11 三本尖塔の町
名前がマニアックすぎたので、タイトルを変えました……。すいません……。前のタイトルでは兵庫県民しか読んでくれないですね……。
翌日、俺は自分の武器と防具をよいものに新調した。
救貧院に寄付できる額はまたこれから稼ごう。俺が強くなれば、金貨10枚分ぐらいなら、しっかり稼げるはずだ。
武器のほうは鋼の剣。あくまでも量産品だが、それでも銅製のものと比べると、はるかに切れ味がいい。
防具は今のボロい革のものでも大差ないんだけど(俺の生命力の問題で)、銅ランクの冒険者なんだし、信用を得るためにも薄い金属性のものに変えた。
「これは完全に銅ランクの冒険者ですよ」
ニムニムがそう言ってくれたので、ちょっとうれしかった。
「ニムニムも何か買うか? 思ったよりお金が余ったし」
「私はとくに必要とするものがないんで、大丈夫ですよ
こう言われてしまうよな。しょうがないか。安上がりだから、武闘家をやってるはずだし。
装備も揃ったし、俺たちは回復薬など必需品を買いだめして、ついに転生者の町を出ることにした。
最後にリーチェさんとあいさつをする。
「リーチェさん、今までありがとうございました」
「あなたみたいな、すごい冒険者と出会えてうれしいわ。私が何か言わなくても立派な冒険者になると思うけど、しっかりやりなさい」
最後にリーチェさんと固く握手した。
「まずは北を目指しなさい。『三本尖塔の町』ってところがあるから、そこを目指しなさい。このあたりだと一番大きな町だから」
「はい、ありがとうございます」
たいして長い間、いたわけじゃないけど、ここが俺の故郷ではあるんだよな。
●
俺とニムニムは町を出て、草原へと出ていった。
野生のモンスターが襲ってくるが、頻度はそんなに高くない。
二人とはいえ、パーティーだからオオカミみたいな手合いもあまりやってこないのか。
「ところで、ニムニム、村の復興って具体的にはどんな方法を考えてるんだ?」
「滅んだ集落はもう危なくて住めないですし、狭くてもいいので、どこかに新しい土地を買って、新しい村を開こうかなと」
「かなりお金かかりそうな計画ではあるな」
イチから村を開くとなれば当然だけど。
「そうなんですよ。なんとか安い物件を探してるのですが……。それに土地以外にもいろいろとお金は必要だから。冒険者をやっていたというわけです」
人に歴史ありだな。
能天気そうに見えるけど、ニムニムは集落の復興のために全力で生きている。
でも、冒険者としてこつこつ稼げばいいって次元の額でもないような気がする。なにかしら、違う方法も模索していったほうがいいかもしれない。
と、ニムニムのおなかが、くぅ~~~~~と鳴った。
「すいません、またパンを出してもらえますか……?」
「育ち盛りだもんな。気にするな」
俺はカレーパンとクリームパンを召喚した。
●
俺たちは途中、二日ほど、街道沿いの集落で泊まり、三日目に『三本尖塔の町』に到着した。
名前のとおり、尖塔が町の中に三本ある。宗教建築なんだろうな。この世界の宗教のシステムはよくわかってないが、職業に僧侶というのがあるぐらいだから、有力な宗教はあるんだろう。
「ここは過去に何度か来たことがありますよ。この県では二番目に大きいですね」
ニムニムが説明してくれる。たしかにこういうところで地の利がある人間がいてくれると、異世界でも助かる。
「まずはギルドに行きましょうか。こっちですよ、こっち。この通りを曲がって、すぐです」
ただ、五分経ってもたどりつかなかった。十分ぐらいならすぐって言っちゃう人もいるかもしれないが。
「……あれ、こっちの道じゃなかったですかね……。あれれ……知らない風景が……」
「結局、覚えてないのかよ!」
「すいません、次こそは大丈夫なので、もう一度チャンスをください!」
で、もう一度ニムニムは道に迷って、俺が通行人にギルドの場所を聞いた。
「ニムニムの性格がわかってきた。マイペースだってよく言われるだろ」
「はい……。救貧院の先生にもよくそう言われましたね……」
やっぱりな。まあ、勢いで行動する人間はそれなりにいるし、なかにはその思い切りがプラスになることもあるので、全否定はできないが。
冒険者って職業も見切り発車するような性格じゃないと、そうそうやれることじゃないしな。なにせ、失敗したら死んじゃう仕事なのだ。慎重に慎重を重ねたら選ぶことは無理だろう。
ギルドは転生者の町のギルドとは比べ物にならないぐらい、立派でデカい建物だった。 中に入っても、その違いは歴然としていて、左手は飲食店が営業していて、立ち飲みですでに酔っぱらっている冒険者も多い。
一方で、右側のギルドの受付スペースも窓口が換金用のところを別にしても三箇所もあるから、かなり冒険者が集まってくるらしい。
こういうのは洗礼なのか、建物に入るとじろりとこっちを舐めるように見つめてくる視線をいくつも感じた。
ただ、俺というよりニムニムのほうに多いような。
さらに言うと、胸に視線が集まっている気がする……。
「おい、あの牛の獣人、相当なものだな」
「何カップだろ……。とんでもない武器を持ってるな」
「しかも、やけに軽装だし、娼婦か? あれなら金貨1枚出せるぞ」
「よく見ろ。青銅ランクの腕章がついてる。あれでも冒険者だ」
「でもよ、冒険者でも金次第なら……」
「そういうの避けるために男と行動してるんだろ。察しろよ」
もう、そんな言葉が遠慮なしに聞こえてくる。
そこはやっぱり冒険者だな。基本的にガラが悪い。
「うぅ……。こういうの何度目になっても慣れませんね……」
ニムニムが顔を赤くして俺のほうに身を寄せた。俺もそれに合わせるように冒険者たちをにらんだ。彼氏だとでも思われれば、少しは抑止力になるだろ。
「なんだよ……。そこの剣士のお前だって牛の獣人と旅してるってことは、体目的だろ……」
冒険者の男の一人が弁解するようにそんなことを言ってきた。
「違う。そういうのじゃない。強いて言えば、俺は牛が好きなんだ」
ぽろっと言ってしまったが、これだけ聞いた人間は訳わからなかったかな……。
「へ? ヒョーゴさん、牛自体に変なフェチを感じてるんですか?」
しまった。ニムニムが変なものを見る目で見てきた!
「違う。そういうのじゃない。ただ、動物としてかわいいなとか……そういうのだ。そんなことより、ギルドの仕事を聞くぞ!」
俺は空いているギルドの受付の前に行った。




