計画実行(2)
「なんだぁ〜町のみなさんお揃いで……俺達に支配される日常から抜け出してやろうってか?」
「そんな感じだねアーサ兄さん」
姿を現したのは次男の"アーサ・グルーヴ"、
そして末っ子の"エヴィル・グルーヴ"の二人だった。
グルーヴ一家は三人兄弟と聞いていたのですが長男の姿が見えませんでした。
「"ロア"さんはでてこないのですか?」
私がそう問いかけるとエヴィルさんが答えました。「ロア兄さんは事情があって今は家にいない」
……驚きました。
私達はグルーヴ一家の中でもロアさんが一番強いと聞いていたので、グルーヴ一家と言うよりロアさんに怯えて何も出来なかったと言っても過言ではないからです。
私はチャンスと思い号令をかけました。
「みなさん行きましょう!あの二人を拘束するときです!」
その号令と共に、町のみんなは二人の下へ走りだしました。
「……アーサ兄さん……どうやら俺達なめられてるみたいだね」
「はは!そのようだな!ロア兄さんがいないからって調子にのってるなぁ!」
町のみんなはあっという間に二人を囲んでしまいました。
拘束できる……!私はそう思いました。しかし、次の瞬間敵の刀の一振りで戦況は変わってしまいました。
「ぐぁぁ……」
そんな声がたくさん聞こえてきました。
そう、たったの"一振り"で何十人もの人が斬られてしまったのです。
「……なんだもうお終いかい?」
町のみんなは絶句状態でした。
「お、おいエヴィル何も斬らなくてもいいだろ!」
「わかってないなアーサ兄さんは……痛い目に会わせないとこいつらまた調子にのるかもしれないだろ?」
「そうかもしれねえが、刀を使わねえとこいつら程度の奴らを制圧できねえってのも情けねえ話だぞ?」
「……なるほどそれは一理あるね。わかった、素手でやろう」
「……な、なめんなぁぁぁ!」
町民の一人が槍を持ち勢いよく突っ込んでいきました。
……が、しかし、武器は有って無いようなものでした。
敵の素手にいとも簡単に、やられてしまいました。
「おいおい、武器もってんだからよ少しはがんばれや。」
「全くその通りだよ。もうこの終わらせようかアーサ兄さん」
そう言うと二人は私達のところへ突っ込んできました。
素手が武器持ちに勝てるわけない……!そう思っていた私は数秒後唖然としました。
敵二人を傷つけることすらできず倒れていく町の人達。
私は我慢できず突っ込みました。
「エヴィルさん、アーサさん!私が相手になります!」
(……これ以上犠牲者は出したくない……!)
ですが何も出来ませんでした。
ただただやられるだけの数秒間。
(……ああ、やっぱりこんな計画、実行するべきじゃあなかったんだ)
そんなことを思いながら私は意識が遠のいていきました。
「……女を殴るのはあんまり趣味じゃあないんでね。……これで終わりにしよう」
そう言うとさっきまで町の人が持っていた金槌を大きく振りかぶる姿が見えました。
(……結局何も出来なかったんだ私)
そう思った次の瞬間。
「ドゴッ」
大きな音と共に男の人の姿が見えました。
「……よう、悪いな遅れて」
その声はこの前聞いたばかりの声で、私が待っていた人の声でした。