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異世界でカボチャプリン  作者: マーブル
異世界でカボチャプリン
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魔法杖の製作


 報告が終わり、支部長室を出ると、帰り支度をしていたベッキーに遭遇した。

「ベッキーさん、おめでとうございます」

 と言いながら、ベッキーの左手を取り、さりげなく左手薬指のサイズを測る。

「ありがとう」

 短く言ったベッキーには、少しばかり諦観が滲み出ていた。そうだよなぁ、暗部に関わることにもなるんだもんなぁ。

「あ、これ、お土産にどうぞ。直接お宅に届けようと思っていたんですけど」

 籠に入った木の実を渡そうとしたけれど、それなら一緒に行きましょう、とお誘いを受けた。もちろん、ホイホイ付いていくことにする。


「ホントはね、すごく迷ったのよね」

 暗くなった夕焼け通りを並んで歩く私に、ベッキーは、はにかみながら言った。

「でもね、私には守ってくれる人が必要なんじゃないか、って母に説得されてね」

 ああ、やっぱり男手がないと不安なんだなぁ。バイオレンスに満ちた世界ではそうなるのが自然なのかも。

「何だかんだ言っても、トーマスさんは力持ちだしね」

 言い訳を聞かされているような……。

 結局のところ、理屈じゃなくて、感性が決めちゃったということらしい。それで、好きになった理由を色々並べてみてると。ははあ、中年の恋も色々大変なんだなぁ。


 私はうんうん、と頷きながら、ベッキーが並べる理由を聞き続ける。

 こうやって素のベッキーと話すのは初めてかもしれない。照れ隠しに饒舌になった中年女性は、ちょっと先の未来を想像して、戸惑い半分、期待半分の微妙な表情を、街灯の灯りに浮かべる。

「ああ~、私ばっかり喋ってるわ~」

 ベッキーの興奮がピークに達した頃、アーサ宅へと到着した。


「母さん、お話があります!」

 帰るなり、ハイテンションのベッキーを見て、アーサはきょとん、としている。

「トーマスさんと結婚します!」

 そして高らかに宣言した。

「そう!」

 パチパチパチ、と拍手をするアーサに合わせて、私も背後から拍手をする。

「おめでとうございます」

「ありがとう、ありがとう!」

 ベッキーはハイテンションで家の中に入っていく。

 涙を流して抱き合う親子に、居心地の悪さを我慢しながら、お土産の籠を差し出すタイミングを計る。うん、この状況じゃ、編み物教えて下さいとか言い出せないし……。

「そう、お夕飯、食べていってちょうだい? さ、貴女は着替えてきて?」

 と思っていたら、ご相伴承認のようです。ありがたく頂きます。


 ベッキーはアーサに促されて着替えに行く。その間に配膳をしているのを手伝う。

「そうね、この間貰ったニャックが、良い感じに漬かってると思うわ? あれを出しましょうか」

 先日の土産に置いていったニャックは、まだ漬かりが浅かったので放置していたそうだ。それが今日という目出度い日に飲まれるとか、嬉しい限りだなぁ。

 お目出度い日の豪華な料理、という訳ではなかったけれど、飾り気のなさが逆にホッとする魚料理が出てきた。

 ベッキーはニャックを飲みながら、トーマスがいかにしつこかったか(笑)を愚痴りながら、それでも最後には惚気て、根負けしたんだ、と自己正当化して、酔い潰れた。


「あ、私が運びますよ」

 幸せそうに潰れているベッキーをお姫様抱っこして、寝室へ運ぶ。

「そう、ありがとう。本当に助かるわ」

 そう言うアーサは、年齢の割には健脚だけれども、人間一人を運ぶのは手間だろう。その点、私は力持ちですので……。

 ベッキーをベッドに置いて布団を掛け、灯りを消して居間へと戻る。


「ふう」

「そうね、ありがとう。お茶でもいかが?」

「あ、はい、頂きます。本当はお土産を渡しに来て、編み物―――セーター――を習おうと思ってたんです」

 チラ、とベッキーの寝室の方を見る。

「そう」

 アーサは柔らかく微笑むと、棚から一着のセーターを取り出した。

「これは?」

「そう、これは試供品―――というよりは実物? 貴女に受け取ってほしいの」

 お師さん手ずからの一品ですか!

「ありがとうございます!」

 思わず立ち上がって合掌してしまう。


「そうね、こっちは、作り方を書いておいたわ」

 と、一枚の羊皮紙も渡される。羊皮紙はお高いのに!

 書かれていた内容は、アーサが言った通り、セーターの製作図だった。なるほど、ここまで一気に編んでからくっつけるわけね。


「ふむふむ……………」

「そうね、もう、貴女なら一人で作れると思うわ。それの通りに作ってみるといいわ」

 教わった基本の編み方、数種類、いや実際には二種類で作れるそうな。

「ありがとうございます。えーと、もう一つお願いがあるのですが……。お借りしている家のお庭をいじってもよろしいでしょうか?」

「そうね、借家のお庭というものは、自由にして構わないのよ。そのためにあるのだから」

 実はもう、カボチャやら葉野菜やらは植えてある。ので、ここで言質を取ったのは、さらなる改造のためだったりする。

「ありがとうございます。庭いじりが終わりましたら、後日、ご招待したいと思います」

 私が丁寧に言うと、アーサは悲しそうな顔になり、

「そう、ちょっと余所余所しいわ。貴女はトーマスさんの娘のようなものでしょう? なら、私にとって、貴女は孫のようなものだわ?」

「うっ」

 お婆ちゃん……。ハーブティーと加齢臭が郷愁を誘う。


 涙腺が緩みそうになるのを我慢して、目を瞑り、ありがとう、お婆ちゃん、と呟くと、結局、涙がこぼれてしまった。

「ははは、それじゃ、今晩はこれで失礼します! セーターと製作図、ありがとうございました!」

 泣き笑いしながら、誤魔化すように私は立ち上がると、合掌をして、逃げるようにアーサ宅を出た。

 だって、恥ずかしいじゃないか……。

 これじゃあ、アーサおばあちゃんに会う度に泣いてしまうよ。



 翌日、起きると、腫れた目を擦りながら、顔を洗う。

 外は暗く、体感時間というか体内時計だけが、今が朝であることを教えている。

「寒い……」

 ドワーフはどちらかというと北方の種族なのだけど、どうも私は寒いのに弱い。

 いや! 敢えて言おう! 寒いのが得意な人はいないと!


 暖炉に薪をくべて、『点火』する。煙突に向かって煙が伸びるのをボンヤリ見ていると、そのうちに部屋が暖かくなる。

 家庭用の暖房器具とか、この辺りは魔法が普及していないものの一つで、仮に魔道具にしたところで、その魔力の供給源をどうするんだ、という話になり、家人から補充するとなると、それは結局、身体を動かして温めているようなものだったりするわけで。

 ので、結局のところ、薪をくべたり、乾かした泥炭を燃やしたりしている。グリテンの曇天の多さは、海流の関係と共に、煤による公害なんじゃなかろうかと思ったりもする。

 元の世界のガソリンや水素、電気スタンドと同じように、燃料インフラを先にどうにかしないと解決しないんじゃなかろうか。

 まあ、今はインフラ整備をする立場じゃないから、これは考えないでおこう。


 で、今は……。

「まずは……鏡……」

 思い立ったらやろうと思っていたのに、中々思い立たなかったという。

 手鏡にしようと思っていたので、加工しやすい木材が入手できてから、と思っていたからねぇ。

 昨日の巡回で取ってきた材木は、まだ殆ど生木だったので、先に乾燥させないと使えない。

「暖めるか……?」

 要するに熱を与えて風で水分を飛ばせばいいのかな。

 ん、熱を与えるというか、木材の中の水分を操作すればいいのか。と、なると火系統じゃなくて水系統かな。字の如く考えると確かに水系なんだろうけど、これらは比喩みたいなもので、実際には水に限って操作するものではないみたい。

 取り出した生木を床に置いて、掌を当ててみる。


「うーん」

 何のスキルを発動させればいいのか、ちょっと考える。

「水分を……集める?」

 掌が当たっている部分に木材に含まれる水分を集めてみる―――ようにイメージする。

 じわ~っと掌が湿ってくる。ちょっとずつ……集める。


―――スキル:凝水LV1を習得しました


 おおっ?

 普通のスキルだなぁ。ということはこれ、攻撃に使えるスキルなのか。

 どうやって――――って、もしかして、生き物から水分を吸い取るとか?

「なんてエグイ……」

 干して殺そうっていうのか。そんな殺人スキルでも、木材の乾燥ってスムーズにいけるものなんだなぁ……。いやまあ、それはナイフとかでも一緒か。

「―――『風刃』」

 強引に乾燥させた木材をスライスしていく。厚さ二センチくらい?

 丁度、十枚取れたので、今回は十個作ってみよう。まあ、売りモノじゃないし。


 板になった木材に手鏡の形をケガいて、再度、風刃で加工していく。

 うん、旋盤とかノコギリとか不要で素晴らしい。ミクロン単位の調整とかはできなさそうだけど、ハンドメイドの道具程度なら、これで十分だわ。


 一度、荒く鏡面加工をしてみる。サンドペーパー替わりに。

「―――『鏡面加工』」

 このスキルは、どうも魔力を一定の出力で維持して、ゆっくり掛けていくと、ツルツルになるみたいで、木材にも有効だった。ピカピカのツルツルになっていく木材が面白い。


「うーん、ちょっと飾り気がないか」

 手鏡なので、それらしい(どんなのかはわかんないけど)装飾があった方が良さそうだ。以前に買ってあった彫刻刀でカモミールの花を象ってレリーフを彫っていく。十枚のレリーフを彫り終えると、指先に薄く魔力を集めてなぞっていく。


 この『鏡面加工』はどうもルーサー師匠が持っていた『研磨』と同系統のスキルみたいで、魔力を砥石替わりに使っているのだ、と気付く。

 でもでも、ルーサー師匠は砥石でやっていたから、その辺りに拘りがあるか、もしかしたら魔力でも研磨ができることを知らないのかも……。前者だとしたら、正確な研ぎを行おう、とする意味は十分にあると思う。慣れないと、アクティブの『研磨』スキルによる研磨はムラができてしまうからだ。フン以外に喋ってくれたら、その辺りはわかるかもしれないけど、期待しないでおこう。


「うん」

 満足のいく仕上がりになった。

 ここでニスを塗っていく。どうせ重ね塗りするし、これは一回目。これは建材屋さんで買った速乾性の油。亜麻油だね。これは布地のリネンを作る時の副産物みたいなものらしい。ちなみにグリテンでも亜麻は育つ。ので、これは国産モノ。

 塗りおえたら乾燥。自然に酸化させるのも重要な工程だから、ここは魔法で乾燥はさせない。


「次は……」

 ちょうど木材やってるし、魔法杖に移行しよう。

 木材の乾燥の工程は先ほどと同じ。細長い円錐状に後で加工する。長さは六十センチくらい? ステッキにしては長め、杖にしては短め、かな。雑ってわけじゃないけど、十年使えればいいよね、的な作りにしよう。

 いわゆる、魔法使いが魔力増幅(ブースト)のために使う杖は、杖本体のどこかに魔法陣が設置されている。以前に騎士団の魔法師三人組(スーパースリー)の杖を見せてもらったところ、握りの部分から先端にかけて、螺旋状に魔法陣が記述されていた。安い杖にありがちな、簡素な魔法陣だった。それでも魔法杖を作る人は希少だからか、もの凄く高価だったんだってさ。


「んーと」

 私は羊皮紙を一枚取り出して、魔法陣を描くことにした。

 目的の魔法陣が自動書記のように、私の手によって記述されていく。溝を彫っていいのなら『転写』でもよさそうだけど、考えながら紙に描きたかったから、これでいいのだ。


「増幅した魔力をさらに増幅……制御……入り口はこっちで……出口はこっち……」

 通常の杖っぽくするなら紐状に描いて、それを螺旋状に杖に巻き付ける形にするのだけど、とりあえず描いてみた魔法陣は直径五十センチほどになった。

 うん、この大きさなら、このまま巻き付けちゃおうかな。

 となると、ホイルくらいの薄さだといいなぁ。コンマ一ミリほどの薄さは、さすがに水刃では切り出せないし、圧延機があるといいんだけど……。


「圧延機か……金属のロールが偶数個あれば作れるかな?」

 私だけが使うなら問題ない……と思う。元の世界でも、圧延機は、中世にはすでに某天才発明家(ダヴィンチ)が原型を作ってたっていうし。

 案ずるより産むが易し。どうせ簡易版だし、後で鋳溶かして再利用できるようにすればいいか。インゴットを水刃で成形して、ロール状の鉄を四本作る。それぞれ両端には突起を付けて、中央には穴を空ける。ここに鉄の棒を差し入れて固定。突起の部分には皮のベルトを掛けて、四本が連動して回るように配置する。これにハンドルを付けて完成。

「うん、何となくそれっぽい」

 元の世界にあった、パスタマシーンみたいな。あ、これパスタマシーンに応用できるか……。


 ミスリル銀を水刃で板状に切り出す。可能な限り薄く。一ミリほどに削り出しができたので、仮圧延機のローラーに差し入れる。

 うん、ローラーは引っかかりもなく、スムーズに回転して、圧延できてるみたい。ローラーの隙間を段階的に狭めていく。

 何度かローラーを回すと、コンマ二ミリほどの厚さになる。いまのところ、薄さはこれが限界っぽい。しかし、これは少量のミスリル銀が相当な面積になって、ちょっとニンマリしてしまう。

 大型魔法陣用に紙作りをしているけど、倉庫に使う魔法陣は、金属箔の方が丈夫かなぁ。ま、これも改良の候補ってことで。

 ミスリル箔は五十センチ幅のものが二メトルほど用意できた。これで十分かな。

 予め描いておいた魔法陣を見て記憶する。

「うん」

『レシピ』登録がされて、これでいつでも魔法陣が取り出せるようになった。


「―――『転写』」


 このスキルは、例の迷宮にリンクしていた召喚魔法陣を刻んだ方法と思われる。

 一般的な魔法スキルを使う時には必ず魔法陣が形成、表示されるけど、これは空中に転写、投影しているものだと気付く。言われてみればなるほど、だけど。

 この転写と投影の部分だけを単体で取り出して、魔法陣を刻むだけの用途に限定することで、この『転写』スキルは無限の可能性を持った、とも言える。私的には魔道具の歴史を変えるスキルだと、勝手に思っているくらい。


 魔法陣をミスリル箔に転写していく。

 とりあえずは三本分の三枚。出来上がった転写済みミスリル箔を、杖本体に巻き付ける。

 それぞれ、魔力の入力口を握っている手元部分に、出力部分を杖の先端に設定。本人の魔力を使うので、魔核の類は使わない。その代わり、先端には水晶を削りだして取り付ける。突き刺したら痛そうなくらい尖らせる。これで魔力の集約がさらに効率的になる。メンテナンスも水晶部分を調整するくらいでいけそう。それに、水晶の加工程度なら、私がタッチしなくても管理できそうだし。


 手元部分は後で革を巻くけど、一部分はミスリル箔を露出させておく。この部分には、やはり水晶を板状に削りだしたものを貼り付けて保護する予定。

 本体はできたので、木材の皮を鞣して薄く、細く切ったものを、テープ状に巻き付けていく。ミスリル箔の魔法陣を保護するための外装だ。二重に巻き付けたところで接着剤――――アイビカの根をすり下ろしたもの――――が乾くのを待つ。


 と、その間に鏡のニスが乾いていたので、もう一度重ね塗りをしておく。色味からすると、もう一回くらい塗った方が良さそう。


 鏡の方は、鏡本体の製作に入る。これ、通信機能を入れようかと思ったんだけど、魔力供給源を考えると、鏡を見る度に魔力を吸い取られることになっちゃうなぁ。一応プレゼントした人に聞いてから、回路を繋げればいいか。鏡体の裏側に魔法陣を転写しておこう。いざという時のために。

 まぁ、フレデリカやエミーならまだしも、ドロシーの魔力を吸い取ったら、最悪の場合、動けなくなってしまうかもしれない。身だしなみを整えていたら元気がなくなっちゃうとか、呪いの鏡以外の何物でもない。

 鏡部分は、本当は透明なガラスがあれば、それを選択するんだけど。

 考えた挙げ句、鉄と銀の薄い板を貼り合わせて、表面の銀を鏡面加工することにする。鉄そのものは魔力への親和性が高い素材とは言えないけど、鉄素材に魔法陣を描く訳じゃない。多少の重量アップは目を瞑るとして強度を考えると、今のところはこれがベターっぽい。


 板を水刃で薄く切り出して、圧延機で厚さを揃えて、おまじないにアイビカ接着剤。鉄と銀を貼り合わせたら『結合』する。

 うん、素晴らしい一体感。後で魔法陣を描く時には板同士を剥がさなきゃいけないのがちょっと面倒だけど、しょうがないわね。


 出来た鏡は丸く切り取ってサイズを調整、仕上げに『鏡面加工』をする。

 こうして十枚の鏡が完成。

 鏡に灯りが反射している。魔導ランプの灯りだけだというのに、部屋の中の光度がすごいことになっている。

 ん、この鏡、倉庫の灯り取りに使えそう。コスト的にもそんなにしないし。製造の難しさは、透明ガラスの方がよっぽど難易度が高いし、コストも高いから、代用品として売り込めるかも。


 まだ杖の外装が完全に乾いていないので、包丁の柄でも作りますかね。ルーサー師匠から頂いた柳刃の柄を作る。とは言っても適当に削り出すだけ。刃物を填める穴は、小さな鑿で少しずつ削っていくのでそれなりに手間なのだけど、これは風刃で一発。木材には水刃は向かないけれど、精細な加工には水刃の方が適してるかしらね。

 割と簡単に出来たので、同じデザインの柄を十本ばかり作っておく。そのうちの一本は柳刃に装着しておいた。残りの九本はルーサー師匠に持っていこう。


 鏡の木材部分に最後のニス塗り。良い照りが出てきた。

 杖の接着剤も乾いた。薄く、魔力を通わせて、『結合』してみる。そうすると、まるで螺旋の木目のような、不思議な模様になった。うん、イメージ通り。軽く表面を研磨して、ニスを一回塗り。杖にはしつこくニスは塗らない予定だけど、照りが薄いならもう一回くらい塗るかなぁ。


 包丁の柄にも塗っておこうかな、と思い立った時点で、ニスが切れてしまう。買いに行こうと立ち上がると、窓の外からは暗闇しか見えなかった。

「あれ?」

 ネイビーのコートを羽織って家の外へ出てみる。星の配置を見ると……。すでに深夜もいいところだった。

 吐く息が白い。寒さに晒されたせいか、眠気が襲ってきた。と同時に空腹感も。この二つは同時に満たせない。

 扉を閉めて、施錠すると、とりあえず仮眠することにした。

 ベッドに横になり、うん、朝まで。起きたら何かお腹に入れよう。



――――とりあえず、今日はお休みなさい。



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