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異世界でカボチャプリン  作者: マーブル
ブリスト方面波高し
442/870

※閃きのホムンクルス

画像多めデース。



【王国暦122年10月19日 7:03】


 着々と迷宮が整っていく様は、某タワーとか某シムシティとかをプレイしているのと似ている感覚じゃなかろうか。寝食を忘れて取り組みたくなるところを、エミーが叱り付けてくれている。

 くそ、いいお婆ちゃんになりそうだよ……。


 第十階層に製錬場を移し終える。本格稼働は製錬法の選定と確立、魔物達と迷宮への伝達。それが終わらないとダメね。

 第十一階層は製錬場で作り終えた高純度原石を一時保管するところ。この時点でインゴットになっていればいいけど、場合によってはここにも魔力炉が必要になりそうなので、ひとまずの場所として確保しておいた。

 第十二階層が石材倉庫、その下の石材加工場で残土を再利用した石ブロックを作り、貯めておく。この石ブロックは採掘場周囲の補強にも使われる。

 現時点の最下層は、鉱石の一時保管場である第十四階層。

 ここから、ドリルを突き立てて鉱石を含む土砂と石を排出、選別して上のフロアに運ぶ。迷宮を下に拡張しつつ、ドリルは移設が可能なようにする。

 ……と、全体として、何かの保管場所、倉庫のようなフロアが多くなった。元々の迷宮の性質を考えれば当然かもしれないけど、採掘場が稼働を止めたら迷宮の成長は止まる。


 鉱脈は、第十四階層まで掘ったところで銀を含む鉱石が増え始め、もう五階層分は深く掘れそう。そこから先は横に掘っていった方が効率が良さそうなのだけど、迷宮の構造上、いきなり横に掘る訳にもいかないので、新設エリアができるかどうかは、私が生きているか、やるヒマがあるか、ということに尽きそう。


 さて。

 問題のコンベアね。

 こういう、採掘場で使われるのは、


① ベルトコンベア

② リフトコンベア

③ スクリューコンベア


 が考えられる。

 ①は平面での移動ならともかく、今回は上下動させたいのであまり向かない。

 ②は細かい部品、特に(チェーン)やギア、滑車などが必要になる。

 ③は本命かしら。製粉所にあるやつよね。筒の中を螺旋状の部品が回転して、下から持ち上げていくという。


「しかし、それも問題が……」

 ③を採用する問題点としては、鉱石は粉ではない、ということ。安定して運搬できるとは言い難い。

 ①~③全部に言えることだけど、もう一つの問題点は、魔力を他の動きに変換して、それを動力にせざるを得ないということ。この場合は回転動作をさせなければならないので、水車や風車を使うか……蒸気機関か……。これはNGの可能性が高い。

 風系魔法で直接回すにしても、部品は摩耗するし、百年は保っても千年は保たない気がする。

 ちなみに採掘用のドリルの回転は直接魔法で回転させる方式で、枠の周囲に土系、風系、火系(摩擦熱対策と思われる)が配置されている、純然たる魔道具。ドリルは何かに繋がっているわけじゃなく、コマのように回転して、ドリル自体の自重で土を削っている。今後の建設ギルドにフィードバックできそうな簡素な構造に唸ってしまったけれど、これもコンベアの駆動方式としては採用しがたい。

 うーん、つまり、なるべく可動部品を減らして……できれば無くして……。


ピキーン☆


挿絵(By みてみん)


「閃いた!」

《おおっ?》

《おお……》

「なんじゃ……」

「ノーム爺さん、こういう形でゴーレムって作れる?」

 私が提示したのは、コイルバネのような形状だ。

《造作もないが……どうするつもりじゃ?》

「うん、ゴーレム自身に昇ってもらえばいいかなと」

《ほう……?》

 ノーム爺さんがにゅにゅ……と作り出したのは、断面が円形の土製コイル。石が混じってるから白っぽいね。わー、ムーミンに出てきたニョロニョロみたいで可愛いな、これ!


挿絵(By みてみん)


「うん、こんな感じ。ノーム爺さんの土柱って、千年保つの、作れるよね?」

《無論じゃ。二千年保つぞい?》

 素晴らしい。早速、試験用に直径五十センチの円柱を五メトルほどの高さで作ってもらう。建設残土が物凄いことになっているので、材料には困らないのがステキ。

《で、どうするんじゃ?》

「うん、このコイルゴーレムをさ、柱に巻き付けるようにして昇らせてみたらどうかな、って」

《なるほどのう………?》


 言うが早いか、ノーム爺さんがゴーレムに指示を出して、土柱に巻き付かせて、昇らせてみる。

 ぐるんぐるんと回転するコイルゴーレム。私はちょっとプラレールのスパイラルを思い出した。


「あっ」

 コイルゴーレムが摩擦に負けて落ちていく。落ち方もストーン、と落ちないで、逆回転しているように見えるのが実にラブリーね。また、土柱の強度も問題で、過度の締め付けで既に土柱にヒビが入った。

《強度を上げるとなるともっと径を太くせねばならんのう?》

 極太になるとさらに巻き付きにくくなる。

「ゴーレムが自重を支えるには、もっと軽くないとだめか」

《うむ。ゴーレムに土台を作っても良いが……それでは意味がないんじゃろ?》

「うん、全体が均一の形状をしていた方がいいから……」


ピキピキーン☆


挿絵(By みてみん)


「閃いた!」

《おおっ?》

《なんと》

「やるではないか……」

「ノーム爺さん、ゴーレムは薄くしてみよう。で、土柱には突起を付ける」

《突起?》

「うん。つまりこういうこと」


挿絵(By みてみん)


《なるほど……。こんな感じかの?》

 巨大な柱が細長い空間に出現する。柱には螺旋状に突起が配置されている。これで薄くしたコイルゴーレムなら過重に耐えられそう。

 試しに昇らせてみる。

「おお、いけるいける」

 今度はスルスル……と軽快に柱を駆け上がっていく。試験用に二トンの重量でゴーレムを動かしてみたけれど問題なさそうね。

 結局ゴーレムはその半分なら柱が長持ちするだろう、ということで、一トンで作ることにして、柱の足元に魔法陣を設置。

「じゃあ、柱やっていこうかー」

《うむ。途中で支えがあるんじゃろ?》

「うん、各階で支持する」

 それなら基部である第十四階層に過度の負担がかかることもなさそう。


 細かいパーツを量産する――――みたいな作業だとノーム爺さんは『飽きた』とか言って嫌がったりするんだけど、こういう大きいモノは好きみたいで、実際には同じパーツを作ってるだけなんだけど、ノリノリだ。

《大きいことは楽しいことじゃよ……?》

「うん、そうだね」

 そんなことを言いながら、ノーム爺さんは土柱を上に重ねる。

 私はその土柱を『結合』で馴染ませた後に四角い穴を空けて、ダボのように四角いパーツを填め込み、また結合。

 上に上がって、各階の床面に相当する高さの場所は、石材でダボを介して迷宮と土柱を接続する。

 ずっと結合している気がする……。



【王国暦122年10月19日 12:19】


『採掘場』エリア第一階層まで土柱が完成すると、エミーとサリー、ラルフが見学にやってきた。

「うわ……」

「高い……深い……」

「これ、どのくらい深いんだ……?」

 土柱の隙間から覗く柱の底は見えず、深く暗い。

「お姉様、ここは開きっぱなしなんですか?」

 搬出口だから第一階層の床面から土柱が露出している上に、倉庫階だけとはいえ各階にアクセスできる。この迷宮最大の弱点になりそう。

「うん、だから厳重に防御するし、各階に罠も作るよ」

 土柱扉は三重にして、それぞれが正面扉と同じ強度の扉。正攻法ではほぼ突破できまい……。問題は搬出中の扉開放時に侵入されることだけど……。

 基本は電撃系、麻痺、毒などで動きを弱める罠かな。

 一番凶悪なトラップは、何カ所かあるコイルゴーレム生成魔法陣で、乗せられたものは何でもゴーレムの形状にしてしまう。侵入者が乗ったら、一瞬でフレッシュ・コイルゴーレムが出来上がる。そこに落とすように設定しよう。


「なあ、小さい隊長、このフロアって剥き出しなのか?」

 第一階層は巨大ゴーレム生成の魔法陣が露出しているから、開放していることが多いだろうけど、ラルフの言うとおり、閉鎖できる構造を作った方がいいね。


「じゃあ、それは罠を設置してからやるよ」

「姉さん、手伝います」

「穴に落ちると命がない……ドリル磨いてて……」

 私はサリーに懇願した。



【王国暦122年10月19日 16:05】


 防護扉を設置、それらを連動させる罠の設置と、全体の警備システムの見直し。

 まる一日使ってしまった。

 日は傾いているけれど、半端なままではブリストへは行けない。前倒ししておくに越したことはない。

『採掘場』エリア第一階層に可動式の天蓋を設置、か……。


 そういえばポートマットの領主の館に設置予定の植物園には、シャッターを作るんだったよなぁ。あれの雛形として作ってみようかしら。

 あっちのは常設の支柱がレール代わりになるから、基本的にはパーツ作りが面倒そう、ってだけなんだよね。広大な面積を短時間で覆えるシステムか……。それこそ盾でも持たせたゴーレムでも量産して並べてみるとか? いや、材料の石材が常にあるとは限らない。っていうか石で防御するには中身にミスリル銀板でもサンドイッチしないと魔法的に強度が得られない。

 となると常設する施設であるべきなんだけど、ゴーレムを動かす手前、支柱の位置には注意しなきゃいけないかなぁ。この魔法陣で生成できるゴーレムの最大サイズは十六メトル。魔法陣の大きさは四十メトルくらいか。


挿絵(By みてみん)


 魔法陣がフロアの南東にあり、北東が、ゴーレムを移動、搬出するためのスロープになる予定。

 単に盛り土で済ませようと思っていたけど、これはギミックを仕込んだ方がよさそう。しかし、これほどの巨大な質量に何かを仕込むというのもなぁ。スロープは扇状に広げるとして……。

 ん、扇……。


ピキピキピキーン☆


挿絵(By みてみん)


「閃いた!」

《妙に冴えとるのう……?》


挿絵(By みてみん)


 扇を開くように覆えばいいのか。正方形を囲むとして四方から展開してみるか?(A図)

 扇を大きくできるなら二枚でもいいことになるか(B図)。

 しかし、それには扇を収容する空間が必要になるから………。

「ふむ……」

 土柱が露出している穴は隠す工事をしているから……ここと『塔』エリアの半分にした部屋を繋げて、多重扉の一つにしてみよう。

 どうせ土柱隠しの迷宮外壁は露出しちゃうから、その上に扇展開の構造物を載せてみるか。そうすれば覆う場所が半分、扇も二枚で済むよね(C図)。扇は分割してスライドするように収納すればいいし。

「スロープの形状を東側に向かって直線になるように変更するよ。土柱周りの作業をしていない、ミノさん、オクさんは集合、グラスメイドさん、指示出しお願いね」

「ぐもー」

「くぉお」

「了解しました、マスター」

 グラスメイドにゴーレムへの指示を出させて、細かい作業はミノさん、オクさんにやってもらう。


『塔』エリアの第一階層は後日建てる『塔』の構造物が乗るので、『採掘場』エリア第一階層の半分だけを使って、扇型シャッターを作るしかない。地上階に相当するフロアってことになるかしらね。

 土柱隠しの部屋は西側にだけ頑丈な扉を設置、そこから西に行った『塔』エリアの第一階層の部屋には南側にのみ扉が、その次の部屋は東側だけに扉がある。その扉をくぐると、やっと大扉になり、外に出られるようになる。

 宇宙船のエアロックみたいだけど、各々の部屋を閉めてから次の部屋の扉を開ける、という仕組みにしたから、迷宮側が検知しないことはまずないので、ほぼ侵入者を防げるはず。


挿絵(By みてみん)


「エミー、サリー、今日は突貫工事するので。寝てていいよ」

 まだ夕方なのに、と二人は驚いた。

「終わりそうにないのですか?」

「姉さん、手伝いますよぉ……」

「じゃあ、夜食のサンドイッチを頼みます……。基本的に大工事で危ないので立ち入り禁止」

「いいえ、手伝います。寝る時間になったらちゃんと寝ますから。手伝わせてください」

「姉さん、私の魔力量も捨てたものじゃありませんよ?」

 今日のエミーとサリーは一味違った。やる気に満ちているから少し手伝ってもらおうかしらね。エミーが料理をしていないのは、ハート騎士団に夕食の仕込みを任せているからなんだという。二人とも魔力が余ってしょうがないわけね。

「わかった。ええと、じゃあ、石組みの『結合』を手伝っておくれ」

「はい、お姉様」

「はい、姉さん! 嬉しいです!」

 危ないけれど、スピードアップするのは間違いないか。石組みの必要なところを先にやっちゃおう。



―――――ピキピキピキーン☆





キラーン☆

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