」


 俺はかがみながら、そうっと洞窟に入る。かがまないといけないのは入口だけで、内部はそこそこ天井も高い。


 ――と、思いっきり足のあたりに糸みたいなものが張ってあった。

 これは罠だな。あまりにもわかりやすすぎる。

 なのに、勢い余って、きっちリ踏んでしまった……。


「やっぱり、反射神経がダメだな。この体!」

 素早さがダメなことも関係しているんだろうか。


 左右から矢が飛んできて、俺の顔にぶすぶすと当たった。

 ただ、あんまり痛くない。刺さりもせずに矢は床に落ちている。


 生命力:840050/840093


 何発かで43ダメージか。まあ、そりゃ痛いとすら感じない次元だな。


 矢とだいたい同時ぐらいで前から剣を持った男二人が出てきた。

「さあ、このまま仕留めてやるぜ!」

「あれ……はずしたのか? ちっとも効いてねえような……」


 俺が平然としてることに気づいたらしい。

 悪いな。体力だけなら自信があるんだ。


 俺はその山賊たちに剣を抜いて、向かい合う。

 山賊たちも長くやっているだけあって、たんなるザコではなかった。それなりにこちらとやり合える実力はあるようだが、なにせこっちの生命力が破格なので、俺のほうはどうということはない。


「くそっ! こいつ、動きはたいしたことないのに、なんて頑丈なんだ!」

「ほんとなら、もう二回は殺せてるはずなのによ!」


 ああ、なにせ本来のレベルはかなり低いもんな……。

 俺は銅ランク冒険者だけど、かなりの特例だからな。本来ならこいつらよりはるかに劣ってる存在なんだろう。


 ただ、俺はたんに生命力がチートなだけなので、すぐに連中を倒すことはできない、剣戟の音が狭い洞窟の中でこだまする。


「ヒョーゴさん、私も参加します!」

 ニムニムが後ろで叫ぶが、俺はすぐに「ダメだ!」と返す。


 山賊とニムニムの実力差は大差ないか、山賊のほうが上だ。命を落とす危険もかなり高い。ここは俺が壁になって、消耗させ続けるのが正しい。


 しかし山賊の数は二人ってことはなかった。

 岩壁だと思っていたところが開いて、また二人の山賊が出てきたのだ。

 しかも、明らかにニムニムを狙っている。


「ものすごい上物が来たぜ!」

「絶対に殺すなよ! 牛の獣人は珍しいし、とんでもねえ高値で売れるぜ! まず逃げられねえように足の腱を切ってやれ!」


 おいおい……。このままじゃニムニムが大ケガすることになる……。


「ニムニム!」

 俺がそっちに向かおうとするが、対戦中の二人が回り込んでくる。

「行かせねえぜ!」

「お前らの相手はこっちだ!」


 まずい。

 俺の生命力からしたら、一気に突っ切っていくことはできるが、突破力がずば抜けているわけではないから、こいつらが壁になればそれを突破するのに時間はかかる……。


 また、何か魔法の力が必要だ。

 兵庫県の力で、この状況を打開できるものってあるのか……?


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