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大魔道のススメ  作者: カズー
序章
4/20

〜起〜episode3

 戦闘開始から約2時間がたった頃。

 相手の戦車はほぼ全壊し、兵士も残り数十人となった。

「んー、こっちは被害なしで、もうすぐ相手はやられるって感じの戦況だが‥‥」

 素直には喜べない。なぜなら、今回の不確定要素である"妖術"とやらを使う幹部格が一人も現れていないからだ。

「どーなってんだ。まさか、このまま顔を出さないとか?」

 そうこう言っているうちに敵軍の兵士が向かい側から走ってきた。

「ーーまぁ、待ってたら来るだろう」

 そう言って俺は、剣を振るった。


「軍隊長!このままいけば、約数十分で我々の勝利かと!」

 一人の兵士が、軍隊長に言う。

「‥‥ああ。だが、まだ油断はするな」

 軍隊長の顔は優れない。無線機を取り出し、戦況を伝えた後、「くれぐれも油断はするな」という指示を出した。


「おらぁっ!!」

 血しぶきが舞う。俺はその返り血を受けてしまう。

「うわっ‥‥」

 最悪だ‥‥。

 斬られた兵士は苦しむ声も出さず死んでいく。俺はせめてもの情けで即死させてあげているんだ。

 周りを見渡すと、黒い煙をあげる戦車と血まみれの兵士の死体しかない。戦車の処理の大半は政府軍の戦車に任せたが、兵士は俺がほとんど受け持った。

 俺は剣を肩に担ぎ、あくびをひとつ。

「くあぁ‥‥。‥‥もう終わったか?」




 ピリッ




 その瞬間、空気がかわった。

 反射的に俺は空を見つめた。

 鈍色の空に一つの裂け目が生じていた。

「な、‥‥んだあれは‥‥」

 目を疑った。その裂け目はどんどんと大きくなり、やがて俺の視界をすべて覆うほどの大きさになった。

「なんだよこれ!!?」

 その時、

『すぐに戻るんだ!!』

 拡声器越しの、軍隊長の声が聞こえた。

「!‥‥今行く!」

 そう言って戻ろうとした瞬間


 ーー明らかに視界が暗くなった


 俺は上を見た。


 そこには、巨大な戦艦があった。


 空気の胎動する音が聞こえる。

 裂け目いっぱいに広がるほど大きな戦艦が、上空から落下してくる。

「ははは‥‥。なんじゃこりゃ」

 思わず、乾いた笑いをこぼしてしまった。









 ドゴオオオオオオオオオオオオ!!!








 彼を含める、政府軍が居た荒野全域に、謎の裂け目から現れた巨大戦艦が直撃した。鳴り響く地響きは、遠く離れた都市街にまで聴こえた。

 戦艦が残骸と化した頃、上空の裂け目から小さな球体が現れた。

 その瞬間、裂け目と戦艦の残骸は消え去った(・・・・・)


✱✱✱


「う‥‥」

俺は軋む身体をなんとか動かし、起き上がった。

所々に痛みを感じる。頭、腹部、右肩に左脚。血も大量に出ている。骨も何本か折れているだろう。

「なんなんだ‥‥いったい‥‥」

あまりにも非現実的で、突然の出来事に、俺は戸惑いを隠せなかった。剣もどこかへいってしまった。


「おや?まだ生きていたのですか?」


その声の主は、背後から聞こえた。

俺はすぐに後ろを向き、その姿を確認する。

全身を黒のコートで包み、その素顔はマスクで遮られている。

「‥‥お前‥‥何者だ‥‥」

剣がない今、俺はこいつに無闇に攻撃できない。

「ふむ。どうやら剣はどこかへやったようですね」

「質問に答えろ」

「キヒャヒャ」

男は耳をつんざくような、甲高い声で奇妙な笑い声をあげた。

「私はこの世界を支配するものだ。私は、神になる」

「‥‥お前、1回病院行ったほうがいいぞ」

「ご心配ありがとう。しかし、君は1度死んだほうがいいですよ。なぜならーー」

そう言うと男は、コートから両手を広げた。その肌は、気味悪く白い。

「神になる私に逆らう君は、既に生きる価値を無くしたからだ」

刹那、男は手を前に突き出した。

その手からはどす黒い球体が蠢いている。

「なっ、なんだそれはーー」

次の瞬間、その球体は俺に向かって発射された。

まさに、目にも止まらぬ速さというのは、この事を言うのだろう。

眼前に迫る謎の球体を、俺は身体を思い切り仰け反らせ、寸でのところでかわした。

「ほほぅ。私の"魔法"を避けるとは、なかなかやりますね。キヒャ」

「魔法‥‥だと?」

リアリティに欠ける言葉に、俺は焦った。

「ふむ。神になりえる素質を持っている私しか使えぬチカラです。知らないのも無理はない」

こいつの言うことはおかしい‥‥。明らかに、俺とは別次元の話をしている。

男は手をコートの中へ戻すと、こう言った。

「さて、私は忙しい。ここで遊んでいる暇はないのですよ、すみませんね。キヒャ。そろそろ、剣を貰っていきますよ」

「!?‥‥お前、俺の剣を持っていくつもりか‥‥?」

「キヒャヒャ。当たり前ではないか。そのためにここへ来たのだ」

俺はここまでで、剣の位置を把握していた。

男の数メートル先に、地面に突き刺さってある。剣さえあれば、戦闘態勢には入れるが、そのためにはこの奇妙な"魔法"とやらを使ってくる男の横を通り過ぎなければいけない。

「渡すかよ」

迷っている暇はない。俺は全力で地面を蹴り、剣の元へと走った。

男は再び手を突き出し、黒い球体を生成した。

「キヒャヒャヒャヒャ。そうくると思っていましたよ。‥‥無駄だ」

その球体は一つに足らず、数十個に分かれて生成される。

(なんて数だよ‥‥)

男の横を通り過ぎ、剣まであと数メートルのところで、男が仕掛けてきた。

「ハアッ!!」

その声とともに、球体が一斉発射された。

背後から迫る球体を、俺はノールックで躱していく。

「キヒャッ!!これは驚いた!」

その速度はさらに増し、俺に襲いかかる。それを躱すため、俺は跳躍し前へ進んだ。



「‥‥キヒャァッヒャァッヒャァッ!!‥‥面白い‥‥」


「はぁ‥‥はぁ‥‥疲れた‥‥」

俺は剣の柄を握った。

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