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異世界でカボチャプリン  作者: マーブル
ここ掘れ迷宮
207/870

迷宮の襲撃2


【王国暦122年4月12日 3:13】


 王都西迷宮のグラスアバターに意識チェンジ。グラスメイド四体(初期配置の四体だ)がグラスアバターのそばに待機していた。


「ただいま」

『……お帰りなさい、マスター』

 抑揚のない声で、めいちゃんが挨拶をする。

「状況の報告を」

『……了解しました。……現在、敵性と思われる魔物、推定三百体が北上中、当迷宮に向けて進行中です。……脅威が判明したのは()()()()です。……おおよそ三時間後には当迷宮に接触すると推定されます』

 三時間か。こっちから魔物を展開して迎撃可能かしら。


「現在迷宮にいる冒険者にアナウンス。緊急事態を宣言、即時迷宮から離脱……北方向に離れるように、と。戦闘中の魔物を撤退させて。第三階層以下に冒険者はいないね?」

『……了解しました。……了解しました。……現在、第三階層を攻略中の冒険者はゼロ、です』

「よし、現段階で第三階層以降を閉鎖。冒険者の撤退確認後、迷宮を全閉鎖」

『……了解しました。……了解しました』

「閣下を二体準備。撤退に応じない冒険者がいたら、閣下を派遣、脅して撤退させて」

『……了解しました。……了解しました。……第三階層以降の閉鎖を完了しました』

「オーク、ミノタウロスはどのくらい出せる?」

『……編成済みの二個大隊、合計四個大隊が出撃可能です』

 四百体か。数の上では圧倒できるだろうけど、向こうにタロスがいるとやっかいだなぁ。

「四個大隊を出撃。ワルドナーを大将にして指揮を執らせて。実際に指示を出さなくてもいいから、そのように設定して。あとは、ハーメルン、ジャイアントモックも出して、敵戦力を攪乱させて」

『……了解しました。……了解しました。……了解しました。……了解しました。第一階層、第二階層の冒険者、撤退開始を確認』


 なるべく短い指示で編成して、周辺の町に被害を出さず、オート進行で処理しなければならない。

「迷宮内部の冒険者撤退は最後まで監視よろしく。迷宮入り口の周辺にいる人たちに向けても警告アナウンスを。即時迷宮から離脱せよ、騎士団にも伝えてくれ、王都を守れ、と」

『……了解しました。……了解しました。……了解しました』


 あとは―――。

「各魔物の地上転送が終了次第、南方向へ進軍開始。可能な限り、戦闘対象を敵性――――ウィザー城西迷宮管理下――――の魔物に限定。アダタ山の高いところに布陣できたら防御に徹して。そこに布陣できなければ後退しつつウチの迷宮近辺で殲滅。スキルで『魔力吸収』が使えるのはいる?」

『……サウザンアイランドスライム、グリーンプレーンスライムが投入可能です』

「では、その二体は投入準備を。敵巨大アバター(タロスシリーズ)が発見されたらスライムを当てて、『魔力吸収』をして足止めを。攻撃魔法は恐らく『魔力吸収』されちゃうから効果が低い。ジャイアントモックが対峙して、物理的に壊せるならやってみて」

『……了解しました。……了解しました。……了解しました。……スライムの搬出を開始します……完了しました。……了解しました』

「以上、行動開始せよ」

『……了解しました、マスター』

 よし、戻ろう……。



【王国暦122年4月12日 3:30】


「ふう」

 まだ魔力切れにはなってない。ここのところ通信端末の部品を限界ギリギリまで作っているのも幸いしたか。

 それでも本体に戻って早々、魔力回復ポーションをグビッと一本飲む。

「ゲフッ………。こちらの状況はどう?」

 ラナたんに訊く。私の男らしいゲップはスルーしてくれたようだ。

「まだ……接敵していません」

 ザンに一報を入れておこう。『王都西迷宮が迎撃に出ているようだ、危ないから近寄るな、魔物が王都に入らないように牽制してくれ(意訳)』と。


 短文の送信後、アクティブに『気配探知』スキルを使用。

「―――『気配探知』」

 百とか言ってたけど、これは二百以上いるんじゃないかな? 幸いなのは大物が少ないことか。

 フェイにも短文を打っておく。

『王都西迷宮は迎撃に動き出した模様。こちらは骨による奇襲を受けたが撃退。敵集団は小物が二百強、まだ接触しておらず。応援求む』



【王国暦122年4月12日 3:51】


「来たぞ!」

 見張りの声がする。『道具箱』から雷の杖を出して、光球を二つ召喚してから浴槽に出る。

「みんなは穴からなるべく出ないで、固まって防御に徹して。()()()()で戦っているのは手出ししないで放置ね」

「はい!」

「わかった!」

 見張りに出ていた『第四班』の全員が穴に入ったのを確認。


「―――『魔物使役』」

 視界に入った魔物に(マーカー)がついていく。当たり前だけど、このマーカーは私の視界に()()()()見えるだけ。

 よし、先鋒のワーウルフは私の支配下になった。

「我を守れ! 逆らうモノは排除せよ! ―――『魔物使役』! 我に従え!」


ギャワワワン!


 先鋒はワーウルフ部隊が主力だったようで、低レベルなのもあってあっさり配下になった。今の私、ビーストテイマーだわ。

 配下になったワーウルフは私を背にして、元仲間を迎え撃つ。


「二体一組で敵一体に当たれ!」

 言葉は通じないと思うけど、意志は伝わっているのがわかる。『意思伝達』スキルだ。

「そこの集団は山側に回れ! ―――『魔物使役』! 獣よ、我が軍門に下れ!」

 先鋒のワーウルフだけで百五十、もしかしたら二百はいる。奥にもまだいる………。

「―――『気配探知』」

 うわ、ウジャウジャいるな。ゴブリンじゃないな、これは……オークだかミノタウロスだ。

「狼どもは狼に当たれ! ―――『発電』『蓄電』」

 密集しているところに向けて軽く威嚇しよう。足を止めてしまえばいい。


「―――『サンダーブレ○ク』!」

 半分ほどのチャージで雷を発動。

「…………?」

 着弾が予想よりも左に逸れて、爆発音が二回聞こえた。

 弾かれたのか!

 小癪な……。しかし、あれほどの雷撃を弾くとなると、オークやミノタウロスに『障壁』を張れるほどのスキルの持ち主でも? 王都西(ウチ)の迷宮みたいに『シャーマン』『マジシャン』派生の魔物がいたりするのか?

 いや、最も現実的な答えは――――着弾予定地点にタロスがいたのだ。

 タロスが発する魔力は小さく、『気配探知』ではオークやミノタウロスと見分けが付かない。


「!」

 閃光が走る。


「―――『障壁』」

 オーブにも指示を出して同じように『障壁』を張る。

 バン、バン、バン! と障壁が破れる音。魔力を使い果たして二つの光球が消滅する。

 なに、これ、光弾? 粒子ビーム? 狙撃? 馬鹿な!

 全身の産毛が逆立ったような感覚。


 こちらからの攻撃は位置を知らせてしまう。急いで位置を変える。

「―――『魔物使役』」

 動きながら―――やはりミノタウロスだった―――を配下に治めて、元仲間を攻撃させていく。


 再度光弾!

「んがっ!」

 残っていた闇球の『障壁』が発動した。それで軌道がズレて、私への直撃を避ける。闇球も消滅。

 あっぶな!

 くっそ、位置がバレてる!

 こっちからは見えない。忌々しい()め!

 姿勢を低くしつつ動きまくり、戦況を確認する。

 ワーウルフ同士の戦闘はほぼ終了、共食いしまくったようで、配下が二十匹ほど残り。ミノタウロスは百体ほどいたか。ほぼ二分した形になって、未だ戦闘中。他に強力な魔物は……。


カッ


 空が光った。

「―――『蓄電』」

 杖を立てて地面に突き刺す!


ドーン!


 雷が、雷の杖に着弾!

 うおおお、ビリビリくるぅう!

 髪の毛が逆立つ。なんてエネルギーだ。これは……エレクトリックサンダーか!

 いつまでも蓄電状態だと動けない。杖に溜まった電気を解放しよう。お返しだっ!


「―――『サンダーブレ○ク』」

 敵タロスは同じ位置にいるわけがない。だから少しずらした場所に向けて雷撃!


カカッ!


 すぐに待避!

 地面に伏せる!

 光弾が頭の上を通過していった。

 恐ろしく狙いが正確だ。というか当てずっぽじゃ駄目か……。

 これは近づけない。かといって、このままじゃ向こうの位置が特定できない。

 うん、だけど一つわかったことがある。

 光弾は射撃速度が速すぎて、ほとんど直線だということ。そりゃ、多少は重力に影響されるだろうけど、曲射は考えなくていい、と見た。

 判断が間違っているかもしれないけれど……。

 そのときは―――死だ。


 死?

 馬鹿な。

 この私が?


 また空が光る。

 エレクトリックサンダーは複数体いるのは間違いない。

 他にも凶悪な魔物がいるかもしれない。

「―――『遠見』」

 雷撃が放たれる方向は大体把握している。

 いた。

 トゲトゲの、雷の獣。

 問題は距離だけど―――――。


「―――『魔物使役』」

 従え! 我に従え!


 …………よし、マーカーがついた。

 使役に成功!

 続けてもう一体!

「―――『魔物使役』」

 これも成功。


 これで敵の重要な戦力は奪い、我が物となった。

 無防備な同族を殺せ!

 私に徒なすモノを殲滅せよ!


 そこにまたまた光弾!

「!」

 私は地べたに這うようにしゃがみ込む。

 光弾を回避。しつこいな!


 っていうかどうして今頃になってウィザー城西迷宮の連中―――いや、魔術師ギルドは攻めてきた?

 身を屈めて後退しつつ考える。

 背後には浴槽と石柱が。

 遺跡――――。

 そうか。

 ()()迷宮が欲しかったのか。


「小さい隊長!」

「くるな!」

 ラナたんが浴槽脇の穴から首を出している。

 叫んで――――。

 振り向くと―――。

 光弾が目の前にあった。



 しまった、光球を出しておけばよかった―――。

 こんなところで死んじゃうのか。

 ああ、ドロシー、ごめん……走馬燈って本当にあるんだな……。

「バリア……」



―――走馬燈では出会う人に謝ってばかり。





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