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異世界でカボチャプリン  作者: マーブル
忘却は忘れた頃にやってくる
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護送の旅(復路)2


【王国暦122年7月11日 17:49】


 ウーゴに見送られて馬車を出す。

「それで、どこへ向かえばいいんだ?」

 御者さんではなく、フレデリカが問う。

「うん、ロンデニオン西迷宮へお願いします」

 フレデリカは、やっぱりなぁ、と自分の想定が正解だったことで嬉しさ半分、不安半分の、あしゅら男爵みたいな表情になった。

 考えてることが丸わかりだから、フレデリカは面白い。

 さっきの無感情な仕草は、実際に何も考えてなかったんだな。

「一応、尾行には注意してください。まあ、どうでもいいんですけど」



【王国暦122年7月11日 18:18】


 迷宮に到着。

 カレンとシェミーには担架に布を掛けて、第一階層ホールへと運んでもらった。

 ホールには夕方とあってそこそこ狩り帰りの冒険者が散見されていたので、第三階層に繋がる道へと入ってもらう。

「あ、ここでいいです。降ろしちゃって下さい」

 ティムにかけられていた布を取って、ティム本体を床に置く。『道具箱』から土を取り出して、身代わり人形(別に鼻は赤くない)を作って、ティムの代わりに担架へと乗せる。

「―――『成形』。じゃあ、これで馬車まで戻って下さい。私は処理をしたら戻りますので、それまで馬車内部で待機をお願いします」

「ああ、わかったさ」

 二人が了解して、土人形を担架に乗せて、馬車へと戻っていく。


「………………ぁぅ……」

 ティムが微かに反応する。

 私はその反応には目もくれず、襟首を掴んで第三階層へのシューターへ向かう。

 一瞬だけグラスアバターにチェンジ、第三階層シューター降り口付近には冒険者がいないことを確認する。今のところ、第三階層で狩り、と言える体制で迷宮攻略をしているのは、まだ数組といったところ。第四階層に到達するには相当な実力が必要だと思われる……。

 まあ、それはいいとして。

 シューターから第三階層へ降りると、近くにある隠し部屋へ入り、転送魔法陣を発動させた。



【王国暦122年7月11日 18:32】


 東北エリア第十階層は迷宮一階層がまるまる一部屋になっている。

 仕切りを付けていないだけ……で、危険な作業をやるにはうってつけの空間だ。

 その中央辺りに達磨状態のティムを置いて、全力で光系『治癒』を浴びせた。


「―――――『治癒』」

「………ぅ……?」


 モリモリモリ、ニョキニョキ………。冗談みたいな動きで手足の断面から肉が盛り上がり、赤味の差した手足が生える。色合い的には、元の世界の魚肉ソーセージみたいな。

 肉体の再生が終わると、魔力操作でティムの歪みまくった魔力を正常な……人間の形に……ゆっくり整えていく。

「……ぁ?」

「うん」

 肉体的、魔力的には正常だけど、だからといって精神的に正常なのかどうかは別問題なんだな。

「………………ぉぉ」

「ティム・カーン、聞こえますか?」

「ぅぅ……」

 駄目だな。精神はもう向こうの世界に行っちゃってるのかも。

「めいちゃん、先日第七階層に持って行った個体のうち、首と胴体が分かれてる女の不死者。あれをここに持ってこられる?」

『……可能です。……いますぐ実施しますか?』

「よろしく」

『……了解しました。……転送を開始します…………』


 しばらくすると、元アグネスが送られてきた。

 全身が白い陶器装備、片手に幅広の長剣、もう片手には頭部を抱いている。顔には『転写』によって、摩訶不思議な模様がプリントされている。

「これ、消すの面倒だなぁ……」

 ほとんど入れ墨だもんなぁ。でも、道場主と師範代の密な関係なら、模様があっても気付くかもしれない。

「ちょっと貸してね」

 アグネスの頭部を本体の方から奪い取る。

「…………ゃめて……」

 血液なんて循環してないのに、アグネスの頭部はカッと目を開いて、ぷるぷる、と震える唇からは、拒否の言葉が出た。気道もないのに不思議。あれ、意志も言語能力もあるなぁ。木偶人形だと思ってたんだけど? 魔力を送り込みながら生成したから、高度な不死者になってもおかしくはないけどさ。

「はい、これ」

 アグネスの頭部を、いまだ正気を取り戻さないティムにポン、と渡す。

「……………?」

 最初は不思議そうに頭部を見ていたティムの、目の焦点が徐々に合っていく。

「ぁぁ!?」

「………かぇして……」

 アグネスの本体の方が小走り(女性っぽい)にティムに駆け寄り、自分の頭部を奪い返した。

「えーと。あなたはアグネス?」

「……?」

 元アグネスは本体の方を捻った。首より上があったのなら、首を捻ったんだろうけど。


「ぁぐネす? アグ……ネス……? お……お嬢様?」

 ティムの口調が人間らしさを取り戻していく。

「お嬢様? お嬢様? なんですか? お嬢様!」

 おお、さすが長年連れ添った二人、あんな不気味なフェイスペイントをされていてもわかったみたいだ。

 でもでも、元アグネスの肉体に宿っている魂は、本人のものじゃない可能性が高いのだけど。


「お嬢様、その姿は………?」

「あー、ティム・カーンさん? 話せますか?」

「貴殿は……何者だ?」

 振り向いたティムの目には涙。そして、剣呑な空気を纏っている。

「私は迷宮管理者です。故あってアグネスさんを不死者に仕立てた張本人です。そして、貴方を治療した人間です」

「不死者……だと?」

 言語能力が戻ってきてるね。意思疎通が可能な程度には回復したね。正常かどうかは不明だけど。

「はい。私が回収したときには、もう死体だったんですよ。勿体ないので再利用させて頂きました」

「貴様………! 神を恐れぬ不遜な輩め……! お嬢様のこんな姿は見たくない。土に還してやってくれ」

「お断りします。彼女の肉体は私の魔力を使って修復したのです。首は繋がりませんでしたが」


 ティムの魔力が高まる。

「悪魔め! ―――『風刃』」

 ティムの周囲に生成された魔法陣に対して、私は手をかざす。と、魔法陣は形を崩して霧散した。土系魔法によって、魔力同士の結びつきを弱めたのだ。

《おや、器用なものじゃのう?》

《ああ、うん、真似させてもらったよ。まだ王都―――迷宮の中だから、隠れてて?》

 渋々、ノーム爺さんは引っ込んだ。

「無駄です。貴方は私の前では魔法は一切使えません。こんなものはスキルでも何でもないんですけどね」

「………………あの若造………ジュリアスのような事を言う……」

「それより、廃人状態だった貴方を、ここまで治療した私に言うことは無いんでしょうか。いや、別にお礼を強制しているわけじゃないんですが」

「謝意など……この状況で述べる訳がなかろう……。お嬢様を汚し、辱め、それを私に見せて何とする?」

 憤怒の表情。徒手空拳でも襲いかかってきそう。隙が出来るのを承知で、このまま話を続ける。


「ティムさんに訊きたいことがあったんですよ。ロリン・セクストンに会うように指示……したのは誰ですか?」

「ロリン……? ああ、そうだ、ロリンに会いに行った……。ウーゴから資金提供を受ける話があって……」

 ティムは記憶を掘り起こす作業に集中しだした。手も足も止まり、戦闘の意思が薄れていく。

「ウーゴ・ミルワード? 第一騎士団の副団長の?」

「ああ、魔術師ギルドからの()()を肩代わりするからと」

 ありがちな話だ。騎士団から資金提供を持ちかけただけで、実際には一ゴルドも出していないのは明白で、挙げ句にティムは殺されかかったわけか。

「それほどまでに道場が大事だった?」

「お嬢様を一人にはできなかった! 婚儀に選んだ男は全て他の道場の紐付きだった!」

「そんなにお嬢様が大事なら、貴方が結婚すればよかったじゃないですか?」

 ティムは一転、肩を落として、膝も落として、泣き始めた。まだ精神が不安定なのかな……。

「できない。それはできなかった。先代に駄目だと言われた。だから私は先代を…………」

 えっ、そういう話になっちゃうの? これが噂の超展開ですか!?


「殺した。私が殺したんだ。お嬢様は気付いていたかもしれない……。それなのに健気に、一緒に頑張ろうなんて言ってくれたんだ……」

 直接手を下したかどうかはわからないし、訊くつもりもない。ティムもなかなか罪深い人物だ。結婚を許可してくれなかったアグネスの父……道場主の先代を亡き者にしたのに、その罪の大きさを恐れて、アグネスに求婚もできなかったわけか。先代とやらの呪縛が生きているというより、先代が結婚を許さなかったのが正しい判断だったと証明してるだけじゃないの? ティム自身、それを認めたくなかったんだね。


 ティムは言葉を継いだ。

「だから自分が道場を盛り立てなければと思っていた。そこにポートマット騎士団の噂が耳に入ったんだ」

「あれ、誰かに言われたわけではない?」

「魔法ショップの親父から聞いた」

「……………?」

 しばし考える………。

 ああ!

 偽コンチ杖を売ってたお店か! ということは、その店に情報をもたらしただろうエイダが発端ってことになっちゃうか? いやもう、原因はどうでもいいんだ、こうなっちゃったら。発端の発端って私だし……。


「それでロリンに連絡をしてみたわけだね?」

「ああ、それをウーゴに悟られて……」

 またウーゴか。どこかにルーガちゃんでもいるのかね?

「ウーゴ・ミルワードとは何者?」

「一時期、ブリッジ道場に通っていた。門下生だ」

 なるほど、そういう繋がりがあったのか………。ウーゴが(ほの)めかしでティムを動かして、ポートマット騎士団、もしくはそれに深く関係している私を使って、魔術師ギルドに痛手を与えようとしたわけね。そこでウーゴとティムの関係を知られるのは困る、と。

「いいように使われたねぇ……」

 私は大きく溜息をついた。ティムも、私も、実にいいように動かされた。まあいい、これはいずれ取引材料にしよう。

「もう一件。ミラ・プラナーはこの件にどう関わっている?」

「ミラ……ミラ・プラナー……最初は利用しようと思ったが、食い付かなかった。利用できたのはロリンだけだ」


 ミラは無実ってことかなぁ。アーロンにも訊いてもらってるし、合わせれば全体像がわかるだろう。

「なるほどね」

「これから、私はどうなる? どうすればいい?」

「それは逆に訊きたいですね。ティム・カーン。貴方はどうしたいんですか?」

 ティムは固まった。わかりやすい思考停止だ。

「それじゃあ、私から提案しましょう。せっかく治療した人間を、と思うと滑稽かもしれませんが、不死者になり、魂が続く限り、貴方はアグネスを守り続ける。罪の意識を感じながら、アグネスに思いを伝えることは永遠にできないけれど」


 ティムはしばらく私を見つめた。決めかねているのか。

 そして、ティムは視線をアグネスに戻した。

 そのアグネスは――――――――。


「……………てぃ……ム?」

「! お嬢様!」

 おお、これが愛の奇跡というやつか。いやいや、このアグネス(デュラハン)お嬢様(アグネス)とは限らない。

「わかった。お嬢様のそばに……いられるのなら。どんな姿になっても、どんな存在になっても構わない」

 言い切ったね。短絡的だね。誘導が楽でいいわ。元々誘導されやすい人物なんだろうなぁ……。何だか哀れでフォローしたくなってくる。私って、根っから極悪人にはなり切れないなんだな……。


「このアグネスの不死者が、アグネス本人だと保証は出来ません。他の人の、薄汚れた魂が混じっているかも。まあ、再調整して最善は尽くしますが。ティムさんの方は、死んですぐに不死者になるので、ほぼ生前の意識と記憶が残ります。辛いですよ?」

「構わない。私だけがのうのうと生き恥を晒していられるはずもない。これは―――贖罪だ」

 はあ、ご立派なことですね。アグネスに伝わるといいですね。

「神様はいませんが、祈るといいでしょう。偶然の神様というやつに。―――『風刃』」

 スパッ、と。ティムの首と胴体を分けた。

 ドバッ、と血が吹き出る。


「めいちゃん、人工魔核を二つ、持ってきてください。袋は無印で、中くらいのやつ」

『……了解しました、マスター』

 血抜きが終わり、ティムの命が尽きたのを確認して、不死者として再生させる。


「―――『不死者生成』」

 首を繋いで、魔力を送り込み続ける。ミチミチミチ……と首が繋がり、死んだ肉体がピクピク、と動き出す。

「あ……ガフッ」

 喉に詰まっていた血を吐き出すティム。青白い顔とどす黒い血がいかにも死人。


「ティム・カーン。私は誰でしょう?」

「ゴホッ、貴方様は私のマスターです」

 あれ、喉の接合に失敗したかな? しゃがれ声になっちゃった。

「生前の記憶はある?」

「はい、マスター。私は生前、ブリッジ道場の師範代でした。先代を死に追いやり、一粒種のお嬢様も守れなかった罪人です」

「そうだね。悪い子だね。ティム、君は誰を守らなければならない?」

「マスターをお守りするのが使命です」

「よし。二番目に迷宮、三番目が、そこにいるアグネスお嬢様だね」

「はい、マスター。マスターの次に迷宮を守護します。その次にアグネスを守ります」

 お嬢様、じゃなくなってるな。無意識ではそう呼んでたんだろうな。一人の女性として見てたんだろうね。


『マスター、人工魔核をお持ちしました』

 グラスメイドが人工魔核を持ってきてくれた。

「ありがとう。じゃあ、バージョンアップといきましょうか。―――『魔物使役』」

 魔核に私の紋を刻む。


 その魔核を、新鮮な不死者であるティムの肉体に埋め込んでいく。胸でいいよね。

「ぐっ………」

「我慢、我慢。―――『魔力制御』」

 歪みを整える。大体……こんな形だったかな。アバウトに人間っぽい形になればいいか(いい加減)。

 魔力を操作して、ティム・カーンを生前の姿に調整していく。

 うん、もう四回目だし…………慣れたかなぁ。

「よし、できた。再生人間(リヒューマン)の完成」

 よく考えたら、この新種族(?)って、迷宮スキルと、不死者生成スキルの両方を持っていないと生成不可能だよなぁ。


「いき……返った?」

 目をパチパチ、とさせてティムが呆ける。

「いや、多分、正確には、人型の魔物になった」

 私の感覚ではそう。

「魔物……」

「うん、それで、私がマスターなのも変わりない。命令順序にも変わりない。いい?」

「はい、マスター」

 しゃがれ声は消えて、顔色以外は、元のティムと変わらないように見える。むしろ、やや落ち着いた印象さえある。


「じゃあ、思い人の方も再調整してみようか」

 おそらく、リヒューマンは、全ての不死者に対して施術可能だろうと思う。ただ、不死者の持つ高度な隠密性(体温がない、呼吸音がない)は失われるから、ケースバイケースで使えばいいと思う。生産性、判断能力は、もちろん段違いでリヒューマンの方が上。おそらく、攻撃能力もリヒューマンに軍配が上がる。ケリーたちがそうだったように、人間と変わらず魔力を扱い、スキルを習得する。たぶん―――マスターになってる存在にスキル習得は影響を受ける。ケリーたち、君らがなかなか精霊魔法を覚えられなかったのは、私のせいだ。ごめんだなんて思わないけどさ。この説はたとえば、ヴァンパイアが眷属を作った時、眷属はマスターに影響される……というのと似ている。というか同じじゃなかろうか。

 今、私がしたことは、眷属を作ってる以外の何物でもない。


 アグネスの方は、無事に首と胴が繋がった。デュラハンから卒業した。

 だけれども、知性らしいものは戻らなかった。時間が経った不死者では難しいのかもね。

「まあ、アグネスの魂が入っているなら、そのうち思い出すでしょう。全然別の人の記憶が蘇るかもしれないけど」

「はぁ、そうですか」

 ティムの方は不思議なことに、アグネスへの執着がなくなったように見受けられた。(マスター)に命じられているから気に掛ける、と言った風情だ。


 ティムには顔を隠すフルフェイスの兜、胸当てと籠手、白いローブを用意した。アグネスの方も兜を新調して、ローブを着用させた。二人とも呼吸自体はしているので、漏れる息がコーホー、コーホーと言っている。

《ノーム爺さん、黒い装備は作れなかったの?》

《調色すれば可能じゃが……ここにある材料だけだと白か灰色が精一杯じゃの?》

「残念」

 暗黒卿はいつか再現してやろう。


「めいちゃん、この二体はしばらく、南東、南西の第六階層で監視。養蜂と農業やらせて」

『……了解しました、マスター』

 あ、養蜂やらせるなら、白装束でよかったんだな。奇しくも正解だったということにしておこう。暗黒卿は蜂に弱いはずだから。


「それじゃあ……ティム、って呼ぶのは都合が悪いかな。カーン……カーンといえばパンチングゴールの人だから……。君は今から個体名『オリバー』ね」

「はい、私は、『オリバー』を名乗ります」

「アグネスの方は……アグネスといえばチャンか……ラムか……直接的過ぎるな……。ブリッジ……トランプか……よし、君は『フリーセル』」

「…………………」

 アグネス改め『フリーセル』は……自らに付けられたドキュンネームに反応を示さず……いや、少しだけ頷いたか。

 ふう、いい名前決めだった。


『……個体名『オリバー』及び『フリーセル』、登録しました』

 めいちゃんが律儀に反応してくれた。コンピュータが人類を救う、一つの事例を見た気がした。



【王国暦122年7月11日 20:45】


「ただいま」

 迷宮を出るところで自分に『洗浄』『浄化』をしておく。健常な人間を殺して不死者にして、手駒(農作業従事)にしてきたのだ。死臭をつけたまま帰路に着くわけにはいかない。

「おかえり。もういいのか?」

 暗がりに輝く金髪が恨めしい……けど、フレデリカが心配してくれてるのは素直に嬉しいし、ありがたい。

「うん、終わったよ」

「お疲れ様」

 馬車の中から、フレデリカの細い手が伸びてきて、私はその手を握ると、力強く引き上げられた。

「と、と。ありがと」

「いいぞ、出してくれ」

 御者さんに言うと、馬車は静かに走り出した。

 カレンとシェミーは黙ってこちらを見て、軽く頷いた。

 土塊で作ったティム人形は健在。こちらの戦闘能力を知っているだろう、ファリス率いる第一騎士団がティムの奪還を画策してくるかどうか。

「賢明な集団なら襲撃はないとみるわ」

「馬鹿なら、貴族魂も矜恃もボロボロになるくらい、酷い目に遭わせてやるさ」

 二人とも楽しそう。

「私も襲撃はない、と思いますね」

 走る馬車の中で座るポジションを決めると、頤を上げて、カレン、シェミー、フレデリカを見回してから言った。三人とも私より大きいから、話す時は大変だ。

「一応、あるつもりで備えよう。馬の休憩は必要だが……」

「わかってる、『治癒』連発するよ」


 私の想像……王都騎士団が暗躍している……というのは、ウーゴが不穏なことを言ったことで、推測に補強がされていた。迷宮から、ポートマット街道(ポートマットで言う北街道)に出るには、第四層の壁に沿って、ロンデニオンの外周を走ることになる。つまり道こそ整備されているものの、ここは第五層(市外)であり、騎士団の警察権限で止められることはないにせよ、襲撃そのものは受ける可能性がある。ロンデニオンであってロンデニオンではないから、第五層の住民バガボンドにどれだけ被害があろうと騎士団、ロンデニオン市が関知するものではない。ただし、住民感情に火を着けるのは明らかで、ロンデニオンの底辺産業、その労働力のほとんど―――が第五層の住民から得られていることを考えると、可能性は五分五分といったところか。


「北街道に入れたさ」

 淡い街灯の光の中、馬車が右折する。グリテンでは左側通行なので、右折は毎回注意が必要だ。

「ん? 背後に騎馬隊がいるわ」

 シェミーが声を上げる。

「近づいてくる感じではないけど……様子を窺っている感じか」

 尾行、というには騒々しい。監視のために、という感じだ。

 馬車の足を速めても怪しまれるし、遅すぎれば接触する機会を与えてしまう。

土人形(コレ)、始末しましょうか」

 布に包まれた人形を指差す。

「途中で燃やすにしても骨くらい残るしなぁ……」

「骨なんかない、となれば生存疑惑に繋がるわ」

「じゃあ、()()()に捨てにいきましょう。確実に燃え尽きて、多分誰も行かない、あそこへ」

「ああ!」

「うん?」

 私の提案にカレンとシェミーは掌を打ち、フレデリカには何のことだかわからなかったようだ。

「とにかくまっすぐ。ターム川渡って、もうちょっと行った先まで」

 それまで速度を保つように、と伝えた。



――――ヒタヒタと迫る騎馬隊……。いや、カポカポと迫っているか……。





主人公の名付けセンスが………(汗)。


カーンといえばチャカ・カーンだったかもしれない。キラー・カーンだったか?

もう一方のアグネスの連想も古すぎる……。

あ、あの、これ、主人公のネーミングセンスですからね?

作者のネーミングセンス…………じゃないということにしておいて下さい……。 


あ、フリーセルは一日一回まで、ということにしました!(割烹参照)

※その後、プログラム自体を削除しました(笑)。


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