錠剤の試作
【王国暦122年3月13日 9:45】
仮眠から起きると、半ば強制的に本部長室に連れて行かれた。
ブリジットが熱いハーブティーを淹れてくれたので、啜りながら話をする。ちなみに、お茶を啜るのは、グリテンではマナー違反になるけど気にしない人も多い。貴族を相手にしているときくらいしか守らない人がほとんじゃないかしら。
「今朝? はご苦労だった。いつまで王都にいるんだ?」
「明日にエイダ姉妹のお宅にお邪魔をする予定になっていますので、明後日にはポートマットに戻ろうかと思います」
迷宮の方はまあまあ安定しているようだし、長期離脱に備えて掘ったり、掘ったり……あとは幾つか魔道具の試作もしなきゃいけない。
「そうか」
ザンもズズッとお茶を啜った。
「姫様の容態は気になりますけど、急激に悪化することはないでしょう。緊急の時は呼んで頂ければ」
私本体が大陸の港に行ってるかもしれないけど、その時は運がなかったと諦めてもらおう。
「それよりもですね、姫様のオピウム中毒の件は、遅かれ早かれ広まってしまうでしょう。当然ながら行政側は対策の必要性に迫られることになると思います。一番簡単で発布しやすいのは、日光草の採取を規制することでしょう。つまり、遠からず取り締まりの対象になる可能性があります。冒険者ギルドとしても、日光草対策を考えた方がいいかもしれません」
ザンとブリジットは同時に唸った。
「まあ、順当ではあるがな……拙速ではあるが……」
「しかし困りましたね。体力回復ポーションが使えないとなると……」
「ポートマットでは既に対策を進めていますが……」
「ずるいな」
「ずるいですね」
ジト目で見られるけど、想定できない方が悪い。トーマス商店はこれから暴利を貪るのだ。
「それじゃ、私はこれで……まだやることがありますので……。お茶、ごちそうさまでした。美味しかったです」
情報を流した。報告はした。義務は果たした。ということで逃げようとしたのだけれども…………。
「待て。ドワーフの娘。お前、どこに泊まっているんだ?」
「気になりますね」
二人の舌鋒は鋭い。
「その辺で適当に……」
「ふうん。地元では知らんが、お前、自分の二つ名、知ってるか?」
「え? あるんですか?」
「上級になると通り名みたいなモノはできますからね。『魔女』でしたっけ?」
「俺が聞いたのは『夜叉猿』だな」
何だよ、方向性が違うじゃないか。
「二つ名って複数あるものなんですか……?」
「む……こういうのはやがて統一されていくんだ」
ザンは威張りながら見解の相違を誤魔化した。
「となると『夜叉女』とか『魔女猿』? 『日光草』とか『月光草』っていうのも聞きましたよ?」
「じゃあ『日光夜叉猿』だな」
やめろよっ! 軍団みたいじゃないか!
「サルから離れてください……何でもいいですから……」
「まあ、危険人物だってことだ。俺とかブリジットでも、王都を離れる時は所在を報告してるぞ?」
私の行動を合法的に監視したいわけかぁ……。理解はできるけど同意はしかねるなぁ。でも相手は本部長だしなぁ。ある意味最後通牒みたいなものだ。
「わかりました。どこかお安い宿があれば紹介をお願いします」
「安ければいいのか……? うーん、ブリジット、適当なところを紹介してやってくれ」
ブリジットは一瞬だけ思案顔を作り、
「わかりました。いきましょうか」
と、席を立って私を連れ出した。
途中の朝市で野菜やら肉やら、スパイスや紅茶(戦後すぐだというのに王都には普通に出回っていた。憎たらしいね)を買い求め、ブリジットに付いていく。
「こちらです」
実に事情を汲んでいるというか、ブリジットは三層西側にある宿を紹介してくれた。
「あまり治安が悪すぎるのも問題でしょうし、良すぎても勿体ないでしょう?」
「はぁ」
と、私は曖昧に返事をすることしか出来ない。事情を汲みすぎていてツッコミが追いつかない。
「ここですね。『黄金虫亭』です」
うわ、虫な予感しかしないな……。
スタスタ、と店内に入り、店員と交渉をしているブリジットから視線を外して、朝昼兼用で食事をしている人たちを見ると、やはり………。
「ここは甲虫の揚げ物が名物の宿なんですよ」
ニッコリされた。笑顔の押し売りだ。
「ブリさんの仕事仲間ですってね。冒険者さんね」
さあさあ座った、お通しだよ、と店員さんに言われて、デン、とテーブルに置かれたのは、小さな甲虫の素揚げだった。
うん、香ばしい匂いがする。少し赤っぽくなるところはまさに海老。
さあ、食べて食べて! と店員さんとブリジットの目が訴えてくる。
丸々太った小型の甲虫を手に取って一口。
サクッと、パリッと、クニュッと。
「うん、美味しい。あれ、苦みが少ない……?」
「そうでしょうそうでしょう……」
ブリジットは我が意を得たりと笑いながらエールを注文していた。仕事中じゃななかったのかな……。でも本部長が昼食時にも軽いアルコールを欠かさない人だから、秘書もそうなっちゃった、というのは説得力のある話だ。
この店員さんはグリーンさんというのだけど、名字は蛾ではないし、髪の毛も緑じゃなくて赤毛っぽい。そのグリーンさん曰く、ここで使われている虫は養殖ものが多くて清潔で品質がいいのだ、と自慢をされた。よく考えてみれば、養殖のメリットは、数が揃えやすく安定供給できるというだけで、衛生的、味的(これはエサに依るかもしれない)に何か決定的な差があるわけではない。むしろ手足を取るという手間をかけているかどうか、という点の方が味に影響が出ている気がする。あとは糞を出し切るかどうか(これは『コク』だと言い切る人もいるので一概に言えないけど)も味に違いが出る。
「私は果実水ください。他に何ができますか?」
グリーンはよく見ればブリジットと同じ魔族、バランで、店内も心なしか魔族の人が多い気がする。虫メニューが多いせいか、会話の声に混じって、シャクシャク、という音が時々入る。
「鎌蜂の素揚げと花の温サラダなんかどうだい?」
「お願いします」
鎌蜂ってなんじゃらほい……。面白そうな物が出てきそうだなぁ。
前に行った高級ゲテ料理店もいいけど、こういう大衆ゲテ料理もいいいね。店の名前の通り、何が名物なのか、安直でわかりやすいなぁ。
小腹が空いていたのもあって、甲虫の素揚げはスナックに丁度良い。
「はい、お待たせ」
鎌蜂とは………カマキリモドキだ。鎌がボクサーみたいに下から開く蝶番になってるんだなぁ。へぇへぇ。元の世界でもあんまり見たことなかったんだけどな。ここで十匹くらい重なってるのを見ると何だか得した気分になる。うん、確かに翅とか下半身は蜂っぽい。
味は………昆虫食は案外同じような味になるんだけど(酸味が強いとか食感とか、そのくらいしか差が無いような気がする)、ちょっと腹部にジャリッとした感触が残って、そんなに美味しいものではなかった。
しかし、これってまるきり合成生物だよなぁ。そういえば遺伝子をいじるスキルがあったし、迷宮の培養施設を使ったら、何か有用な生物が生み出せるのでは……。その場合は昆虫同士とかの方がいいか。カマキリなんてベースには丁度良いよなぁ……。カマキリとカブトムシのハイブリッドとか……つ、強そうだな! カマトムシ……いやカブキリ? ああ、発想がザンとブリジットと同じだ。
ちょっと自己嫌悪しながらもう一つの皿を見る。花の温サラダの花は、どこかで見たことがあると思ったら、フラワーサースの花だった。これは冬虫夏草並にレア食材じゃないかい?
「この花、この辺りで採取できるものなんですか?」
グリーンに訊いてみる。
「ううん。東迷宮で採れるんだよ。ブリさんの紹介だからね、こういうの喜ぶだろうと思ってね」
「へぇ~~」
生食だけじゃなくて、こういう食べ方もあるのか。食感はまるきりお浸しだけど。これはちゃんと醤油がかかっていた。元の世界の日本人が持ち込んだ食文化かもしれない。東迷宮は敵情視察の意味でも一度行ってみたいな。
「ふう、美味しかった。魔術師殿、宿代はギルドの方で三日分出してあります。その後の延長はご自分でお願いできますか?」
「ありがとうございます。ブリジットさんは本部に戻りですか?」
「そうなりますね。自分の部屋に戻れない生活が続いています」
苦笑するブリジットには、しなやかさが戻ってきているのでちょっと安心する。うん、そっちの方が格好いいわね。
【王国暦122年3月13日 11:58】
ブリジットが冒険者ギルドに戻り、私も部屋に(一応、泊まることになってるし)案内してもらう。
地味でシンプル、高級でも低級でもない調度品、印象の薄い部屋だったけれども、キチン(さすが甲虫料理が名物だ)と掃除が行き届いている。好感の持てる宿だ。
「ウチは元々西迷宮に入る人目当てで始めた宿だからさ。それが、この二~三日はえらく混んでて大繁盛だね。もっとも………帰ってこなかった人もいたけどね」
スムーズに部屋が取れたのは、そういう訳があったのか。
「そういう訳で、外に行くときは、迷宮に行く時もだけど、一応宿の者に言ってくれると助かるね。お客さんは荷物が無いみたいだけど」
ははっ、とグリーンは笑った。
【王国暦122年3月13日 13:20】
宿屋からの道中、途中で『隠蔽』をかけて、入り口に到着すると、入り口の構造物の上に立ち、『計算機』の隣に、ウィザー城西迷宮の物と同様の増幅装置を設置しておいた。これで学術都市ノックス辺り、上手くすればノックス領地の領都、ブリストまでは短文の送信が行えるだろう。
うん、ちょっとこんがらがるけど、領地の名前が『ノックス』で、その領都が『ブリスト』、ノックス領地の第二の都市が、学術都市『ノックス』だ。どうして『学術都市』が頭に付くのかは行ったことがないのでわからない。学術都市ノックスは比較的新しい、ここ百年以内に建設された街で、住民数はポートマットより少し少ないくらい。それを考えると急拡大していると言える。
まあ、そんなことはおいておいて、『隠蔽』が切れる前に裏口から迷宮内部へ入る。
第十二階層に到着して、中央管理室に入ると、まずは迷宮内部の状況を確認する。
迷宮リニューアルからまる二日が経って、第二階層への到達者も増えてきたようだ。だけど第一階層でも未踏の場所があったりして、バランスが取れているとはいえない。第二階層に到達しているのは南東エリアだけで、北西と南西(南西が確かに第二階層まで一番遠い)は途中にいる、凶悪なゴブリン&ワーウルフに手こずっている。
死亡者は微増、と言った感じ。第一階層の魔物補給も過剰にはしていないので、初心者が安心して狩れるようにはなったか。
遺品販売は、思い入れがあったのか、五倍即決という値段設定でも案外引き取られていくようだ。合計で二百九十三個(武器と防具は個別にカウントしている)の遺品中、捌けたのは三十二個。残り二百六十一個の遺品のうち、現在十個が展示されていて、二百五十一個は展示待ち。システムとしては上手く回っているかな。ちなみに、遺品ではあるけれども再販売に耐えられないと判断されたのが七十八個あった。これはいずれ鋳潰して再利用しようと思う。
第三階層、第四階層の新規エリアを見に行く。
第三階層の南東と南西は迷路までほぼ設置完了。第四階層は演習区域ということで、床に石を貼ったあとに、また土を被せておくように指示を出した。深めに掘削しているから丁度良いかな。どうせ集団模擬戦を何百年も繰り返して、踏み固められていくだろうけど。
第三階層と第四階層の魔物配置についてもここで決めておく。
普段は第四階層北東エリア(現在唯一の第四階層)から、百匹単位でローテーションを行う。ミノ軍とオーク軍に分かれて模擬戦(殺傷しても良い)を行い、軍事行動の練度を上げて貰う。
第三階層の新設エリア(南東と南西)は、現第四階層と同様の扱いにして、こちらもローテーションを行う。第三階層南東はミノタウロスだけ、南西はオークだけ、にしておこう。第三階層と第四階層の北東エリアだけがミックスゾーンということになる。
有事防衛シフト時にはルートを変更、この模擬戦ゾーンを二つ通過しないと下の階層にいけないようにする。騎士団などが集団で攻めてきたときのための対応だ。この時の培養槽は、ミノ、オークを中心に増備することになるかな。
土木作業に従事しているミノ、オークの手が空いたので、さらに階層を深めていくことにする。
第五階層、第六階層を二エリアずつ掘る。この作業そのものは別に魔物土木軍団に任せてもいいんだけど、私自身が掘った方が明らかに効率がいい。第五階層は上の第四階層が深めに掘られているしわ寄せがくるのだけど、元々第五階層、第六階層はジャングルやサバンナを模していることもあって深めに取られている。
そのため、第五階層の深さを微調整するだけで済んだ。第五階層、第六階層は北東と同じく石床に土を被せて処理をする。
なお、第五階層南東、南西エリアは実験農場を予定。第六階層は北東エリアと同じくジャングルにする予定。どれをどうするかは曖昧だけど、迷宮っぽくない感じにはなると思う。
この四エリアには、太陽光の代用となる照明として、大がかりな『光球』を発生させる魔法陣を作っておいた。一エリアに三つの魔法陣があり、時間経過で一つずつ発動魔法陣をずらして太陽の運行を再現する。
雨の代用は少し頭を捻った。『飲料水』は周囲の水分を集めるだけなので、水を撒こうとする場所からも水分を抜いてしまう。現・第五階層、第六階層はどうなっているのかと調べてみたら、上の階層から取水して(その時点で微妙に養分が混じるみたいだ)貯水タンクに一度貯めて、散水する仕組みになっていた。これを参考にして、第三階層から取水、貯水、第五階層、第六階層で散水をする仕組みを作った。石のトンネルとプールを途中に作ったんだけど、もう少し潤沢に水分が得られる方法があればなぁ……。
まあ、第五階層、第六階層の植物は、ミノ汁とオーク汁で育つということで。出汁が効いてそうで、そのうちB級グルメ選手権に出てきそうだよね。
【王国暦122年3月13日 19:15】
あとの土木工事はミノさんオクさんに任せて、第十二階層へ戻る。
「ふう」
ここに来てからも土木しかやってないような気がする……。
迷宮への侵入者たる冒険者たちの動向はといえば、第二階層への侵攻は一進一退といったところ。第一階層はじわじわ未踏エリアが減ってきてる。こうやって、徐々に迷宮は攻略されていくのだろう。
迷宮は、冒険者たちの好奇心や冒険心、功名心を満足させる場所であると同時に、魔核を採取する牧場という実利的な一面もある。一見、この牧場への入場は無料だと思われているかもしれないけれど、実際には冒険者たちの命が対価だ(他にじわじわ魔力を貰ってるけど)。本当に無料より高いものはないことを教えてくれる。世知辛いわね。
夕食はどうしようかな……。『黄金虫亭』に戻ってもいいけど、やることやっちゃおう。
工房へ移動する。ポーション問題はとっかかりだけでもやっておこう。喫緊の問題になる可能性がありそうだから。
まず、普通に体力回復ポーションを作る。日光草の葉は常備しているから、材料には事欠かない。私、歩く素材倉庫だしね……。
体力回復ポーションの薬効成分は日光草からしか得られないんだけど、他に入れてるのは味の調整だったり、安定剤だったりするので、実質日光草だけがあればポーションは作れる。
二十分も掻き混ぜ続けると、小分けする前の体力回復ポーションが、大鍋一杯に出来上がる。薬効は上級相当。
今回はテストなので……小規模に行こう。
三十センチ四方の大きさで銅製の箱を作る。
これに金属製の管を作って繋げる。
管の出口は細かい穴を空けて、スプレー状に箱の中に散布する形にしておく。このままじゃ乾燥した粉にはならないのは明白(多少は水分が抜けてるけど、基本的に気化で冷えてるだけ)だから、箱の外側に『凝水』の魔法陣を描く。『飲料水』でもいいんだけど、水分量の調整は『凝水』の方がしやすい。
漏斗から管にポーション原液を流し込み、風系魔法で加圧しながら箱の中に押し込む。右手に管、左手は『凝水』の魔法陣に手を添える。
「ふんっ」
おお、ちゃんと脱水できて粉になった。
箱に霜が降りている。となると、箱を直接触れる事態は避けた方がよさそう。
手袋をはめて箱を開けて、刷毛でポーション粉を集める。
「うーん?」
粉を指で固めてみる。
けど、サラサラ過ぎて錠剤の形にはならない。
「―――『固化』」
魔法で強引に固めてみる。一応……元の世界にあったような錠剤の形になる。
真っ赤な錠剤は実におどろおどろしい。
この状態の錠剤を鑑定してみると……。
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【体力回復ポーション(低級)】
微弱な体力回復効果がある。
※乾燥状態
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「ん~?」
上級ポーションを乾燥させたものが低級? どこかで薬効が抜けてる?
管に流した時か、霧状にした時か、凝水して乾燥させているときか、錠剤に固めた時か。
この四工程のうちのどれか。
『凝水』を使わず、管に流して霧状にしてみる。
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【体力回復ポーション(上級)】
体力回復効果がある。
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粉……というよりベッチョリした顆粒……ができた。
これを鑑定すると上級だった。
さらに『凝水』して乾燥させると中級に落ちた。
さらにさらに『固化』で固めると低級になった。
薬効は魔力の滞留具合次第だから、魔力が抜けた、と言っていいのか。
「うーん」
『凝水』がネックなのか。
なら、ちょっと視点を変えてみよう。
『凝水』の魔法陣の刻印を埋めて、『点火』を刻む。
魔核を付けて、『点火』を継続させて銅箱を加熱する。うーん、わかんないけど二百度くらい? 温度計があるといいんだけど、この世界で水が蒸発する温度が百度とは限らないし、そもそもここが一気圧かどうかわからないから、基準を決められないなぁ。
「あちっ」
床が焼けちゃうかもしれないので、箱には木片を噛ませて床から離しておく。
十分加熱できた銅箱の中に、ポーション液を噴霧してみる。
「お…………」
魔法的にイジらなかったからか、上級相当の粉ができた。
この粉を錠剤の形に『成形』してみる。
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【体力回復タブレット(中級)】
体力回復効果がある。
※乾燥状態
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あ、名前変わってる。
なるほど、錠剤かぁ。
しかし、『成形』を使うとやっぱり薬効が抜けるか。
解決策をひねり出す前に時間を見る。
うーん、一度宿に戻ろうかな。
何か短文が来ているかもしれないし、外に出よう。
【王国暦122年3月13日 23:25】
迷宮の外に出て通信機を『受信』モードにすると、ダミアンから連絡が来ていた。
彼女(?)がそのまま継続して王女二人の様子を看てくれることになったということと、その王女たちの容態は安定していて、これまでのように薬を求めて徘徊したり激高することはない、との内容の短文が来ていた。
とりあえず安心、というところかなぁ……。いかに周囲が親身になって厳しく当たれるか、それにかかってると思うので、予断は許さない状況に変わりはない気がする。
宿に戻ると、軽食(当然ながら虫)を摂ってから寝た。
王都には土木以外に、揚げ物とタンポポと虫を食べに来たような、そんな気になった。
――――カマキリモドキはカゲロウの仲間です。